第1568話 二倍二倍!
魔力には感情が籠る。
とは言うが、魔法を発動させるには感情はなるべく抑えるほうが効果は増すものだ。
「完全に我を忘れてるっぽいな」
大魔神なら顔真っ赤にしてるところだ。いや、年代ではないからよー知らんけど。
「これは町を壊滅させる魔力ですよ」
「まったく、ハイエルフってのは戦闘種族かよ」
賢者殿は本気にならなかったからどこまでの強さかはわからなかったが、ご隠居さんよりは劣る感じだろう。慣れたとは言え、ご隠居さんの魔力は人外の中で飛び抜けていたからな。
「あの魔力に慣れるのも凄いですけどね」
「カイナがさらに飛び抜けていたからな」
オレの結界をシャボン玉のように破壊したからな。もうご隠居さんの魔力など霞むってもんだ。
「ヨシダ。本当に触ったら放れねーってことはねーんだろうな?」
「さっきも言ったようにワイは誰でも持てる節操なしや。持ち手が管理してくれんとどうにもならんわ」
それはそれで怖いよな。忘れられたらそのままってこともある。どういう精神構造なんだろうな?
覚悟を決めてヨシダの柄を握った。
「特に力を感じることはねーな?」
「ワイ自体に力はあらへん。持ち手の力を倍増させるだけや。でせやけど、結界は自信があるで。竜に踏まれても、だいじょーVや」
「昭和か」
「昭和生まれや。ガン○ム、リアルで観てたで」
悪いがオレはガ○ダムは知らん。が、やっていたのは知っているから年代は同じっぽいな。
……転生したのは何百年も前っぽいけどな……。
「結界!」
試しに全力で結界を張ってみたら確かに倍は使用能力が広まっていた。
「倍になるってスゲーな」
倍になったくらいで、とか思ってたが、これはスゴい。範囲だけじゃなく威力も倍になっている。
「これならなんとかなりそうだ」
さすがにご隠居さんとやり合えるほどではねーが、別に殺し合いをするわけじゃねー。負けねー戦いをするなら充分だ。
「うおっ! ボルテージは最高潮だな」
魔力が爆発して建物を揺らした。上は確実に崩壊してんな。
「死人が出そうですね」
「それはしょうがねーだろう。あんな物騒なもんを閉じ込めたんだからよ」
まあ、解き放ったのはオレだけど!
空飛ぶ結界を創り出し、天井を破って上を目指す──と、ハイエルフがこちらを向いた。
いや、気配を感知した、って感じか? 凄まじい魔力がオレに向けられてるよ。
「主犯と思われたんじゃないですか?」
「怒りで我を忘れてるようだ」
ちょっと誰か、落ち着かせるための笛を持ってきて!
なんて冗談を噛ましている場合じゃない。完全にロックオンされたよ。
「結界!」
を張った瞬間、凄まじい衝撃が襲ってきた。
……ヨシダを持ってなかったら潰されていたぞ……。
「ベー様、きますよ!」
「ヘキサゴン結界、二倍!」
張った瞬間にまた衝撃。なにかを突き抜けて雪の中に吹き飛ばされた。
体勢を整える前にさらに衝撃。暗くてわからんが、ヘキサゴン結界に拳が当たる感覚がした。
「こ、これ、魔闘術じゃねーか!」
獣人が得意とする魔闘術をなんでハイエルフが使えているんだよ?!
「そう言えば、昔、武神と呼ばれるハイエルフがいたような?」
「じゃあ、その武神があれだな」
一発一発が重い。ヘキサゴン結界を次々と創り出さないと間に合わないぞ。
「ダリエラのパンチがへなちょこに感じるぜ」
あ、ダリエラってのは親父殿のパーティーにいた虎獣人の戦士だよ。
「ベーやん。大丈夫なんか?」
「今のところは問題ねー。相手はパンチだけの攻撃だからな」
怒りに任せての攻撃なら耐えるだけでイイ。根競べなら負けねーぞ。
徐々にパンチの威力にも慣れてきた。そんじゃ、こちらも攻撃に転じさせてもらうぜ。
X5のセーサラン(※1326話)にはまったく効かなかったが、今は力が二倍になっている。ブチ切れハイエルフになら充分効くはずだ。
「次はオレのターンだ! 結界パンチじゃ、オラオラオラオラー!」
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