第1596話 セーラー服と戦車

 準備も調ったのでゼルフィング伯爵の館にカチコミをかけることにした。


 向かうのはオレ、親父殿、マリア、レイコ(ユウコ)さん、鉄拳の五人。いやまあ、ドレミとかいろはとかいるけどね!


「なにでいく? 王弟さんが馬車を用意してくれたみたいだが」


 なんか城の前に戦車があったような気がしないでもないが、きっと気のせいだ。漫画の読みすぎて幻覚を見ただけさ。アハハ。


「平和的に馬車でいこう」


 親父殿も幻覚を見たようで、なにか苦虫潰したような顔をしているよ。


「あんちゃん!」


 城の外に出ると、セーラー服にヘッドホンをし、軍靴を履いたサプルがいた。


 その左右には十二、三歳のドワーフ──いや、クルフ族も同じ格好をしていた。


「どーゆーこと?」


「おれに訊くな。サプルのことはお前が一番知っているだろうが」


 オレもそうだと思っていたが、最近のサプルはオレの想像の斜め上をマッハで飛んでいってる。もう妹がなに考えてるかワッカリマセーン!


「えーと、どーゆーこと?」


「なんとなくいかなくちゃと思ったの!」


 ヤダ。妹がシックスセンスを開花させてます! つーか、オレも幽霊見えてんですけど、これもシックスセンスですか?


「ど、どうしよう、親父殿?」


「だからおれに訊くなよ。サプルの担当はお前だろうが」


 担当ってなんだよ? 担当はメイド長さんだよ!


「あ、べー様、こちらへ」


 と、青いスカーフをしたクルフ族の少女に呼ばれた。な、なに?


「実は、サプル様が戦車に嵌まりまして、魔大陸で動かしていたのですが、突然、べー様がなにかしてるとおっしゃいまして、カイナーズに相談してやってまいりました」


 うん。シックスセンスが働いたとしか……ん? この状況、なんか前にもあったような……?


「親父殿。ハイニフィニー王国に竜とかいる? 伝説でもイイからよ」


「竜? あー伝説の竜はいるな。四本の首を持つ竜、センガルドだ。ゼルフィング伯爵家の紋章となっている」


 うん。間違いなくそのセンガルドと言う四首の竜がいるわ。


「ボーイたち。竜を相手にする武装にしろ。なんならカイナーズを呼んでこい」


 これはもうセンガルドと戦う流れだ。この首賭けてもイイわ。


「わたしどもにお任せください」


 まあ、ボーイは魔大陸出身者であり、魔王の配下だった者たち。群雄割拠な世界で生きてきたんだ。この大陸の竜になど負けんか。てか、サプルがいる。ドラゴンスレイヤーに勝てる竜はいないだろうよ。


「おもしろそうだ。そんなのがいるならワシが相手しよう」


 あ、鉄拳もいたっけ。なら、負ける未来はねーな。いや、センガルドに未来はねーか。


「サプルはセンガルドが出たら出撃だ。それまでは山の中に隠れていろ」


「わかった! あんちゃん、先に倒さないでね!」


 これだけのメンツがいてオレがでしゃばる隙はねーよ。


「わかってるよ」


「マキ、シエ、やるよ!」


「「はい、サプル様!」」


 戦車に、てか、この戦車、10式戦車か? 自衛隊の? なんでこれなんだ?


 戦国自衛隊ならぬファンタジー自衛隊かよ。そういや、カイナも戦車でなんと竜を撃ち落としたとか言ってた記憶があるよ。


「いったいなにが起こっているんだ?」


「そのセンガルドが出てくる流れだよ」


「いや、センガルドは伝説の竜だぞ? この国で産まれ育ったおれも見たこともないものだ」


「大丈夫。オレは伝説の竜を何体も見てるし、サプルは二体、倒しているから」


 つーかオレ、結構な数の竜を見てんな。え、オレ、竜に好かれてんの?


「そうかもしれませんね。ピータさんやビーダさん、ウパ子さんにギンコさんとかに好かれてますし」


 その竜は南の大陸に置いてきちゃってますけどね!


「これ以上、変な竜を飼う余裕はねーんだけどな」


 いやまあ、ほぼ放置してるけど!


「なんにせよ、ゼルフィング伯爵の館にいかなくちゃ事態は動かんか。親父殿。いくぞ」


「なんかもう帰りたい気分なんだが」


 それはオレも同じだよ。だが、いかなきゃ話は進まない。さっさといって終わらせろ、だ。


 馬車に乗り込み、ゼルフィング伯爵の館に向かった。

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