第1524話 次の犠牲者は君だ!
二日かけて五十メートル先くらいまでの泥を掻き出し、土魔法で創った小石を敷き詰めた。
水を塞き止めていた結界を浄化結界に切り替え、少しずつ水を流した。
満ちるまでの間、捕まえた食獣樹の育成する囲いを造ることにする。
「ベーって、意外と働き者よね」
なにが楽しいのか、オレのやることを見学しているレディ・カレット。あなた、冒険してたんじゃないの?
「オレはいつだって働き者だよ。働きすぎて他のヤツの仕事まで奪っちゃうくらいにな」
お陰であっちいけって言われるくらいだよ。クスン。
「確かに一大事業を一人でやられたら周りの人はたまったもんじゃないわね」
「だからこう言う作業は楽しいんだよ」
誰に気兼ねなく自由に全力投球できる。最高だぜ。ってまあ、やりすぎないようは注意するけど。
小さくしたままなので囲いは結界使用能力限界までにし、穴掘って逃げられないよう地下にも結界を施しておく。
「池も創っておくか」
根が地上に出てるから地中から水分補給するかどうかわからん。池を創っておけば根をつけて補給するだろう。動く樹なんだから。
「チビッ子さんにも見せてやるか」
なんか植物に興味がありそうな感じだし、興味が持ったら一体(本か?)くれてやろう。
「ドレミ。チビッ子さん、どこにいるかわかるか?」
ちょっとドレミネットで検索してください。
「ゼルフィングの館の食堂におります」
また報告書作成か? 書いてばっかりだな。
「書かせてる張本人はベー様ですけどね」
ハイ、まったくもってその通り。若き見習い魔女に艱難辛苦を与える者なり。ケケケのケ。
「ベーが悪い顔で笑ってる」
「心の中でも悪いこと考えてるわよ」
やん! オレの心を見ないでぇ~!
なんて茶番はそのくらいにしてゼルフィングの館へとレッツ転移! 食堂に忍び足。他の見習いたちと仲良く報告書作成するチビッ子さんの背後にこんにちは。トントンと肩叩き。リストラじゃないから安心して振り返るがよいぞよ。
「え? はい──!?」
「出番だ。チビッ子さん」
君に拒否権はありません。速やかに連行されなさい。
騒がれても面倒なので結界で拘束。よっこらしょういちと担いで撤収! 魔大陸へと戻って来ました~。
「その服、もしかして大図書館の魔女?」
「の見習いだ。今、うちで何人か預かってんだよ」
あれ? 何人だっけ? あ、十人だ。一ヶ所にいてくんねーから何人だったか忘れてたぜ。
「連れ回してるのも大体はベー様ですけどね」
大体と言うことは見習いの自主性もあるってこと。なら、お互い様だ。
「お互い様ではないと思いますよ」
そんなことはどうでもイイんだよ。テキトーに言ってんだから流しとけや。
「あ、あの、わ、わたしはなんで連れて来られたんですかぁ?! なにさせられるんですか!? わたし、まだ報告が溜まってるのに……」
今にも泣きそうである。が、オレに女の涙は通じねーぞ。泣いてるならさらに泣かしてやろうホトトギス、だぜ。
「……容赦のない村人です……」
容赦? オレの容赦は脱着式だ。あ、取るの忘れてた。ホイっと。
「……ううぅ。わたし、なんで志願したんだろう。あのときの自分を殴ってやりたい……」
「そうかそうか。志願したか。見所があるヤツだとは思ってたが、志願するほどだったとはな。よしよし。志願したことを後悔──じゃなくて、よかったと痛感するくらい充実した日々にしてやろう」
ただまあ、報告書の枚数が増えるのはご愛敬ってことでガンバ! だぜ☆
「……悪魔のような方です……」
我が子じゃねーが、オレは将来有望なヤツは千尋の谷に放り投げる男である。まあ、這い上がって来ないと困るので調整はするけどよ。
「ほら、いつまでも泣いてんじゃねーよ。魔女なら目の前にある未知なるものに心を躍らせろ。新たな知識に貪欲になれ。ほれ。あれは魔大陸に生息する食獣樹だ。なんでも旨い実を生らすそうだぞ。栄養摂取は根でやるそうだ。オレも食虫植物の補食シーンは見たことはあるが、食獣樹は初めてだ。どんな補食するんだろうな?」
って! そのエサを用意してなかった。
魔大陸にエサとなるものいるかな? てか、なんかいるのか? こう言うときはミタさんだな。なんたって地元民だしな。
「ミタさん、どこですか~?」
チビッ子さんの首根っこをつかんでミタさんのところへと向かった。
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