第1522話 食獣樹

 上空に出現。すぐに結界で三人を包んだ。


「随分と低く飛んでたんだな」


 百メートルもないんじゃなかろうか? のんびりしてたら地面に叩きつけられてるぞ。


「うん。お陰でアレに落とされそうになったよ」


 レディ・カレットが指差す方向に五つの首を持つ竜がいた。八岐大蛇か!? あ、五つしかねーから……なんて呼べばイイんだ? 


「さすが魔大陸。凶悪なのがいるな~」


「コズミですね」


「コズミ?」


「ええ。湿地帯に生息する他頭竜種の一つなんですが、森にいるのは珍しいですね。亜種でしょうか? ちょっと小さいです」


 頭の先から尻尾まで二十メートルくらいあるのに小さいんだ。湿地帯にいるのら二十五メートルくらいあんのか?


「あいつ、火の玉を吐くよ」


 そう言う大切なことはもっと早く言いなさいよ!


 結界を強化したその瞬間、一つの頭が口を開けて火の玉を放ってきた。威力あんな!


 強化した結界が揺れるとか、当たってたら燃える前に木っ端微塵になってるところだぞ。


「縄張り意識が強いのか?」


「おそらく、子育て中ではないですかと思います。コズミは子を産むとき湿地帯から上がりますから」


「なるほど。だから気が立ってんのか」


 別にコズミに興味はねーし、狩ろうとも思わねー。結界を操ってコズチの前から去った。


 一キロほど移動したら地上に降りて結界を解いた。


「ここに住んでる魔王とか種族はいんのかい?」


 これだけ豊富な木が生い茂ってるなら縄張りにしてる者もいんだろうよ。


「いないと思いますよ。ここには食獣樹がいますから」


 また不穏な名前が出て来たな! なによ食獣樹って!?


「あ、来ましたよ」


 レイコさんの腕が背後から伸ばされ、その先に三メートルくらいの木が、いた……。


「マングローブみてーだな」


 オレらが住む大陸にも動く魔物の植物はいる。タケルたちとバリアルの街にいく途中で遭遇したフレンドットなんてそうだ。※463話読んでね。


「根で獣の体液を吸います。あれはまだ一年も経ってないと思うので、小動物を狩ってるのかもしれませんね」


 一年で三メートルにもなんのかよ。成長早いな!


「栄養次第ですね。この森には魔物や獣が少なさそうですから」


 動けるほうが不利じゃねか? なんで動けるように進化したよ? 


「ベー! 襲って来たよ!」


「木じゃ食えねーし、薪にしても燃えなさそうだな。追い払うか」


 殺戮阿を取り出して振りかぶった。


「あ、そう言えば、食獣樹って甘い実を生らすんでした。ご主人様が好きでしたっけ」


 レイコさんの呟きに慌てて振り出した殺戮阿の軌道を変えて空振りにする。ほんと、そう言うのは早く言えや!


「捕縛!」


 転びながらも結界で食獣樹を捕縛した。


「ったく。服が汚れっちまったぜ」


 ちょっと湿気ってるから結構汚れっちまったよ。


 結界で泥を弾き飛ばし、また転ぶのも嫌なので結界を纏った。


「ベー様って意外と綺麗好きですよね。村人なのに」


 綺麗好きに村人は関係ねーだろうが。オレは必要なら汚れるのも厭わねーが、無駄に汚れるのは嫌なだけだ。


「そんで、先生が好きって、血の味でもすんのか?」


「どんな味かまでは知りませんが、瑞々しい甘さがあるとは言ってましたね。絞りカスは実験用の魔物のエサにしてました」


「吸血族が木の実を食べるか。よし。ミタさんの村に運んで育ててみるか」


「食獣樹、人も襲いますよ」


「そこは結界で閉じ込めておくさ。あそこなら文句を言うヤツもいねーだろうからな」


 育ったら帝国に置いたフュワール・レワロに放り込めばイイさ。


「他にも食獣樹はいるかな?」


「いるとは思いますよ。まあ、ここまで大きいのがいるかはわかりませんが」


「いるなら構わねーさ。エサを与えたらイイだけだしな」


 害獣ならいくらでもいる。またカムラにいってゴブリンでも捕まえてくるとしよう。


「と言うか、ここに来たの、木を移植するからだったんじゃないの?」


 そうでした~!


 だが、移植はいつでもできる。今は食獣樹捕獲にレッツらゴーだ!

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