第1530話 園花館(そのはなかん)
「懐かしいな」
それに開発も進んでる。ちょっとした町もできてるよ。
「まだ数ヶ月前のことなのに数年振りにやって来たと思うのはなんででしょうね?」
きっとのんびり生きてるから流れる時間がゆっくり感じるんだろう。まさにスローなライフだ。うんうん。
「誰への説明ですか?」
オレのスローなライフを応援してくれる一万人くらいのファンにだよ。
「微妙な人数ですね」
何人でもイイんだよ。オレはオレのために生きてんだからよ。
「魔族だけじゃなく人も増えてんな」
「東の大陸の人もいますね」
確かに東洋系の顔立ちをしたヤツが何人もいる。チャンターさんが連れて来たのかな?
「べー様!?」
背後から呼ばれて振り向いたらクルフ族と思われる男がいた。ん? 誰や?
「ハイルクリット島で飛空船を整備しているマルガと申します」
「へー。飛空船まで来てんだ。あ、そう言えば、チャンターさん飛空船を買ったとか言ってたな」
双子が産まれる前に聞いたからまだ東の大陸と行き来はしてないだろうが、物資を運ぶために飛空船を使ってるのかもしれんな。魔道船でも数日かかるだろうし。
「今はまだゼルフィング商会の飛空船しか来てませんが、もう少しでオン商会の飛空船も来るそうです」
「相変わらず行動が早いチャンターさんだ」
あれなら数年で東大陸一の商人になるかもしれんな。
「まあ、がんばってくれや。ここは大事な中継地になるだろうからな」
「はい。がんばります!」
クルフ族の男と別れ、園花館へと向かった。
門番も見張りもいないので勝手にお邪魔しま~す。ミタパパはどこかな~?
「べー様! いらっしゃってたんですか」
またまた声をかけられて振り返ったら青鬼の男だった。この顔は覚えがある。名前は一文字も思い出せんけど!
「カイエモンさんですよ。カイナーズから出向している」
あーハイハイ。まったく記憶にねーや。でも、お仕事ご苦労様です! なんの仕事してるかわかんないけど。
「おう、久しぶり。ミタパパいるかい?」
「今、港にいっております。東の大陸から船が来て、その対応に出ています」
「東の大陸からの船、よく来るのかい?」
「今回ので三隻ですね。六ヶ国同盟からは四隻来ました」
「結構往来があるんだな」
「はい。ここを根城としていた海賊がいなくなったと知れ渡ったようで、交易が再開されたそうです」
あ、いたな、海賊(1025話~)。転生者が関わってそうな感じの(タカオサの物語を読んでね)。すっかり忘れてたわ。
「タケルさんたちが死にそうになった事件なんですけどね」
あ、タケルな! あいつ、ちゃんとやれてるかな? 見にいこうとしてて忘れてたわ。
「じゅあ、港にでもいってみるよ」
「急ぎでしたら呼んできますが?」
「まあ、急ぎは急ぎだが、そう慌てる必要もねーさ。ミタパパに会わせたい人──いや、魔王か。魔王カガリって知ってるかい?」
「ま、魔王カガリ!? 魔大陸で最大の文化都市を築いた魔王ですよ! もう百年前に滅んだとレイレット様から聞いてます! 一体どう言うことですか?」
「その都市にいったら霊界化して生きてたんだよ。魔王カガリがミタパパに会いたいってから呼びに来たのさ」
と言ったら青鬼さんが館を飛び出していってしまった。なんやねん?
「呼びにいったんじゃないですか?」
「なんかワリーことしちまったな」
まあ、あとを追うのもなんだ。戻って来るまでコーヒーでも飲んで待つか。
元はプリトラスな園花館。造りはそう変わらんので食堂に向かってみた。
ここの時間はわからんが、太陽の角度からして午後三時くらいか? そういや、昼食ってなかったな。いろいろありすぎて腹減ってたのも忘れてたよ。
食堂はやっているみたいなので、今日のオススメの煮魚定食を頼んでみた。
「おっちゃん。煮魚定食一つ頼むわ」
厨房で働くのは人族で、料理人ってよりその筋のもんって感じである。
「うん? ガキがいるなんて珍しいな」
どうやらオレを知らないようだ。
「ああ。ミタパパ──じゃねーな。館長に会いに来たんだよ。今、青鬼さんが呼びにいったからなんか食って待とうと思ってな」
「館長に? もしかして、あんたがベーかい?」
「おう。そのベーだよ。よろしくな」
オレのことは知らせてくれたか。よかったよかった。
「あ、ああ。王都での話は聞いてるよ。ガキだとは聞いてたが、本当にガキだったんだな」
王都での話? なんかあったっけ?
「ありすぎて覚えてもいない感じですね」
うん、まあ、そうだな。いろいろあったし。日記見ねーと思い出せんわ。
「はいよ。煮魚定食だ。ゆっくり食ってきな」
とりあえず過去のことより煮魚定食だ。席に運んでいただきま~す。ムシャムシャあーウメー!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます