第1533話 人物帳を見てね

 第一妃の娘、ファリーヌ


 第二妃の娘、ミレーティー。


 第四妃の娘、ラサティル。


 よし。お前ら、覚えたな。オレは長女、次女、三女で覚えたからよろしくベイベ。忘れたらこれを見て確認してくれよ。じゃっ!


「誰に向けて、なんの告知ですか?」


 オレのスローなライフを楽しみにしてる大きなお友達向けてだよ! 悪いか!


「なんの逆ギレですか? 人物帳に書いててくださいよ」


 ったく。わかったよ。人物帳に書き書き。よし。皆、忘れたら人物帳を見てくれよな。


 ハイ、告知は終了。話を戻しま~す。


「こいつも天才か。もう体を浮かしてるよ」


 まったく、天才ってヤツは参るぜ。凡人がなし得たことをダッシュで追い越していきやがる。


 まあ、オレも神から三つも能力もらっておいてなんだが、凡人に授かるのと天才に授かるのでは雲泥の差だ。能力も使いこなせなければ宝の持ち腐れだ。


「いいな~! わたしも飛びたぁ~い!」


「わたしも飛びたぁ~い!」


 見た目もダークエルフ的にも幼いんだろうが、魔王の娘とは思えない幼さだな。ちゃんと教育受けてないのか?


「魔大陸で教育なんて概念、数百年前に滅びましたよ」


「戦争ばっかりしてる弊害だな」


 まあ、戦争じゃなくても教育の弊害はあるが、このままではダメな方向に育ちそうだ。ちょこらオレが教育してやるか。


「べー様が教育した結果がサプル様とトータ様では?」


「……イ、イイ子に育ったもん……」


「わたしの目を見て言ってくださいよ」


 滅多に前に出て来ねークセに、オレと目を合わせようとしてくる。オレは不都合な真実からは目を逸らす男だ。


 しがみつく長女と次女の首根っこをつかんで引き剥がす。鬱陶しいわ!


「レディ・カレット。ワリーがモブ子を頼むわ」


 驚いた? レディ・カレットたちもついて来たんだぜ。ただ、茫然として風景の一部になってただけさ。


 長女と次女の首根っこをつかんでその部屋から出た。


 ミタパパたちと魔王さんとの話はまだ続いており、泣いてるヤツもいた。イイ上下関係を築いていたってのがよくわかる。


「魔王さん。あんたらの娘、オレが預かるから。なにかあればミタパパを通して会いに来な。しばらくはミタさんの村にいるからよ」


「べー様。娘は村にいるのですか?」


「ああ。村の復興に励んでるよ。オレも手伝ってるからミタパパも帰る前によるとイイ」


「わ、わかりました。よらせていただきます」


「おう。あ、久しぶりの再会なんだし、酒でも酌み交わせ。動き出したときを祝うとイイ」


 無限鞄からテキトーに酒とツマミを出してやる。


「相変わらず歳に見合わぬ方です」


「世の中、見た目じゃわからねーこともある。時には心で感じることも大事だぜ」


 長命種が歳に見合わぬとか言っても苦笑いしかでねーよ。


「まあ、今このときを楽しめ。長く生きようとも今日という日は二度とやって来ねーんだからよ」


 前世を足しても年上なヤツらだろうが、死んだ記憶を持ってはいねー。死を受け入れ、なんの因果か記憶を持って生まれてしまった。その経験は人生観を一変させるものだ。


 そんなオレからのアドバイスだ。


「死ぬまでが人生だ。悔いは残すなよ」


 そう言って城から出た。


「レディ・カレット。村に帰るぞ」


 見習い魔女を残すなよ。オレはもう誰を連れてきたか忘れてんだからよ。


「……まったく、酷い方ですよ……」


 否定はしねー。オレは誰にでも優しくねーからな。


 レディ・マーキュリー号に長女と次女を乗せ、完全に風を操れてる三女を捕まえて放り込んだ。


「忘れ物はねーな?」


「わたしたちは物扱いかよ」


 お、ララちゃん、復活したんだ。まだまだ余裕があるってことだな。次回は命を削るほどの状況で撃たせてやるか。


「……碌でもないことを考えている顔だ……」


 お、さすが南の大陸で一緒に旅をした仲である。オレの考えを見抜いちゃってるよ。


「いずれ殲滅の魔女たる者が恐れてんじゃねー。どんな困難が訪れようと殲滅させれる気概を持て。お前の先をいく強者は何百人といるんだからよ」


 困難なときこそ笑え。そして、殲滅させろ。それでこそ殲滅の魔女と言う二つ名が輝くってもんだ。


「すごぉ~い! 空を飛んでる~!」


「眺めいい~!」


 さすが魔王の娘。ララちゃんより状況を楽しんでるぜ。


「三姉妹。オレが世界を教えてやる。しっかりくっきり世界を見るがイイ」


「うん、いっぱい見る!」


「楽しみ~!」


「わたしも~!」


 見習いより見込みがある三姉妹だ。もうイイってくらい見せてやるよ。


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