第1547話 べー先生
数時間して、そばかすさん、メガネさん、ダリムが連れて来られた。
「いったいなんなの? ミラはついて来いとしか言わないし」
「歴史探究だ。お前らの働きに大いに期待する」
「なにかまた大変なこと押しつけられてる?」
さすがそばかすさん。一度経験したからか察しがイイ。なら、覚悟はしやすいだろう。
「ここは、人魚の遺跡かもしれません。見習いの皆様には資料を残すために写真を撮っていただきます。がんばれ~」
返ってきたのは冷たい反応。こらこら、これから歴史の探究にでかけるんだからテンションアゲアゲでいこうぜ☆
「皆さん、またこの男は! って目ですけど」
かなしいな~。大図書館にいては経験できないことをさせてあげようとしてんのにっ。
「べー様の近くにいなかったら巻き込まれることもない経験でしょうけどね」
「それは大図書館の魔女さんに言ってください。お前らに見聞を広めさせるためと大図書館の未来を託されてんだからな」
まあ、大図書館の魔女さんがどこまで考えているかは知らねーが、この先の未来が旧体制では不味いと感じたはずだ。帝国にいたんじゃ変われねーとオレに頼ったんだろうさ。
なら、こちらはありがたく使わせてもらうだけ。仲良くウィンウィンな関係を築くこうよ、だ。
「とにかく、お前らに拒否権はねー! 諦めて歴史探究を楽しめ。それはお前らの糧となるんだからな!」
どう糧にするかは君ら次第。イイ未来になるよう近くから見守ってやるさ。
「べー様! ゴブリンが出ました!」
お。やっと目的のものが出てくれたよ。
「生捕りにしろ! 三位までに勲章を与えるぞ」
なんの役にも立たないものだが、シープリット族には名誉なものだと喜ばれるだろう。土魔法でちょちょいのちょいで創れるし。
「ハッ! これから先は個人戦だ! べー様に恥じぬ行いをしろ!」
暗闇に消えていくシープリット族。体育会系を纏めるのはメンドクセーぜ。
「わたしらはなにをしろと言うの?」
「お前らはどれだけ人魚の知識を持っている?」
「人魚は肉をあまり食べないってことは知ってるよ」
文字で返されても誰が答えたかわかるな。
「なにも知らんってことか。じゃあ、オレが知ってることを教える。メモしておけ」
「ヤオヨロズ国で人魚を見たけど、あの種族はそんなに優れているの?」
「ララちゃんたちには言ったが、人魚は別の星から船に乗ってきた惑星外生命体だ。今の姿を見たら原始的な生活を送ってるが、魔法は人より優れている。オレらがこうして会話できてるのも人魚の魔法具のお陰だ」
忘れてるかもしれませんが、翻訳の首輪のお陰でオレらは会話できている。これがなければ言葉が違う帝国人と会話もできねーんだよ。言葉を覚えたら可能だがな。ちなみにオレはしゃべれます。オトンが死んでから必死で学びました。
見習いどもを集めて人魚のこと。海のこと。国々のこと。魚人との戦争。去年、バルデラル国にいったことを話してやった。
「まあ、ざっとだったが、もっと聞きたいときは人魚の先生を呼んでやるよ」
「あなたはわたしたちを報告書の刑にしたいわけ? また書くことが増えたじゃない」
「別に今は簡単に纏めておけ。清書になったら皆で記憶を擦り合わせたらイイんだよ。そばかすさん、デジカメで記録してただろう?」
この見習い、完全にデジカメの扱い方をマスターし、なんか四台くらい持ってた。やはりこいつは旅に出させて世界を記録させたほうがイイな。
「え、あ、うん。とても覚え切れなかったし」
「デジカメ、他のヤツにも持たせろ。あとでオレが買ってやるから」
今から買いにいくのもメンドクセーし、四台もあれば充分だろう。
「わかった」
そばかすさんがデジカメの扱い方を教え出したので、建物の外に出る。なんか騒がしくなったんでな。
「べー様! ゴブリンを捕まえてきました」
どこからロープを持ってきたかは謎だが、ゴブリンを捕縛して帰ってきた。
「結構いたな」
「はい。奥に大空間がありましてそこに巣を作っていました」
巣を作るほどいんのかい。なに食って生きてんだ?
「そっか。ご苦労さんな。で、誰が一番捕まえたんだ?」
って後悔をするのは数秒後。シープリット族が競うのが好きだったのを忘れていた。
根絶やしにしたの? ってくらいゴブリンを捕獲してきやがったよ……。
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