第1567話 魔剣ヨシダ

「ハイ、終了っと」


 四体破壊、二体捕獲しました~。


「相変わらずの省略ですね」


 オレの人生に戦闘は不要。どれだけ削られるかに心血注いでんだよ。


「動く鎧ってやっぱりガランどぅなんだな」


 ギャランドゥみたいに言ったけど、動く鎧に毛一つ生えてない。


「なんで動く鎧に毛が生えるんですか?」


 ノリと勢いだよ。


「魔石と水晶が三十個以上か。これでよく動けるよな。どんな技術だよ?」


 謎すぎてオーバーテクノロジーなのかファンタジーテクノロジーなのかもわからんよ。


「こんなことなら見習いを一人連れて来るんだったな」


「今度こそ背後から刺されますよ」


 それは嫌なので止めておきます。


「これは博士ドクターの領分かな?」


 飛空船とか造っちゃう人外さんだからな。


 呼んで来るのもなんだし、とりあえず動く鎧のものはいただいておくとしよう。


「勝手に持ってちゃっていいの?」


「拉致監禁犯に一切の情けは無用。オレが法律だ」


 なのでここにあるものはオレがすべて没収させていただきまーす。


「なんの暴君ですか?」


 さあ、知らん。なんとなく記憶にあったから言ったまでだし。


 結界で動く鎧の破片を集め、一体一体封印して無限鞄に仕舞った。


「ふー。イイ拾いものをした」


「墓荒しとなんら変わらない行為ですけどね」


 そこは意見の相違ってヤツだね。


 他に取り残しはないかを調べたら、本命に向かった。


 一枚岩に刺さった剣は一メートルくらい。俗に小剣と呼ばれるものだ。


「……この剣のデザイン、前にどっかて見たことあるな……?」


 どこで見た? そう昔ではねーと思うんだがよ。


 岩に刺さった剣の周りを回り、記憶を探った。


「──あ、親父さんが持ってた形見の魔道剣だ!!」※229話


 そうだよそうだよ。あれと同じデザインだよ。


「あれは確か、風の魔道剣だったっけか?」


 風天の魔石を使うものだったが、これは違うな。魔力の感じからして嵌め込み式じゃねー。自ら魔力を生み出す感じのものだ。


「魔道剣ってより魔剣だな」


 生きた剣を魔剣と言うらしいが、何回か見た魔剣とはなんか違う気がする。


「誰や?」


 と、男の声がした。え?


「へー。剣がしゃべるなんておもしろーい!」


 うん。もうちょっと真相からズレた会話しようよ。心の準備をするためにさ。


「ワイの声が聞こえるんか?」


「イエ、キコエマセン。ナンノコトデショウカ?」


「いや、返事してるやん。聞こえてるやん。ボケかますなや」


 剣に突っ込まれるオレ。なんなんだろうな?


「関西の方で?」


「いや、長野県生まれの埼玉育ち。群馬在住やったわ」


 なんか海なし県じゃないと生きられないの病気にかかってたの? てか、なぜ関西弁風なんだよ?


「関西って訊くってことは、あんさん転生者かいな?」


「あ、ああ。今はヴィベルファクフィニー・ゼルフィングとして生きてるよ。歳は十一歳だ。てか、オレのこと見えてんの?」


「見えてるってか、感じ取れてるって感じやな。ちゃんと色までわかるで」


 よくわからんが、不思議器官で見てるってことでオッケー?


「いろいろ謎はあるがなんで関西弁風なんだよ?」


「ダチが関西の人間でな、なんか移ってしもうたわ。まあ、ワイも本格的な関西弁知らんし、テキトーにしゃべっとるわ」


 だからおかしなしゃべりになってたんかい。関東圏に住んでたなら標準語をしゃべっとけや。


「えーと、あんさん、名前、なんでしたっけ?」


「べーでイイよ。もうそれが本名みたいなもんだからな」


「べーやんでよいか?」


「ま、まあ、なんでもイイよ。好きなように呼べや」


 なんか前にそんな呼ばれ方したような気がないでもないが、まあ、どうでもイイわ。


「で、あんたは?」


「吉田や。吉田ケンゴ。まあ、ヨシダと呼んでや。もうそれが名前みたいなもんやからな」


「わかった。ヨシダな。てか、ヨシダは転生者なのか? 生まれ変わったら剣でした、なのか?」


「ああ。まさか剣にとか最悪やったわ」


 それはご愁傷様としか言いようがねーな。よく発狂しなかったものだ。精神調整でもされたか?


「転生してからずっとここに刺さってんのか?」


「いや、ここに突き刺される前はお嬢と世界を旅しとったよ」


 お嬢? 


「そのお嬢とやらは生きてんのかい?」


「死んだよ。とうの昔にな」


 それはご愁傷様です。


「もうやることもないんで刺さっとったが、同じ転生者と出会ったのもなにかの縁や。抜いてくれるか?」


「抜いたら離れないとかゴメンだぞ」


 こういうのは下手に抜いたら厄介なことが起こるものだからな。下手に触らないほうが吉だ。


「ワイはそんな高尚な剣やあらへん。持ち手の力を二倍にできたり結界を張ったりしかできへんわ」


 その結界がエゲつないものなんだがな。


「ここにハイエルフを閉じ込めてるのがお前なんだがな」


「それはワイが刺さってる岩が原因や。よー知らんがワイの力を使って発動してるようやで」


 ヨシダが原因じゃなくこっちが原因かい!


「レイコさん、わかるか?」


「いえ、わかりません。わたしの知らない技術っぽいです」


 じゃあ、うだうだ悩んでも仕方がねー。ぶっ壊してから対応しろだ。


 殺戮阿吽で岩を叩き割ってやった。


「またメチャクチャする」


 メチャクチャしねーと壊せねーんだから問題ナッシング~。


「ん? 魔力が高まってんな」


 上から凄まじいまでの魔力が膨れ上がっていた。


「ハイエルフがぶち切れたみたいよ」


 閉じ込められていたんだから当然の怒りだろうが、賢者殿を知っているだけによくない未来しか見えねーな。

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