第1592話 至上最強の問題児
「……やはり、お前か……」
オレを見るなりため息をつく親父殿。オレだと示すものなんて残したっけか?
「この世で大問題を起こすのはお前くらいだからな」
「なにそのレッテル貼りは?」
「レッテルがなんなのか知らんが、この界隈で町一つ滅ぼしそうなのがいたら嫌でも耳に入ってくるわ」
「世の中には知られざる問題児がいるもんだぜ」
「いたとして、真っ先に会うのがお前と言う至上最強の問題児だろうが」
「……オレ、自ら問題を起こしたことないんだけど……」
問題を持ったヤツが現れて巻き込まれるだけなんですけど。
「問題を大きくしてるのはお前だろう。大きくしたくないのなら密かに、最小限に抑えるものだ」
あ、その考えはなかったわ!
「ってまあ、派手にオレを巻き込んだんだ、派手に解決してやるよ」
二度と巻き込んでこねーようにな!
「それより、親父殿もこの地下に入れたんだな?」
貴族は貴族でもアーベリアン王国に認められた貴族(あれ? 騎士伯だっけ? 男爵だっけ? 一代限りなのは覚えてっけど)。ハイニフィニー王国の戸籍、まだ持っているってことか?
「家を出たとは言え、ゼルフィングの名を使っているからな。それに、この国ではゼルフィングの名は特別なんだよ」
「ってことは、親父殿もゼルフィング伯爵がハイニフィニー王国を裏から牛耳ってたのは知ってたんだ」
「……お前、どこまで知っているんだ……?」
「細かいことは知らんが、只今絶賛敵対中だな」
そう言うと天を仰ぐ親父殿。旅の疲れが出たか?
「まあ、まずは城に来いよ。王弟さんにも紹介したいしよ」
いきなりゼルフィング伯爵のところにいくわけでもあるまい。どこか宿……はさすがにねーか。貴族街だし。
「てか、どこか泊まるところがあったか?」
「幼馴染みの屋敷に世話になろうとしていた」
「じゃあ、そのうち挨拶にいけばイイさ。メイドさん。王弟さんに親父殿を紹介したいから話を通してくれや」
「畏まりました」
メイドさんに任せ、オレらが借りている部屋に向かった。
「……他国の城でも我が物顔だな、お前は……」
「王弟さんと敵対するヤツは排除したからな」
「……うちも相当だが、お前はそれ以上だな……」
「陰でこそこそやっているヤツの欠点だな。主要な立場に立ってねーから排除されても通常業務に支障はねーし、いなくなったところで騒がれもしねー。国を牛耳りてーなら大臣格になってねーとダメだ」
「どの立場から言ってんだよ」
「世界の平和を願う立場からだよ」
オレはスローなライフを送るためなら世界の癌は摘ませてもらうし、人道に反することだってする。オレの邪魔をするヤツらは容赦しねーんだよ。
「嫁と子どもを守りてーなら覚悟を決めろ。健やかな世界にするためにな」
世界が平和でありますように、なんて願うだけで世界が平和になるんなら楽でいいが、平和はたくさんの苦労の上に成り立ってんだよ。
「六ケ国同盟が結ばれてから国同士の戦いはねー。昔、ガンバってくれた先人のためにもハイニフィニー王国を裏から操るアホはいらねーんだよ」
平和のために陰で働くのは歓迎だ。だが、自分たちを守るために国を隠れ蓑にするヤツは邪魔なだけだ。それが親父殿の血縁者だとしてもな。
「当たり前だ。おれはシャニラとロンダルクとミラーニャを守るために帰ってきたんだからな」
「フフ。カッコイイ親父だ」
オトンの最後と重なってしまうが、もうなにもできねー年齢ではねー。オレが絶対に死なせねーさ。
王弟さんの執務室にやってくると、護衛のボーイが扉を開いてくれた。
「完全に掌握済みか」
「メンドクセーことは迅速に片付けるのが信条だ」
イイ人生を送るためにな。
「王弟さん。オレの親父だ」
自慢の、とはさすがに恥ずかしいんで省かせてもらうがな。
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