第1625話 はぁ?

「ねぇ、べー様。あの中に人魚が住んでいるんですかね? ちょっと、いや、かなり狭くないですか? ちょっとした塔くらいですよね?」


 キノコに近づくにつれそのサイズがわかってきて、レイコさんが不思議そうな声を上げた。


「おそらく、下にあるんだろう。長さに対して深さがないからな」


 まさか細長い移住船ってわけじゃなかろうし、下に二、三キロくらいあるんだろう。となれば少なくともこの下に一キロくらいの居住区はあるはずだ。


 ただ、それだけデカいものが地下にあるのが意味わからん。数千年で地殻変動して山や湖ができたりするのか? 隠すために大地を弄ったのか? どんなことしたらこうなるのかオレの想像力じゃ見当もつかんよ。


「ベー。なにか出てきたわよ」


 キノコの窓? 出入口? から金属の球がいくつも出てきた。


 なんや? と思うと同時に結界発動──した瞬間、青白い光が一瞬だけ走った。


「なんだ、今の?」


「雷の一種だろう。侵入者を撃退するための」


 だから人魚が一人もいねーんだな。てことは、敵味方関係なく攻撃するもんか。水の中じゃ攻撃手段も限られてくんな。


 金属の球が何度か光るが、結界を突破する威力はナッシング。野球のボールくらいなら根こそぎいただくのだが、ボーリングの球くらいあると投げ難い。結界で包み込んで沈めておいた。


 こりゃ不味いと窓だか出入口が閉じられるが、その前にヘキサゴン結界を飛ばしてある。一メートルの隙間から中にお邪魔しまーす。

 

「お、団体でお迎えしてくれるとは嬉しいね」


「敵意バリバリだけどな」


 オレにしたらなんでもイイさ。


「おい、あんたらの代表はどこだい? 外の者が会いにきた。案内してくれっかい?」


「そう言って案内してくれる者はいないだらう」


 泥棒に止まれ! と言う理論か? でもアレってなんか意味があったはず。ちょっと出てこないけど。


「まあ、それなら捕縛していけばそのうち会えんだろう。この中がどうなってるかも見たいし」


 人魚の移住船なんて滅多に見られるもんじゃねー。爆発する予兆もなさそうだし、なっても機能停止だろうよ。なら、余裕で逃げられる。見学と洒落込んでも問題ねーさ。


「委員長さん、カメラ持ってっか?」


「……悔しいけど、持たされているわ……」


 なんで悔しいんだよ? 


「報告書で誤魔化せないからでは?」


 別に誤魔化す必要ねーだろう。あるがままに書けばイイじゃん。


「あるがままに書いたら本棚の一角を軽く占めますよ」


「読み応えあるな」


「お前、絶対後ろから刺されるぞ」


「オレの背後には幽霊がいるから大丈夫だ」


 刺されそうになったらちゃんと教えてよ。オレはレイコさんを信じているからね。


「一度刺されたほうがベー様のためかと思いますが、ベー様が死んじゃったらわたしが困りますからね。ちゃんと警告はしますよ」


 なに、その不承不承は? オレに取り憑いてんだから気持ちよく警告しなさいよ!


「ベー!」


 あーハイハイ。捕縛捕縛っと。


 襲ってくる兵士を捕縛して装備はボッシュート。鴨が葱を背負ってやってくるぅ~。ヘへッヘーイ!


「お前はほんと、ブレないな」


 公爵どのの呆れなど知りませぬ、とばかりに兵士を捕縛。装備はボッシュート~。イェーイ! と、カモネギバスターズ(やってるのはオレだけですけど!)で進軍していると、なにか壁を叩く音が聞こえた。


「どこからだ?」


「あっちみたいよ」


 耳がイイのか、レディ・カレットが指差した。


 そちらへいってみると、大きな扉(シャッターか?)の中から聞こえる。なにか金属で叩いているっぽいな。


 無限鞄からバットを出し、おもいっきり扉(シャッター)を叩いた。


「なかなか丈夫だな」


「中になにがいるかわからんのに危険じゃないか?」


「虎穴に入らずんば虎児を得ず、だ」


「どう言う意味だよ?」


「成功したいなら危険を恐れず突っ込め、って感じの意味だ」


 まあ、この扉(シャッター)を破れないていどのものなら恐れる必要もねー。バットでヘコむ強度だし。


 五回くらいで扉(シャッター)に穴が開き、ゴリゴリと広げる。


 そして、穴から出てきたのはカバだった。はぁ?

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