第1532話 腹違いの姉妹
エルフは五十歳くらいで十歳くらいの見た目だ。
リュケルトの村で何人か見たことがあり、リュケルトの話では五十歳から成長が早くなり、八十歳くらいで二十歳くらいの見た目になるらしい。
ダークエルフもそれと同じなら魔王さんの娘らは六十歳前後くらいか。オレを見る目は幼い。人にしたら七、八歳くらいっぽいな。
「あなた、なんて種族なの?」
「どこから来たの?」
「外はどうなってるの?」
なかなか物怖じしない好奇心旺盛な娘どもである。
「あんたら、三つ子なのか?」
「ううん。わたしは第一妃の娘よ」
「わたしは第二妃よ」
「わたしは第四妃」
「第三はどこに消えた?」
なぜ飛んだし!
「第三妃は王子を産んだわ。でも、病気で死んでしまったの。わたしたちが小さいとき、男だけにかかる病が流行ったの」
男だけにかかる病?
「あ、それ、ラザルーズって魔王が原因ですね。どんなことをしたかまでは知りませんが、ご主人様が言うには極小の蟲を放ったみたいです。ただ、無理矢理改造したみたいですぐに死んじゃったみたいですが」
蟲を改造って、先生みたいなマッドだったのか? ヤベー地だな、魔大陸って。
「あの、そちらの方、大丈夫なんですか?」
第二妃の娘が崩れ落ちてるモブ子を見た。
「なに、状況についてけないだけだから気にすんな」
「いや、魔王カガリの魔力に当てられたからですよ。あの魔力を前に平然としてられるべー様が異常なんですからね。まあ、リッチを雑霊扱いして今さらですけど」
「あ、あの。ヴィベルファクフィニー様の背後にいるのは精霊なんですか? あと、頭の上にいる妖精は……」
第四妃の娘がオレの背後を不思議そうに見てると思ったら、レイコさんが見えてたんかい。みっちょんは今さらだからどうでもイイです。
「あんたも魔眼持ちか?」
よくよく見れば第四妃の娘の左目、ぼんやりと紫色に染められている。
「妖精眼ですね。ダークエルフにはよくある眼ですよ。メイドの中にも何人かいましたね」
そうなん? 気がつかんかったわ。
「はい。わたしは霊力が強いと言われてます」
霊力が強いってことは精霊術に長けてるってことか?
「この方の属性は風かもしれませんね。感情に揺られて風をおこしてますから」
そう言えば、髪もやたら揺れてたな。知らず知らずに風を起こしてたんだ。
「風の精霊術が使えるなら飛べるかもしれんな」
エルフにも飛ぶ、まではいってなかったが、風の力で木々の間を飛んでたヤツがいたっけ。
「飛べるの!?」
「やり方次第では飛べるぞ。ほら」
と、結界術式、飛翔を披露してやる。
オレは風の魔術は使えるが、飛べるほど強くはない。だから結界で空気を集め、圧縮して噴射して飛ぶ方法を考案した。
けど、普通に結界の板を創り出して操るほうが簡単だと気づいてからはやらなくなったがな。
「わたしにもできる?!」
「霊力が強いならできんだろう」
エルフにできんだからダークエルフだってできるはずだ。要はやり方だ。
第四妃の娘を結界で包み込み、最大の風を吹かせてみせた。
「強っ!」
軽く張った結界を揺るがすほどの風である。しかも衣服をちゃんと守っている。基礎は学んでいる感じだな。
結界に色をつけ、第四妃の娘に視覚的にわからせ、足元に穴を四つ開けて浮かせさせた。
「オレの力で壁を創っているが、風で壁を創り、足元から噴射。体を浮かせたら風で体を吹かせたり、翼の形にしたりして軌道を変えたりすんだ。まずは自分の体を浮かせることを目指すとイイ」
それがステップ1だ。
「わかった!」
そのやる気やよし。大空高く飛び立つがよい。
「いいな~。わたしも空を飛んでみたい」
とは第二妃の娘。こいつは……あまり魔力は強くないな。人並み、ってところか?
「ミレーティーは剣が上手だからいいじゃない」
「ファリーヌは頭がいいじゃない」
腹違いの姉妹とは言え、能力はそれぞれ。近い存在だからこそ隣の芝生が青く見えるんだよな。サプルもトータもそうだったっけ。まあ、オレもだけどな。
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