第1564話 ジョーダンズ

 ここの教会には錬金術師でもいるのか? 渡した材料でなぜシチューが作れるんだよ?


 キノコに燻製肉にカブと具だくさん。この味は牛乳か? なにを使ったらこんな旨味が出せるんだ?


「なかなか美味しいわね」


 メルヘンも満足な味のようだ。


「たくさん作ったのでお代わりしてください」


「ありがとうございます。とても美味しいですが、こんな贅沢なものいただいてよろしかったので?」


「いただいた芋や豆と交換してきましたから安心してください」


 他のところは溜め込んでいるのか? 去年は食糧難だったはずなのに?


「去年は麦が不作でしたが、山は豊かでした。牛もよく育ちましたからシチューの材料だけは豊富なんです」


 なんでか訊いたらそんなことが返ってきた。


 そういやここは山に近いし、やけに拓けていたな。牛を飼っていたのか。イメージ的に山羊とかだと思っていたよ。


「芋と豆は本当に助かりました。種つけの芋まで手を出してしまって困っていましたから。あと塩も。冬になると商人もなかなかやって来ませんので」


 シチューを食べながら街の事情を聞かせてもらった。


 ハイニフィニー王国の冬は想像以上に大変なようだ。雪が降らない地に生まれてよかったよ。


 シチューもいただき、シスターも下がった。てか、ここは寝室なので、オレも下がることにした。


「礼拝堂の隅をお借りします」


「そんな寒いところではなく、暖炉の前でお休みください」


「いえ。女性と同じところで休むなど非礼と言うもの。このくらいの寒さなら毛布一枚で充分ですよ」


 心配そうにするシスターを説得し、毛布にくるまり先に休ませてもらった。


 やがて教会が寝静まったら毛布から出た。


「夜這いですか?」


「しねーよ! なに失礼なこと言い出す!」


 てか、十一歳ですることじゃねーよ! いや、二十歳になってもしねーけどよ! オレは無理矢理は否定派だわ!


「つーか、普通はトイレですか? だろうが!」


 念のために周囲を結界を張っててよかったよ。張ってなければ教会で叫ぶ危ないヤツになってたわ。


「冗談ですよ。ムキにならないでください」


 存在自体が冗談なクセにワリー冗談言ってんじゃねーよ。


「べー様も大概冗談みたいな存在ですけどね」


「ふふ。どっちもどっちね」


「うん。君も冗談みたいな存在だから。自分だけ外にいると思うな」


 ──ジョーダンズでも結成しろ、アホどもが!


 なんてプリッつあんの突っ込みが聞こえたような気がするが、いつものように気のせいだろう。卓球ラケット(妄想)で打ち返しておこう。


 さあ、お外にゴー! ちょっこら街の情報収集でもしてきますかね。


 村人忍法、身代わりの術! で、スタコラサッサー。


「もう真っ暗じゃない」


「村人忍者に朝も夜も関係ないでござる」


「ハットリくんか!」


「いや、なんでハットリくんを知ってる?」


「プリッシュの本棚にあったわ」


 あのメルヘン、いつの間に本棚なんて持ってた? つーか、あのメルヘンは漫画好きか? ガ○スの仮面も読んでたし。


「てか、プリッつあんは三國志も読むのか?」


「それは喪服の人から借りたわ。プリッシュは少女漫画好きだから」


 妖精のクセに男女間の恋愛に興味あるのか? まあ、乙女なメルヘンだったけどよ。


「それで、どこにいくんですか?」


「この街を治めているヤツのところだな」


 王国ってんなら貴族が治めているはず。なら、街の真ん中に居を構えてんだろうよ。


 とりあえず向かってみたら要塞のよう城があった。


「随分と物々しい造りですね?」


「まあ、山に囲まれた国だし、近くに魔境もある。なんか凶悪なものでも襲ってくんだろうさ」


 魔王なブタもいることだしな。凶悪なもんの一つや二つ、いても不思議じゃねーさ。


 そういや、エリナは魔境に産まれたんだっけな。じゃあ、なにがいても不思議じゃねー。あんなのがいたら轟牙で焼き払ってやらないといかんな。オレに迷惑をかける前に。


 ──酷いでござる!?


 今度は腐死王の声が聞こえたが、絶対気のせいだから金属バットで撃ち換えておこう。


「んじゃ、忍び込みますかね!」


「ほんと、やること考えることが犯罪者ですよ」


 それが村人忍者の宿命よ!

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