第1535話 黒鳥館《こくちょうかん》

 ハイ、できました~!


「相変わらずデタラメですね」


 積み重ねた努力は魔法と区別がつかないと言うしな。


「いや、土魔法を使ったんだから魔法でしょう」


 ハイ、そうでした~! クソ! 努力しても魔法で片付けられるとか理不尽!


 なんてことはどうでもイイ。ちょっとここが気に入らんな。あらよっと。うん。イイ感じだ。


「湖が一望できたほうがいいんじゃない」


 メルヘンからの提案、いただきました~! そらよっとで三メートルくらい隆起させた。


「なにもここまで豪邸にすることもないのでは? 娘さんたちの仮家ですよね?」


「やるからにはオレは全力で挑む」


 たとえそれが無駄に終わろうともオレは全力で挑んで満足するんだよ。


「才能の無駄遣いですね」


 無駄の無駄遣い、大いに結構。コケッコー。オレはオレを満足させるために生きてんだからな。


「べー様」


 中を結界で包んでいると、メイド長とダークエルフのメイドが二人やって来た。


「お、ご苦労さん。メイド長さんは仕事が早いな」


「ありがとうございます。べー様のお望みのメイドで、マニューリとサイランです」


「マニューリとサイランな。よろしく頼むよ」


「一度聞いて覚えるのに、なんで三歩歩いたら忘れるんでしょうね?」


 人を鶏みたいに言うなや。五歩までは覚えてるわ!


「なんの自慢ですか」


 倍以上は覚えてるって自慢ですが、なにか?


「メイド長さん。さらにワリーんだが、生活に必要なもの揃えてくれるか? 一応、ゼルフィング家の別邸とするからよ」


 誰が住むん? とか訊かれても答えられねーが、まあ、成るようにしか成らない成るるんるん。きっと素敵な人が住むと信じましょう。だ。


「畏まりました。人はこちらで選んでよろしいでしょうか?」


「ああ。万事メイド長さんにお任せします。よしなに取り計らってくださいませ」


「わかりました。荷物を運ぶので館と繋いでいただけますか?」


 イエスマム! あ、カントリーマアム食いたくなった。カイナーズホームで売ってかな~?


 メイド長さんの指示の下、転移結界門を設置し、食堂に設置した転移結界門に繋いだ。


「食堂の門、どこかに繋いでませんでしたっけ?」


 あ、そうだった。あれ? どこに繋いでたっけ? 上書きしたから忘れたわ。


「ま、まあ、基本、オレが使うんだから問題ねーさ」


「適当ですね~」


 ハイ、オレは適当一代男。スーダララ~。


「あとはこちらで進めますので」


 ハーイ! 了解でーす!


 できるメイド長さんに感謝の敬礼。あなたがいてくれて助かります。


「あ、べー様。この館の名前はどうしましょうか?」


 あ、名前な。ねーと不便か。


「じゃあ、黒鳥館こくちょうかんで」


「黒鳥館ですね。では、そのように通知しておきます。マニューリ、サイラン、よろしくお願いしますね」


「「畏まりました」」


 お団子メイドと渦巻きメイドが一礼し、メイド長さんは食堂から出ていった。


「一歩も動かず忘れましたね」


 お団子ヘアーと渦巻きヘアーが似合ってんだからイイじゃない。まあ、髪型変えられたら困るけど。


 二人を連れて三姉妹のところへと向かった。


 桟橋に接岸させたレディ・マーキュリー号に乗船すると、ララちゃんが復活していた。


「お、目覚めたか。気分はどうだ?」


「……最悪だよ……」


 だろうな。命を削るような一発を放ったんだからな。


「やらせたのはべー様ですけどね」


 決断したのはララちゃんだ。オレのせいじゃないもーん。


 とは言え、気分悪そうだからエルクセプルを出してララちゃんに強制ゴックンちょ。気分爽快。完全復活。魔力欠乏になっても効くんだな。メモメモっと。


「よし。ララちゃんは帰ってイイぞ。もう戦いもねーしな」


 君の出番、ここまで。館に帰って報告書でも書いてなさい。


「……わたしの扱い雑すぎだろう……」


「べー様、基本誰にでも雑ですよ。強者には媚びへつらいますけど」


 強者に従うのが弱者の義務。嫌なら強者に登り詰めろ、だ。


 ……オレは婦人に勝てる気がしないから媚びへつらって生きていくけどな……!


「なんの主張ですか?」


 弱者の主張だよ!


「もう、なんでもいいよ。これ以上あんたの近くにいたら報告書の山に押し潰されそうだからな。シーホー、ミラ、がんばれよ」


 すがりつくモブ子を振り払ってレディ・マーキュリー号を下船するララちゃん。バイバイキーン!


「三姉妹。今日からお前らの世話をしてくれる──」


 お団子さんと渦巻きさんに首根っこをつかまれ後ろへポイされてしまった。


「マニューリです」


「サイランです」


 オレを無視して三姉妹を連れてレディ・マーキュリー号を下船していった。


 ………………。


 …………。


 ……。


 うん。ちょっと船首にいって叫んでくるか。青春のバカヤロー! ってな。

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