第1597話 理不尽
なぜ? どうして? ホワッツマイケル? とか言ってはならぬ。
「いや、べー様がなに言ってるんですか?」
裏事情など一視点からわかるものじゃねーし、理不尽が懇切丁寧に説明してから現れてくれるわけでもねー。
「無視ですか?」
現れた。それが事実。あるがままを受け入れて、その理不尽を火急速やかに排除するべきだろう。
まあ、その理不尽に挑むヤツが多すぎてオレの出番ナッシング。ただ、茫然と目の前で起こる戦いを眺めるばかり。あ、そうだ。コーヒーを飲もう!
「……放っておいていいのか……?」
「どうかできるのか?」
体長三十メートルはありそうな四つ首の竜と10式戦車+鉄拳との戦いの間に入るとか自殺行為でしかねー。大人しく見守るが最善である。
「親父殿もコーヒー飲むかい?」
「……達観できてるお前が羨ましいよ……」
「似たような状況を何度も経験してんだ、もう現実逃避もできねーよ」
いやまあ、ある意味現実逃避しているようなもんだが、巻き込まれないようにしているだけ冷静に行動してんだろうよ。
「しかし、よくあんなデカいのが隠れていられたな? 冬眠でもしてたか?」
戦車砲弾に耐えられるとか、さすがハイニフィニー王国の闇に潜んでいた竜だ。オレの殲滅拳にも耐えられそうだな。
「小さい頃からゼルフィング伯爵家を守る竜として陰から見守っているとは聞かされてきたっけ。オレは直系ではなかったから本家のことはよくわからんが
な」
「親父殿って何番目の娘の子なんだ」
「母は十二番目の娘だ。ちなみにおれの上に姉がいて、甥と姪が二人いる」
一番下の子か。
「まさか本家にも十二人の娘がいたりするのか?」
「ああ。当主は必ず十二人の娘を産む決まりがある」
とんでもねー決まりがあんな! てか、よく産めるな? どんだけ強い腹を持ってんだよ?
「ねずみ算で増えてってねーか、ゼルフィング伯爵家って?」
「他は他国に嫁がされるか家名から外れて庶民に落ちるかする。おれの母は分家としてゼルフィングの名を持たされている」
よくわからん仕組みだが、親父殿もゼルフィングの名を持たせられている。その理由があるってことか。なんだ?
「ハイニフィニー王国でゼルフィング伯爵家はどんな位置にいるんだ?」
「役職にはついてないが、建国から続く名門として特別な位置にいる。代々、王の世話役か付き添いとして出してはいるがな」
完全に裏からハイニフィニー王国を支配している一族ってことか。
「……もしかして、血を守っているのか……?」
親父殿は人だ。なにか他種族の血が流れているとは思えねー。なにか特別な血液型なんか? AB型RHマイナスとか?
「なんかあれやこれが繋がってくるな」
「ベー様の思考、どうなってるんです? あれとこれが繋がるとか気持ち悪いです」
幽霊に気持ち悪いと言われるオレ。四つ首の竜が忽然と現れるより理不尽なんですけど。
「なにが繋がるんだよ?」
「まだ確証はねー。ゼルフィング伯爵に会ってからだな」
ゼルフィング伯爵が黒幕なのか、はたまたその背後に真なる黒幕がいるのか。会ってみねーとわかんねーよ。
「べー様。黒い毛の狼の群れがやってきます」
音もなくダークエルフのボーイが現れた。あら珍や。
「毛皮は貴重だから綺麗に殺せ」
「畏まりました──」
「魔大陸出身者はA級冒険者並みだな」
「あっちは群雄割拠だからな。ましてや魔王の配下。戦闘力だけならA級だろうよ」
ただ、冒険者は戦闘力ばかり優れててもやっていける商売じゃねー。頭が優れ、コミュニケーション能力が高く、信頼できる仲間がいなければA級冒険者にはなれねー。
「しかし、サプルは戦闘機だけじゃなく戦車を操るのも上手いものだ」
うちの妹は白いモビルスーツを操るニュータイプの生まれ変わりなんだろうか?
「なんだかどちらが悪者かわからんな」
生存競争に善いも悪いもねー。勝ったヤツだけが先にいける。それがこの世のルールさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます