第1559話 航空母艦ラズリズ・デルタ

 あーこれはカイナの趣味嗜好が入ってるわ~。


 ってわかるくらい特徴のある飛空船──いや、飛行機だった。


 デルタ型をしており、どこぞの国の戦略爆撃機の型をしてるとか、前世の記憶を持ってなければ造り出せない型だろう。


「よく飛ぶな」


 小さくなってるので全長がどのくらいかはわからんが、竜機のサイズから三十メートルくらいはあるんじゃなかろうか? 小人の技術力どんだけだよ?


「カイナ様より浮遊石に魔力を籠めていただきましたので、通常の四分の一の出力で飛ぶことができます」


 そういう技術的なことはさっぱりだが、カイナが関わってるならオーパーツ級にとんでも仕様となってんだろう。へーふーん、で流しておけ、だ。


「竜機は何機載るんだ?」


「八機ですが、まだ訓練段階なので六機で運用しております」


 八機も入るんだ。まあ、精密機械を積んでるわけでもねーし、スペースはあんだろうよ。


「アーベリアン王国の空は大体は把握したか?」


「はい。周辺国なら大体は飛びました。別大陸に飛ぶのではないのなら方位飛行で飛ぶこともできます」


「浮遊石は避けられるのか?」


「竜機の感覚器を応用した物体感知ができます。よほど小さいものでなければ避けられます」


 ほんと、小人族の技術力はスゲーもんだよ。もしかして、宇宙から来た生命体の技術力でも受け継いでんのかな?


「ラズリズってなんか意味あんの?」


「コルゼウム皇国の守護鳥から取りました」


 そういや、小人族の国ってそんな名前だったな。※書籍版五巻の番外編を読んでね。


「守護鳥か。どんなもんか見てみたいもんだ」


 まあ、コルゼウム皇国とは敵対関係になっちまったしな、見にいけるのはかなり先のことになるだろうよ。


 ラズリズに乗り込み、艦橋──いや、操縦室(?)に案内された。


「飛竜艦とは違うんだな」※698話


 あちらも飛行機みたいなもんだが、元になってるのは竜。完全に違う技術系統だな。


「はい。ラズリズはコルゼウム皇国でも古い技術です。学んでいる技師も少ないので一機造るのがやっとでした」


「生体科学より機械科学が発展してたんだな」


 どこで技術を転換したんだ? 今度見習いでも送り込んで小人の歴史でも探らせてみるか。


「そんなことしたら見習いさんたちが暴動を起こしますよ」


 うん。じゃあ、止めておきます。あいつらが徒党を組んだら厄介そうだし。


「べー様。発進準備開始します。シートベルトをお願いします」


 シートベルトね。カイナからの知識がかなり小人に流れてる感じだな。


「てか、このラズリズって艦なのか? 飛行機なの? どっちだ?」


 あ、いや、自己紹介のとき艦長とは言ってたけどさ。


「カイナ様も悩んでましたが、艦では不自然なのですか?」


 悩んでたんなら決めておけよ。まあ、あいつのことだから「まっ、いっか」で済ませたんだろうよ。


 ……拘るところはとことん拘るが、どうでもいいことにはテキトーな男だからな……。


「べー様と同じですね」


 あーうん。まあ、そうだね。男にはよくあることだよ。


「オレから見ればラズリズは完全に飛行機だな。水にも降りられる構造でもなかったしよ」


 これを艦と呼ぶには苦しい気がするぞ。


「では、ラズリズは艦ではなく飛行機にします」


「あ、いや、別に無理に変えることもねーだろう。オレが気にしてるだけなんだからよ」


 前から艦でやってきたんだからこれからも艦でやってけよ。


「いえ。べー様のために組織されたアーカム隊の母艦。べー様が納得できる形にしたいです」


 うん。母艦って言ってるよね? まあ、艦の定義よー知らんけどよ。


「じゃあ、航空母艦ラズリズ・デルタって名前にしろ」


 それっぽくてイイだろう。気に入らなきゃそっちで考えろや。オレはそれ以外出てこんからな。


「はい! これよりラズリズの正式名称は航空母艦ラズリズ・デルタにします!」


 操縦室にいるヤツらが立ち上がり、オレを見て小人流の敬礼をした。ハイハイ、なんでもどうぞ。


「じゃあ、発進しろ。まずはバリアルだ」


「ハッ! 発進準備急げ! べー様に無様な姿を見せるなよ!」


 慌ただしく準備が進められ、航空母艦ラズリズ・デルタが発進。空へと舞った。

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