第1585話 本末転倒
「姫さん。オレのことはどこまで広まっている?」
バベルの塔の下までやってきて、馬車から降りたらレニー……レリーナに尋ねた。
「王弟派は知っています」
ってことは、国王派や貴族派があったりするのか。小国なのに分裂しすぎだろう。ほんと、よくこれで五百年以上続いているよな。どこかの派閥がコントロールしてんのか?
「こちらです」
これと言った出迎えはないが、誰かに見られている視線はいくつかあった。
「マイロード。排除しますか?」
滅多に出てこないいろはが幼女型メイドになって現れた。
「構わねーよ。オレにバレるくらいならそれほど脅威じゃねーしな」
いろはは脅威と感じたんだろうが、このくらい帝国ほどじゃねー。あっちは軽く千年は続く超大国だからな。闇も影もハイニフィニー王国の比じゃねーさ。
「わかりました──」
またどこかに消えるいろはさん。今さらだけど、どこに消えてんのよ?
「べーくんは、ハイニフィニー王国の裏を知るのね」
「予想はできるだけで真実は見えていねーよ。ハイニフィニー王国のことなんて隊商から聞いた情報だけだったしよ」
北欧の小さな国。辛うじて六ヶ国同盟に入っているくらいの情報しか持ってなかったからな。
「……普通の村人には予想もできないのですがね……」
「オレはS級村人。このくらい予想できないようでは失格だ」
「誰に失格されるんですか?」
「オレの魂にさ!」
キラン! とドヤ顔で決めたのに皆の顔はブリザード。ヤダ! そんな目でオレを見ないで!
「ここは寒いので中へ入りましょう」
春の陽射しのように微笑むレニー……レリーナ姫。あなたの態度こそがブリザードだよ。あ、待ってー!
一体誰を迎えているかわからないレリーナを追うと、クラッシックな服を着た侍女が現れた。
「随分と古めかしいもん着てんだな。何百年前のものよ?」
「ハイニフィニー王国では昔から着られているものです。そんなに古めかしいですか?」
「どんな辺境領地でもこんな古めかしいものは着てねーな。他国の者が来たら笑われるぞ。ここ、どんなだけ田舎なんだよってな」
まあ、そんなこと口にするヤツはいねーだろうが、心の中ではゲラゲラ笑っているぞ。
「……それほどものなんですか……?」
「ボブラ村を思い出せ。片田舎の服装より貧相だわ」
レリーナが着ているドレスも質はいいんだろうが、モサイ衣装だから古臭く見える。数百年前にタイムスリップしたかのようだよ。いや、今の時代も転生者からしたら何百年も前だけどよ。
「まあ、時代に乗れない理由があるんだろうからしょうがねーさ。そのせいでなんかあるって叫んでいるようなもんだけどな」
木を隠すなら森の中とか知らねータイプなんだろうよ。
「目立ちたくないって言うヤツほど目立つものだぜ。注意しな」
現れた侍女の一人を見て言ってやった。
城の中まで入り込んでいるとか、よく王弟さんとか排除されねーな。ここの力関係が見えてこねーな。
レリーナに先を促し、階段を昇ること四階。古い洋館っぽい造りの階に出た。
「ゾンビとか出てきそうだな」
いや、横に人に乗り移った幽霊がいるけど!
「すみません。明かり取りの油が不足してまして」
「貧乏な国なんだな」
「ベー様、失礼ですよ」
「いえ、その通りですから気にしないでください」
「もー! ベー様ったら」
頭にチョップいれんなや。ユウコさんの肉体なんだからよ。
なかなか広い階のようで、部屋がいっぱいあり、扉がやけに新しい部屋の前まで来た。
「お父様。入ります」
声をかけ、扉を開いた。
中は大広間と思うくらい広く、ランプの灯りが申し訳ていどに部屋を照らしていた。暗いな。目、悪くなるぞ。
「べー。よく来てくれた」
部屋の奥、久しぶりに見る王弟さんと鎧を纏った中年男、そして、レリーナに似た女がいた。
「おう、久しぶり。元気そうでなによりだ」
相変わらずの美中年な男だよ。
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