第1551話 上げて落とす

 オレ、安らかに睡眠。忙しくも楽しい日々でした。


 ──そのまま五年くらい眠ればいいのに。


 なんてプリッつあんの温かい声が聞こえたような気がして急いで目を覚ました。


「……な、なんか、スゲー悪意を感じたぜ……」


「悪意としか思われないようなことばかりしてきてるからですよ」


 寝る前も、目が覚めても幽霊を見るオレ。ちょっと皆さんどう思います?


「わたしはずっとべー様を見てますけど」


 怖っ! 幽霊に言われたくないセリフナンバーワンだな!


 ってまあ、今さらだな。レイコさんさプライバシーを守ってくれるしな。


「風呂に入るか」


 思えばここ数日風呂に入ってなかった。サプルに知られたらバイキンマン扱いにされるわ。


 借りた部屋から出てメイドさんを探した。


「あ、そこいくメイドさんや。風呂に入りてーんだが、誰か入ってっかい?」


 一応、風呂は創ったが、男女別の風呂にはしなかった。そのままいって誰か入ってましたは避けましょう。


「もしかするとミッシェル様が入ってるかもしれません」


 頭に手を置くとメルヘンがいなかった。ほんと、いるんだかいねーんだかわからんヤツだよ。


「まあ、みっちょんなら構わねーな」


 あれは男とか女とかの枠の外にいる存在。メルヘンって生き物だ。気にする必要はねー。


 ……同じメルヘンなのにプリッつあんとは大違いだぜ……。


「ミッシェルさん、大切な部分はちゃんと雲で隠してますよ。あと、べー様のポークビッツも」


 ポークビッツとか言うなや! ちょっと傷つくわ!


 風呂場に向かい、パッパと脱いで御風呂へドボン。あー気持ちイイ~。


「ちょっと、体を洗ってから入りなさいよ」


 雲のベッドに寝っ転ぶメルヘン。確かに大事な部分は雲で隠れていた。恥ずかしいなら洗面器風呂に入ってろよ、メルヘンオヤジ。


「ベー。しゅわしゅわのお酒を出して」


「今裸なんですが」


 いやまあ、結界術を使えば出せるんだけどな。


 親父殿の書斎バーに結界連結。冷蔵庫(魔法的なヤツ)からスパークリングワインを取り寄せた。


 グラスは結界で我慢しーや。


「お風呂に入りながらしゅわしゅわお酒を飲む。バブリーよね~」


 メルヘンがバブリーとか言うなや。てか、なんでバブリーを知ってんだよ? どこのバカから影響を受けた?


 まあ、バブリーメルヘンは好きにバブってろ。 


 温まったら体を洗い、すっきりさっぱりオレキレー! 湯あがりによく冷えたフルーツ牛乳を飲んだらオレ無敵! あぁ、我が人生ハッピーウェーイ!


「独特な喜びですね」


 オレはオレだけしか得られない喜び与えられてるからな。つい独特になっちゃうのさ。


「あ、ちょっとそこいくメイドさん。なんか軽く食べられるものちょうだいな」


「ソーメンでよろしいですか?」


 なぜにソーメン? お歳暮でもいただきましたか?


「お、おう。ソーメンでお願いします」


 食堂にいったら盥にソーメンが盛られ、ゴマとめんつゆが用意されていた。


「日本の夏、ソーメンの夏、だな」


「魔大陸的には夏の終わりに近いですけど?」


 イイんだよ。イマジネーションなんだから。


 席についていただきます。


「久しぶりに食うとウメーな、ソーメン」


 夏になると料理するのも面倒で毎日ソーメン食ってて嫌になったもんだが、生まれ変わって食うとソーメンが新鮮に感じる。ミョウガとネギが欲しくなるぜ。ズルズルズルー。


「はい、ごちそうさまでした。コーヒーちょうだいな」


 メイドさんにコーヒーを淹れてもらい一休み。このままソファーに横になって眠りについて──。


「──ベー!」


 うん。知ってた。このまま安らかに眠りにつけれないって。上げて落とすためのものだって。


「また厄介事か?」


 公爵どのに呼ばれたレディ・カレットに問うた。


「水輝館みずきかんにハミーが現れたわ!」


 ハミー? 誰や? 水輝館? なんだっけ?


 幽霊さん。教えてプリーズ!


 ※さあ、諸君。856話から読み返すんだ! あと、ミッシェルの名前が間違っているところがあったら教えてくだはいませ! 読者を使う悪いヤツより。

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