第1534話 メイド長はシフ・リーン
世界を見せてるとは言ったが、三姉妹は箱入り娘。外のことがなにもわからない上に自分のことは自分でするってこともできないはず。なので、まずは生活力を身につけさせるべきだろうよ。
ダークエルフのことはダークエルフにお任せってことでゼルフィングの館にレッツゴー! メイド長さんはどこですか~? いた!
「ダークエルフのメイド、二人ばかり用意してくださいませ!」
元の世界で培った──わけでもない土下座でメイド長にお願いする。オレは目的のためなら土下座も厭わぬ男である。※書籍11巻の番外編を読んでね。
「な、なんなでしょうか、いきなり!?」
「魔王さんの三姉妹に生活力を与えたいので生活力のあるダークエルフのメイドをお貸しくださいませ!」
「あ、あの、どなたか説明をお願いします」
あれ? 今説明したよね。聞いてなかった?
「べー様。わたしが説明しますのでメイド長さんに見えるようにしてください」
あ、ハイ。了解です。あらよっと。
「初めまして。べー様に取り憑いてるレイコと申します」
「はい。メイド長のシフ・リーンと申します」
へー。メイド長、シフ・リーンって言うんだ。メイド長が名前かと思った。
「いや、そんなわけないでしょう」
メルヘンからの突っ込み。そんな突っ込みで自己主張してんなや。
「そう言うことでしたか。生憎、わたしは魔王カガリ様を知りませんが、年代的に知っている方もいらっしゃると思います。少しお時間をいただけませんでしょうか?」
もちのロンよ。お願いしゃっす!
「決まったらミタさんの村に寄越してくれや」
ミッションコンプリート。さあ、戻ろっと。
「べー様、なにもしてないですよ」
なに言っての。誠心誠意、お願いしたじゃない。それがオレの仕事さ!
「……楽なお仕事ですこと……」
いや~。お願いするのもそれはそれで大変なんだよ。卑屈になったり、相手の善意を刺激したり、見返りを用意したりと、やってもらうにはいろいろ状況作りもあるんだから。あれ? ちょっと聞いてる? 反応見せなさいよ!
レイコさんからの無言の無視。悲しいわ~!
「あ、ツンツインテール」
玄関ホールまでやって来たら、花*花から出て来たツンツインテールが視界に入った。
「──!!」
なぜか脱兎の如く逃げ出すツンツインテール。ツインターボ炸裂か?
「ハイ、捕獲」
逃げられると追いたくなるのが人の性。まあ、捕まえたからと食おうってわけじゃねーんだがな。
「オイオイ。委員長さんとイイ、ツンツインテールとイイ、オレの顔を見て逃げるとか酷いじゃねーか」
「べー様と関わったらまた報告書を書かされますからね」
「ったく。報告書くらいサラッと書けるようになれよ。毎日日記書いてたら三千文字くらいコーヒー飲む間に書けんだろう」
「何気にべー様って文章書くの早いですよね。気づいたら一ページ書いてますし」
前世から書くのと読むのは得意だったからな。
「それで説明下手なのがよくわかりません」
文字だと無駄に書いっちまうが、言葉だと端的になっちまうんだよな。ふっしぎー!
「よし。ツンツインテールも湖改造計画に参加させてやろう」
「イヤー! まだ書くことあるのにー!」
「まったく。若い頃の苦労は買ってでもしろって言葉は知らんのか?」
「そんな言葉知らないわよ!」
「じゃあ、オレが言葉の意味を教えてあげてしんぜよう。まあ、わかるのは何十年か先になるだろうけどな」
ツンツインテールの首根っこをつかんで魔大陸へとレッツゴー!
「ハイ、お待たせ」
「また魔女?」
モブ子と談筆していた三姉妹。ちょっとの間に仲良くなってんじゃん。
「シーホー」
談筆していたモブ子が連れて来たツンツインテールに抱きついた。なんて感動物語だ?
「報告書を共有できる仲間が来て嬉しいのでは? たった半日で報告することが山とあるんですから」
そんな二転三転するようなことなかっただろう。
「べー様の中では一転もしてないでしょうけど、シーホーさんにしたら三十転四十転くらいしましたよ」
感受性豊かだな、モブ子は。
「それで片付けられたらシーホーさん、怒りで叫び出しますよ?」
それはそれでイイことじゃね?
「まあ、三姉妹の相手しててくれや。オレは住む場所を創るんでよ」
では、あらよ、ほらよ、どっこいしょー!
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