第1635話 グルメ細胞

 ヘイ! ミドギドのお作り一丁上がり!


「べー様、真面目にやってください」


 あ、ハイ、すみません。イイ肉質してたので普通に解体しちゃいました。


「ま、まあ、寄生虫とかいねーか調べろ」


 顕微鏡は五台もある。いるんならそう難しくなく見つけられんだろうよ。


「内臓とかも綺麗だな。腫瘍とか謎の器官とかねーし。つーか、胃になんも入ってねーな」


「長いことなにも食べてないようですね。冬眠前の熊と同じく溜め込むんですかね?」


「なんとも言えねーが、食用ならよく食べさせて肥えさせるはずだ。食うものがなかった、って線が濃厚だと思うぞ」


 家畜は管理しねーと、すぐに病気になったり死んじまったりする。ましてや星の世界に出るまで育てた家畜だ。酷い管理下には置かねーだろうよ。


「まあ、細かい調査は博士はかせたちに任せる。いろいろやってみてくれ。オレは食べれるか調べるからよ」


「食べたりして大丈夫なので?」


「これまで人魚が食うものは食ったし、逆もやらせた。今のところ体に異常はねーしな。大量に食わなきゃ問題ねーさ」


 見た目的にアウトなのは先に食わせてたが、ミドギドは大丈夫な感じがする。これまでいろんなものを食ってきたオレが言うのだから大丈夫だ。


「外でやってくるよ」


 さすがにここで焼くのは憚れるからな。


「わたしも付き合います」


 博士も興味があるようでついてきた。


 外は雪が降っていて、かなり積もっていた。まったく、もう雪は見たくねーな。


 あらよっとで結界使用能力内の雪を集めて無限鞄にポイ。屋根を築いた。


 続いて釜戸を土魔法で創り、無限鞄から薪を出してパッチンファイヤー! あ、薪に火をつけるくらいの魔術は使えますので。


 イイ感じに燃えたら台を創ってメドギドを置き、塩を軽く振るって火にかけた。


 ゆっくり回しながら焼いていき、少し焼けたらまた塩をかけた。


「いい匂いですね」


「そうだな。海竜を焼いたときの匂いに似てるかも」


 獣臭くもなく独特な臭いもしない。イイ油が出て食欲を誘う匂いを出していた。


「ベー、なにを焼いてんだ?」


 もうそろそろかな? ってときに公爵どのやレディ・カレットがやってきた。


「メドギドだよ。食えるかどうか試すんだよ」


「お前はなんでも食うな」


「食えるなら食う。狩ったなら食う。命を無駄にはしねー主義だ」


 さすがに食えねーものまで食う気はねーが、まずは食う(食べさせるも可)。話はそれからだ。


 ズボンのポケットからナイフを出し、五ミリくらい切って食ってみる。ムシャムシャゴックン。


「……旨いな……」 


 なんだこれ? メチャクチャ旨いじゃねーか。口の中で溶けたぞ。和牛のイイ肉を食ったときのような感動に思わず叫びそうだわ。


「どうやったらこんなに旨くなんだよ?」


 遺伝子操作か? エサか? 元々こうなのか? この世界に生まれて十一年。こんな旨い肉を食ったのは初めてだわ。


「人魚、旨いもん食ってんな」


 まあ、これだけなら飽きもするが、たまに食うには最高のごちそうだ。これは、タレでもイケるな。


 二口三口と食っていると、公爵どのとレディ・カレットがオレを挟んできた。


「旨いのか?」


「美味しいの?」


 うん。二人ともサプルな料理にグルメ細胞を活性化されたんだったな。


「未知の獣だ。人体にどう影響するかわかんねーぞ」


「お前が食っている時点で大丈夫なんだろう。なら、問題ない」


 いや、問題あるかどうか確かめるために食ってんだけどな。


「まずは一切れだぞ。よく噛んで飲み込んだらしばらく様子を見ろよ」


 さすがに公爵どのになんかあったら嫁さんズに恨まれる。味見ていどに抑えておけよな。


 よく焼けたところを切ってやり、二人に渡してやった。


「旨いな!」


「美味しい!」


 二人の舌にも合うなら人の舌に合うってことだな。


「べー様。わたしも食べてみたいです」


 博士も我慢できずに肉を求めてきたので切り落としてやった。


「旨いですな。これでワインを飲んだら最高でしょう」


「ローストにしたら旨いかもな」


 ローストビーフならぬローストメドギドか? 今度、サプルにソースを作ってもらおうっと。


「べー。もっとくれ」


「わたしも」


 だからこれは──あーもー好きなだけ食えや。なんかあればエルクセプルを飲ませたらイイだろう。効果があるかの確認もできるしな。


 火から外して切ってやった。

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