第1531話 都市カルズラード

 しばらくしてミタパパがやって来た。なんか息を切らして。


「お、お待たせしました!」


「いや、そう急ぎではねーんだが、なんか急がせちまって悪かったな」


 オレの責任じゃねーが、この慌てっぷりに謝っておいた。


「あの、カガリ様とお会いしたとか、本当ですか?」


「ああ。会った。ミタパパに会いたいって言うから連れに来た。いくかい?」


「お願いします!」


 跪く勢いでお願いしてくるミタパパ。突然の別れだったのかな?


「仕事はイイのかい? 忙しいなら転移結界門を繋げておくぞ」


「いえ、今すぐお願いします!」


 と言うのでミタパパと配下のダークエルフ何人か連れて魔大陸へと転移した。


「……カルズラード……」


 ミタパパが涙を浮かべながら呟いた。


「おそらく、この都市の名前だと思います。カルズラードって名の都市、ありましたから」


 へー。未開かと思ったら魔大陸って昔は豊かな地だったんだな。なんでこんなに荒廃したんだ?


「いく人かの魔王が覇権を争ったからですね。その前は緑も生い茂ってましたし、いくつもの都市がありました。千年前はとても栄えていたと聞いてます」


 それは興味深い。誰か歴史を紡いでねーかな? あ、見習いにやらせたらイイか。


「後ろから刺されますよ」


 オレの後ろにいるのあなたでしょう。刺しにきたら教えてチョンマゲ。


「ってか、見習いはどうした?」


「ララシーさんならべー様の口車に乗って気を失いましたし、ミルシェさんなら食獣樹を調べてますね。シーホーさんはカガリさんの魔力に腰を抜かしてましたね」


 さすがレイコさん。よく見てるぅ~。


「べー様が見てる世界がどんなのか一度見てみたいものです」


 いや、あなたが一番オレの見える世界を見てるじゃん。オレは幽霊がなに見てるか知らんけど。夜中、ベッドの横で光られる姿はよく見るけど!


「てか、モブ子。魔王さんはどこいった?」


 未だに腰を抜かすモブ子。漏らしてたら言えよ。代えのパンツ貸すぞ。


「…………」


 奥を指差した。


「おそらく地下宮殿だと思います。こちらです」


 ミタパパたちの案内で奥へと向かった。あ、腰を抜かすモブ子の首根っこをつかんで連れていきます。


 霊界化は別の空間に逃げることのようで、解いたら廃墟になってましたって感じだが、多少なりとも現世に影響を与えるのか、奥に進むに連れて壁が朽ちてなかった。


「奥に入らせないための蓋みたいなものか?」


「霊界化は精神に影響を及ぼしますからね。無理に進もうとしたら肉体から魂が抜けてしまいます」


 それはエグいな。まさに霊界だ。


 五分くらい歩くと、地下に続く階段が現れた。


「この下が地下宮殿かい?」


「はい。王族だけが入れる場所です。わたしも入ったことはありません」


 じゃあ、入っちゃ不味いんじゃね? と思ったけど、ミタパパたちは降りてしまったので、オレもそれに続いた。


 階段は三百段くらいあり、降りた先は謁見の間的なところだった。


「……カガリ様……」


 奥の玉座に魔王さんと、見た目、十二、三歳の少女が三人控えていた。


「老いたな、レイレット」


 ダークエルフだけがわかる老いの変化。てか、ミタパパって何歳なん?


「三百歳。人で言えば五十歳くらいだと思いますよ」


 だとするとミタパパはイイ歳なんだな。


「生きてなさったのですな」


「ああ。娘たちを守るためとは言え、お前たちを見捨ててしまった。すまぬ」


 頭を下げる魔王さん。もう威厳も恥もない、って感じだな。


「積もる話もあるだろう。オレは下がらせてもらうよ」


 歴史には興味はあるが、お涙ちょうだいに興味はねーし、部外者に見せたくねーこともあるだろうからな。


「ファリー。ヴィベルファクフィニーを奥に案内してくれ」


「はい。お父様。ヴィベルファクフィニー様。こちらへ」


「オレが入ってもイイ場所なのかい?」


 入ったらなんか義務が発生するところならご遠慮申し上げそうろう。


「構わぬ。もう朽ちた国で民もいぬのに都市。廃墟にしか招かれぬことをすまないと思う」


 ジャックバ○ワーかな?


「招いてくれるならオレは廃墟だろうが気にしねーさ」


 娘さんに案内され、さらなる奥に案内してもらった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る