第1521話 イエス、マイ・レディ

 無限鞄からゼロワン改+キャンピングカーを出し、ドッキング解除してキャンピングカーだけ残してゼロワン改は仕舞った。


 キャンピングカー独自で運転できるので、移動用を兼ねてここに置いてくとしよう。


 ドレミにレディ・カレットたちにお茶を淹れてもらい、冒険譚を聞かせてもらった。


「へー。魔大陸に森があったんだ」


「バイブラストのような森じゃないけど、この荒野では珍しく生い茂ってたわ」


 それはイイことを聞いた。魔大陸に自生する植物があるならここに移し替えても育つはずだ。


「そこまで遠いのか?」


「飛空船で四日の距離だよ」


 となると大体四、五百キロくらいか? 気候が変わるには充分な距離だな。


「よし。ちょっとそこまで連れてっくれ。ドレミ。シュンパネあるか?」


 あると思ったらいつの間にかなくなってたわ。


「はい。創造主監──増産させてました」


 今、監禁とか言いそうになったよね!? ドレミが言い直すなんて初めてだぞ。


「あ、ああ、そうか。ほどほどにな」


 あそこも主を主とも思わねーことするスライムがいるからな。酷いことになってんだろうよ。


 どこからともなくアタッシュケースを出現させるドレミさん。サラッと流しておこう。


 アタッシュケースを開くと、シュンパネが結構な数が収まっていた。


「レディ・カレット。十個くらい持っておけ」


 テキトーにつかをやでレディ・カレットに渡した。いざとなればそれで逃げろ。


「使い方知ってるよな?」


 レディ・カレットの前で何回も使ったし、公爵どのにも渡してる。今さら説明もいらねーだろう。


「ええ。知ってるわ。けど、上空から見たから上空に現れると思うよ。森には巨大な魔物がいたから降りなかったの」


 さすが魔大陸。おっかねーのがいそうだわ。


「その辺はオレが上手くやるよ。場所さえわかればあとは勝手にいくからよ」


 一度いけば転移バッチでも転移結界門でもいけるからな。


「わかったわ。けど、わたしも付き合うからね。べーがいれば安全だし」


 それは相手によりけりだが、まあ、魔王でも現れるんじゃなければ負けることもねーだろう。


「ところで、頭の上の子って、プリッシュじゃないよね? わたしの目がおかしくなってないよね?」


「あ、ちゃんと見えてたんだな。見えない人かと思ったよ」


「いや、べーじゃないんだから見えるものは見えるわよ」


 オレは見たくないものは見ないようにしてるだけだ。いや、たまに見えてないときもあるけど!


「プリッつあんとトレードしたみっちょんだ」


「トレードがなんなのか知らないけど、プリッシュに怒りの鉄拳を食らわせられるわよ」


「怒りの飛び蹴りなら何度も食らってますが?」


 それはノーカンですか?


「それはべーが悪いからでしょう。プリッシュを蔑ろにするんだから」


 蔑ろにされてるのはオレのほうだと思うのですが。ここ最近、プリッつあんと遭遇もしてませんし。どこでなにをしてるのかも知りませんぜ。


「わたしはミッシェル。みっちょんでもなんでも好きに呼んでもらって構わないわ。わたしは、べーのすることがおもしろいから一緒にいるだけだしね」


「……べーみたいな子ね……」


 オレはみっちょんほど存在感は薄くないぞ。


「まあ、なんでもイイよ。森のところに連れてってくれや」


 似てようが似てまいがどっちでもイイ。今は森のほうが優先だ。


「わかったわ。ミゼル。ライジラ。ついて来て」


 キャンピングカーから出ると、一緒にコーレンで降りて来た冒険者スタイルの女が拳を胸に当てて「イエス、マイ・レディ」と答えた。


 誰だ? そんな中二的返事を教えたバカは? ちょっと二時間くらい事情を聞かせてもらおうか。


「わたしのお目付け役よ。お父様がつけて下さって、カイナーズで訓練してもらったの」


 エリナかと思ったらカイナのほうか。ほんと、碌なこと教えねーよな!


「べー様も碌なこと教えませんけどね」


「よし、いくぞ、レディ・カレット」


 嫌なことは右から左に流してレッツらゴーだ。


「相変わらずなんだから」


「オレを変えたきゃ世界を揺るがすほどの出来事を起こすんだな!」


 それならちょっとは変わるかもしれんぜ。


「ハァー。まあ、いいわ。じゃあ、いくわよ」


 シュンパネを掲げ、森のあるところへとゴゴゴー!


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