第1591話 やっと到着

「釣りキチサンペーさんを読むと釣りがしたくなるよな」


 つーか、釣りするだけで六十巻以上続けるとかスゲーよな。前世も含めてオレの人生など三ページで語られるのによ。


「いや、さすがに三ページは無理でしょう」


 なんなら二十文字で終わらされるぜ。前世はクソな人生で今生はイイ人生ですってな。


「べー様の人生はともかく、一国の歴史を変えておいて漫画三昧はどうかと思いますよ。あ、次のページにいってください」


「国を創るのはその国の者じゃなければなんねーんだよ。オレはその邪魔者を説得するだけさ。てか、ユウコさんはどうしたよ?」


 そういや、朝から見てねーな。死んだか?


「死んでませんよ。縁起でもない」


 幽霊が縁起でもないとか笑い話かな?


「休みですよ。メイドさんにお願いして面倒見てもらってます」


 あー休みね。幽霊に取り憑かれてさぞや疲れていることだろうよ。


「別に疲労させるようなことしてませんよ」


 幽霊に取り憑かれているってだけでかなりの精神的負担だと思うけど?


「べー様、わたしが取り憑いてて疲れたってことありました?」


 まったくねーとは言えねーが、まあ、疲れたことはねーな。


「そう言うことです」


 なんか言い負かされた気分だが、レイコさんとユウコさんの間で交わされた契約。金は出しても口は出さない主義。好きにしたらイイさ。


「ん? 鉄拳が戻ってきたな」


 飛び出してから七日。死んだかと思ってたよ。


 ヘキサゴン結界はまだ張り巡らせているが、鉄拳は素通りできるようにしてある。下手に破壊されると面倒なんでな。


「戻ったぞ」


 兵士やボーイがいるはずなのに、全く咎められることなく王弟さんの部屋までやってくるとか、隠密行動ができたんだな。


「いや、特攻服着てたらべー様の関係者だと思いますよ」


 オレが選んだわけじゃねーのに理不尽!


「数日もなにしてたんだ?」


「なかなか骨のあるヤツが出て来たのでな、少しばかり相手してやったのさ」


「鉄拳が相手するヤツ?」


「ああ。まだまだ荒削りだったが、才能はあった。気に入ったから弟子にすることにした」


「よく承諾したな?」


 相手はハイニフィニー王国を裏から操っていた組織。裏切りになるんじゃねーのか?


「考えを改めるまで殴りつけてやったよ」


 どんな脳筋理論だよ? よく心が折れなかったな。


「まあ、なんでもイイが、弟子を取ったら衣食住は面倒見てやれよ」


「そうだな。と言うか、どうするといいんだ?」


 うん、まあ、脳筋だもんね。考えつかないよね。


「だったら王弟さんの護衛でもしろ。弟子を取ったなら道場とかも必要だろうからな」


「紐つきになるのか」


「ものは考えようだ。紐つきになるんじゃなく、ハイニフィニー王国が流派の聖地となるって考えろ。根なし草じゃ格好がつかんだろう」


 国が後ろ盾となってくれたら煩わしい問題も片付くってものだ。


「うむ。そうだな。では、話を通しておいてくれ」


 丸投げかい! いや、鉄拳に交渉しろとか無茶振りだな。


「わかったよ。ちゃんと流派の名前を考えておけよ」


「任せろ。いい名を考えておこう」


 マネージメントできるヤツも探しておかねーとダメっぽいな。


「失礼します。べー様。旦那様が王都に到着しました」


 お、やっと来たか。普通に来るとこんなに時間がかかるもんなんだな。


「わかった。んじゃ、出迎えてやりますか」


 釣りキチサンペーさんの六十一巻を置いて部屋を出た。

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