第1520話 久しぶりの再会
ミレズのシェイクが完成~! ゴクゴクゴクゴクプハー! 旨い! もう一杯!
「そこまで期待してなかったが、想像以上の完成度だ」
もしかしてオレ、本当は料理の才能があるんじゃね?
昔は台所を燃やしてしまってサプルから立ち入り禁止を受けてしまったが、台所の一つや二つ犠牲にすれば料理人になっていたのではなかろうか? いや、なっていたかもしれんぞ。
「普通の人は台所を燃やしませんし、二つも犠牲にしませんよ。たかが飲み物一つ作れたくらいでそこまで増長しないでください」
クッ。人のやる気を削ぐ幽霊だ。もっと褒めて伸ばしなさいよ。
「べー様は煽てると変な方向に突っ走るんですから謙虚でいたほうがいいですよ」
ウム。現状に甘えるなってことね。確かにミレズシェイクはもっと旨くなるものだ。イイだろう。シェイクの高みを目指してやるぜ!
「いや、だからそれが変な方向なんですよ。あーもー聞いちゃいない!」
オレは常に全力投球。雑音など右から左にさようなら~だ。
「うっ。さすがに飲みすぎた」
作っては飲み作って飲んでをやってたら体が冷えてきた。地竜のように腹を壊す前に体を温めておくか。
「こう言うときはサウナだな」
オレはゆっくり湯船に浸かる派だが、サウナも嫌いってわけじゃねー。レイン湖に遊びにいったときに創って入ってたものだ。
土魔法で創った小屋から出て、あらよっと。ハイ、サウナ完成です。
「最近、はしょりすぎじゃないですか?」
工程はそれぞれの脳内で思い浮かべてくださいませ。オレの物語はセルフです。
「まるで意味はわかりませんが、他人任せってのは理解しました」
そうですか。それはなによりです。
外から暖炉に火を入れ、よく火が回ったら裸になって小屋へと入り、バケツに入れた水を暖炉に水をかけた。
「うん。次はもっとしっかり創ろうっと」
今は体が温まればイイさ。フヒ~。
じんわりと体が温まってきて汗が出てきた。芯まで温まったら外に出て湖に走って飛び込んだ。
「うびぃ~。気持ちイイ。けど、クセーな」
湖を濾過したが、臭いまで意識がいってなかったわ。
結界で臭いを遮り、すっぽっぽんのまま泳ぎ出した。
「……この湖、なんとかしないとダメだな……」
周囲に高い山はなく、穴を掘っても水が出てくるとは思わねー。そうなると湖を飲料水とするしかねーだろう。だが、水質が悪すぎる。浄化施設がねーと無理だろうな。
「木を生やして土壌改良したり河川工事したりしねーとこれから長く住んでいくのは難しいだろな」
エルフたちを住まわせたのもそれが理由だが、それでもここが緑に溢れるのは百年以上はかかるだろうよ。
「べーが考えることなの?」
なにやら声がして振り向いたら雲の船に乗って漂うメルヘン。いやん。えっち。
「べーのポークビッツなんて興味ないわよ」
誰がポークビッツじゃい! いや、今はそんくらいだけど、大人に──って、なに言わせんじゃい! オレの物語は下ネタ禁止だわ。
なんか萎えたので湖から上がり、結界で乾かし服を着た。
「コーヒーでも飲むか」
また体が冷えたし、熱いコーヒーを飲んで温まるとしようかね。
竈を創って薪を放り入れ、魔術で火をつけた。あ、皆の衆。簡単な魔術なら使える設定を忘れたらあかんぜよ。
土魔法で創った椅子に座りながらコーヒーを飲んでると、空の向こうになにか点みたいなのが見えた。飛空船か?
「どこの飛空船だ?」
「カレット様です」
こちらに向かって来るので眺めていたら、ミタさんが現れてそんなことを言った。
「カレット? 誰?」
「公爵様の娘さんですよ。べー様がレディ・カレットって呼んでる方です」
「あーハイハイ。レディ・カレットな。なんか久しぶりに名前を聞いたよ。って、なんでレディ・カレットが?」
「公爵領の地下にあった飛空船が動いたそうで、魔大陸を冒険してるそうです」
あーあった……ようななかったような? 戦略ニートのインパクトありすぎてよく覚えてねーや。まあ、あったってことで進めていくとしよう。
「公爵どのの娘だな」
よりにもよって魔大陸を冒険するとか公爵どのの血を引いてるとしか言い様がねーな。
やがて飛空船は湖へと着水。コーレンでレディ・カレットと女がやって来た。
「べー、久しぶり!」
「おう。久しぶり」
これと言って感慨はねーが、再会したことを喜ぶとしよう。
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