第1626話 ブヒブヒ
表れたのはクリーム色のカバだった。
カバ子やカバ美をはピンク色だ。色違いのカバってより性別からくる色違い、って感じかな? 体格も一回りデカいし、雰囲気が野郎っぽい。ただ、着ているのはいる銀色のウェットスーツっぽいものなので確信は持てないがな。
「何者じゃ?」
「お前こそなにカバだ?」
「無礼な。わたしを知らんのか?」
「知ってたら訊いたりしねーよ。名乗れねーカバなら四つん這いになってブビヒブヒ言ってろ」
「それはオークですよ」
この世界、まだ猪を家畜化できてねーんですよ。ブヒブヒ。
「無礼な下等種族が」
なかなかアホな野郎だ。こんなアホ見たの、いつ以来だ?
手のひら(?)になにか白い光が宿った。
「パリウスの光ですって!?」
驚いたのはカバ美。なんじゃい、パリウスの光って? と思ってたらそのパリウスの光とやらがオレに向かって撃ってきた。
それほど速い速度でもないのでキャッチした。
「うぉっ! ブヨブヨしてる?!」
なんかクラゲを潰した感覚に似てんな。ってブヨブヨしてたら消えてしまった。なんだったの?
「お、おい、べー。大丈夫なのか?」
「問題ねーな」
結界が破られた感覚もねーし、手のひらに異常もねー。かと言って精神になにか受けた感じもねー。ブヨブヨのものを受けた、ってだけだ。
「カバ美。今のなんだ?」
「あなた、なんで平気なの!? パリウスの光はすべてを消し去る光なのよ!!」
「すべてを消し去る? 叡知の魔女さんが使う消滅魔法みたいなものか?」
対セーサランに編み出したすべてを消し去る神聖魔法ね。
「な、なんなのだお前は!?」
「名は、ヴィベルファクフィニー・ゼルフィング。旅好きなちょっとお茶目な男の子だ」
「お茶目が泣いて謝罪しろと怒鳴ってくるぞ」
ちょっと外野は黙っててください。話が面倒になるからさ。
「べー様が面倒にしている説が……」
ねーよ。そんな説なんて。
「カバ美、こいつ知ってんのか?」
「知らないわ。産まれてこのかた同族に会ったこともないわ」
カバ子も人に育てられたとか言っていた。いったいどうなってんだ?
「チトンチシャの子とかじゃないですか? 逃げていった人魚さんたちが言ってましたし」
「あー導きの神だっけか? じゃあ、このカバが神の子か?」
神と言うかただの傲慢なカバだろう。頬をつねってやったら痛がっているし。
「は、放さぬか! 無礼者が!」
「ハイハイ、無礼者無礼者」
無礼者なら無礼者らしく無礼を働きましょうね~。
「なんでお前、閉じ込められてたのよ?」
自分で入って閉じ込められました~! とかだったらぶっひゃっひゃっ! と笑ってやるが、あれは閉じ込められた感じだ。ほら、吐け吐け。
「止めぬか! 我はチトンチシャの子ぞ!」
「ハイハイ。チントンシャンの子な。偉い偉い。だからほら言え。言え言え」
じゃないとその可愛いほっぺが千切れちゃうよ~。
「マルセルに騙されたのだ! 脱出派が暴動を起こしたら隠れろとな!」
なるほど。二重スパイ的なもんか。脱出派に頭のいいヤツがいるみたいだな。もしかして、そのマルセルってヤツか?
「よし。お前は捕獲しておくか。カバのこと知ってそうだしな」
話を聞くのは委員長さんだけど。
「……図書館に帰りたいよ……」
とりあえずメソメソ泣いている委員長さんは無視して、現れた兵士を捕縛。武装解除させて奥に進んだ。カバ雄は連れていくのがメンドクセーのでまた閉じ込めておきましょう。
しばらくさ迷っていると、大穴に出た。
下を覗くが、底は見えねー。ただ、なんかちらほら影が見える。人魚か?
「戦ってるみたいよ」
「反乱はもう起こった、って感じかな?」
イイタイミングでやって来たようだ。
「迂回路を探すのもメンドクセーし、ここからいくぞ」
大穴へ飛び出し、下に沈んでいった。
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