第1557話 ハイニフィニー王国
「ちょっと見ない間に顔つきがしっかりしてきたな」
産まれて一月くらいだから首も座ってないが、しわくちゃな顔に張りが出てきてぷっくりしてきてた。
出産フィーバーは収まっているのでロンダルクとミシャーニャを独占できた。
「ミシャーニャではなくミラーニャですよ。どこで変換したんですか?」
ミシャーニャでもミラーニャでもどっちでもイイじゃん。可愛いんだからよ。
そのうち名前を短くされて正式名は忘れ去られるんだからよ。ソースはオレね。
「べー様とご兄弟様は特別ですよ。五文字以上の名前なんて貴族でもなければつけませんしね」
あ、そういや、オトンの実家、貴族だったな。
まだ実家のことは調べてねーが、状況からして帝国でもかなり高い地位にいた家だろう。下手したら伯爵家だったのかもな。
「じゃあ、ベー様ってかなりいいところの血筋じゃないですか」
村人に血なんて関係ねーよ。オレはオレ。ボブラ村の一村人なんだからな。
「その一村人が王にも勝る立場を築いちゃうんだからふざけてますよね」
オレは本気で生きてきたけどな。
「てか、親父殿は?」
館には昨日の昼過ぎに帰って来たのだが、夕食にも朝食にもいなかった。じゃあ、なんで今訊くの? って言われたら昨日から双子を一人占めにしてたからだよ。
「本家にロンダルクとミラーニャのことを伝えにいったよ」
暖炉の前で双子のおべべを縫っているオカンが答えた。
ちなみにここはオカンたちのプライベートリビング。双子の乳母的なメイドや世話役のメイドも控えています。
「本家? 前に出奔したから報告しないとか言ってなかったっけ?」
「そうなんだけど、両親から手紙が届いたんだよ。家に来いって」
「どんな理由で?」
「さあ? 内容は言ってなかったね」
そこんとこ重要だろう。ちゃんと聞けよ。
「旦那様が任せろと言ってたしね、あたしは信じて待つだけだよ」
それでオトンは死んだんだろうが。
授乳時間となったので部屋を出て執事さんを呼んだ。
「親父殿が出たのいつ?」
「六日前です。無理を言ってボーイとメイドを八人つけました」
さすが魔大陸で生きてきただけはある。親父殿を単独でいかせなかったよ。
「それと、お館様には秘密で飛空船を一隻つけさせました」
「よくやった。ありがとな」
主に逆らっても主を守る。その忠誠心、立派だよ。
「……二度も主を失いたくありませんので……」
「そうだな。大事なものはどんな手段を用いても守らないとな。これからもよろしく頼むよ」
「ゼルフィング家に忠誠を」
恭しく一礼する。
「ああ。その忠誠に恥じぬよう立ち回らないとな」
オレは忠誠などいらんが、オレの大切なものを守ってくれる者を蔑ろにはできん。恥じぬよう生きていくとしよう。
「そういや、親父殿の本家ってどこだ?」
何度か訊いたことはあるが、濁して教えてくれなかったんだよな。
「ルイルイは?」
「アマリアも一緒です」
「掠りもしてないのに話の内容から人物を特定するとか優秀な方です」
あ、うん、そ、そうね。アマリアって言ったね、親父殿の従妹さん。
「あいつもいったのか。よくいったな? 家出してきたのに」
「詳しいことはおっしゃりませんでしたが、誰かがご病気になったようです」
真実かはどうかとして、そう言われたら帰らざるをえないか。
「親父殿の本家、どこにあるかわかるかい?」
王都に親戚がいるとはポロッと言ったことはあるが。
「アマリアの話からハイニフィニー王国ではないかと思います
「ハイニフィニー?」
って、去年来た王弟さんの国か? ※300話くらいね。
「はい。バリラ様が昔、お館様がハイニフィニー王国から来たと聞いたとおっしゃってました」
あ、バリラいたね。天才幼女二人の先生をお願いしたっけ。
「そうか。バリラが言ってんならそうなんだろう。しかし、ハイニフィニー国か。冬となるとカムラからはいけんな」
ハイニフィニー王国はカムラ王国の隣だが、今は冬。雪が溶けるまでは通行止めになる。
海路でいけないこともないが、ハイニフィニー王国へと続く河も冬は氷に閉ざされると聞く。
となれば雪の少ない南回り、バリアル経由になるか?
「馬車でいったのか?」
「はい。カイナーズホームで購入した馬車です。アカツキたちを連れていきました」
カイナーズホームの馬車とエリナ産の馬か。非常識な二つが合わさったらバリアルを通り越してても不思議じゃねーな。それどころか不眠不休で飛ばしていても驚かねーよ。
「バリアルより向こうはいったことねーから転移バッチもシュンパネも使えねーな……」
「せっかくですからアーカム隊を使っては?」
「アーカム隊? あ、黒髪の乙女さんたちか」
殿様の娘で竜機を操る方々だよ。皆は覚えているかな?
「忘れてた筆頭がなに言ってるんですか」
ハイ、ごめんなさい。言われるまで完全無欠に忘れてましたわ~。
「ちなみに娘さんの名はリツさんですからね」※509話
あーうんうん。そんなお名前でしたね。思い出したと思うよ。
「執事さん、アーカム隊を呼んでくれ」
どこにいるかわかんないけど!
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