第1637話 海洋国家マリンベル

 久しぶりのクレイン湖。そーいや冬に来るのって初めてかも。


 クレイン湖はカムラ王国よりだから雪が積もっており、凍っているところがあった。


「人魚は平気なんだな」


 南大陸の人魚もいるだろうに、元気で泳いでいるよ。ん? ウェットスーツ着てるヤツいんな。やっぱ寒いのか?


「姫さんたちは平気か?」


 ちなみに人魚たちは服を着ています。姫さんなんてネグリジェか! ってもんを着ている。もちろん、乳パットはしてますぜ。大きさ? それは聞かないのが優しさだぜ。


 ……他も同じくらいだから栄養が足りてないんだろう。そういうことにしておきましょう……。


「少し寒いですが、堪えられないほどではありません」


 まあ、海の人魚も寒さに強いし、元々そういう種族なんだろう。


「ここを仕切っているヤツはどいつだい?」


「わたしです」


 執事服(上だけ)を着た男の人魚がオレの前に泳いできた。あ、オレら湖の中にいますから。


「こいつらが食ってた獣を飼うからあそこら辺に生け簀を創るな」


 人魚は水の中で暮らしているが、オレが創った浮き輪で陸地に上がっている。上がるところは避けておくべきだろうよ。


「はい、問題ありません」


 ってことで土魔法であらよっと。学校のプールくらいの生け簀を創った。


 生け簀には宇宙船から持ってきた水を満たした。


「一応、湖の水と混ざらないように結界を張った。もし、水質が汚れてきたら少しずつ入れ替えてくれ。この結界を通せば水に含まれているものは通さねーからよ」


 姫さんたちに任せるので結界の使い方を教えた。


 捕まえたメドギドをすべて放ち、海竜の肉をぶつ切りにして放り入れた。


「おー食ってる食ってる」


 さながらピラニアのようだ。よほど腹減ってたんだろうな~。


「エサはうちで用意するからメドギドを増やしてくれ。五十匹になったら別の場所に移すからよ」


 この生け簀じゃ五十匹が精々だろう。五十匹になったら南大陸にも連れてって増やせねーか試してみよう。


「べー様。この湖に生息する魚を与えてもよろしいでしょうか?」


「いや、それは止めてくれ。この湖の魚はルンタが食うからよ」


 ニューブレーメンの一匹で、人語を話し、人化できる白い蛇だよ。皆は覚えているかな? オレはすっかり忘れてたよ。アハハ☆


「うーん。それなら他から魚でも見つけてくるか」


 もっと南に下れば雪も降ってねーし、アーベリアン王国と同じ海洋国家、マリンベルにでもいってみっか。親父殿たちがそこで食った川魚が旨かったって言ってたしな。


「委員長さん。そばかすさんはどこだ?」


「カムラ王国にいるはずよ」


 まだカムラにいるんだ。なに手間取ってんだ?


「やらせているベー様が言っちゃダメですよね」


 ハイ、至極ごもっとも。スミマセーン。


「よし。委員長さんはもうイイぞ。カバ美もな」


 なんの役にも立たなかったが、委員長さんにべったりだったから連れ回していただけだしな。いなくたって困らねーさ。


「……やっと解放される。うぅ……」


 報告書作りと言う地獄に移るだけだけどな。今のうち感涙しておけばイイさ。


「あとのことは頼む。姫さんたちも早くここの暮らしに慣れろよ、っても本格的に住むのは別のところだけどな」


「はい。ありがとうございました」


「礼なんてイイよ。これから自分たちの力で生きていくんだからよ」


「はい。がんばります!」


 やる気があってよろしい。んじゃ、カムラ王国にいきますか。

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