第1491話 闇夜の光、再び

 ルヴィーを飽きるほど抱いたら館へと戻った。


「べー様ってなに気に子供好きですよね」


 なに気ってなんだよ? オレは純粋に子ども好きだよ。そして、子どもに好かれるんだからな。


 離れまでやってくると、ダリムと金髪さんがアホ梟と戯れていた。報告書作りは終わったのかな?


「やっと来た」


「ん? どうしたい?」


「ザーネルさんから報告よ。競りが始まるって」


 ザーネル? 誰や、それ?


「ダメよ、ダリム。この人、名前を覚えられないって言われてるでしょう」


「あ、そうだったわね」


 なにか蔑まれた目で見られるオレ。敬意を持てとは言わないが、人を思いやる優しさは持ってくださいませ。


「あなたが女獅子と呼んでる女性よ」


「ああ、あのねーちゃんか。そんな名前だったな」


 あのねーちゃんは巨乳がデフォだから。


「じゃあ、カムラにいってみるか」


 転移結界門から出て転移バッチを──って、二人もいくんかい?


「コリアント様からの命令だから仕方がないじゃない」


 嫌々かい。まあ、報告書とセットならついてきたくはねーだろうよ。オレが嫌われてたらちょっとショックだけど!


 改めて転移バッチ発動。三人でカムラ王国へと転移した。


 現れた場所は前に連れてってもらった料理屋の前。ここの印象が強かったからここにしたまでです。


「えーと。市会の溜まり場はどっちだったっけな? ダリム、覚えてる?」


「覚えているわけないでしょう。あんな迷路みたいなところ」


 だよね~。オレもメンドクセーから結界マークつけなかったし。


「ダリム、あなた、なにがあったのよ? この人、名前覚えれないと言ったでしょう! まさか、大図書館の掟を破ったわけじゃないでしょうね!?」


 なんだなんだ? 人の往来でケンカすんなよな。


「するわけないでしょう! 変な勘繰りしないで!」


「ほらほら、ケンカしない。いくぞ」


 市会の溜まり場までの道順は忘れたが、まあ、オレの出会い運が働いたら誰かに会えんだろう。それまで買い物でもしながらブラブラでもしますかね。


 なんて言ってる側から懐かしい人物に遭遇した。


「騎士のねーちゃんじゃん。久しぶりだな」


「え? えっ? ベ、べーくん?!」


「おう。そうだよ」


 懐かしい人物は闇夜の光の騎士のねーちゃんだ。思い出せないお友達は最初から読み直してね。


「また大きなお友達への報告ですか?」


 ハイ。オレの大切な大きなお友達さ。去年のことだけど、大きなお友達の中では数年も前のことに感じてることだろうからよ。


「まだカムラにいたのかい?」


 六月くらいにカムラの隊商と出ていったが、冬までカムラにいるとは大仕事でもやってんのかな?


「……な、なんでここにいるの……?」


「いや、うちで大量に人を雇ってよ、その給金を払うためにここの競りに薬を出したんだよ」


「人を雇う? なんだか意味わからない状況になってそうね」


「そうだな。疾風怒濤の日々だったよ」


 思い起こせばいろいろあったっけ。ありすぎて忘れてることが多々あるぜ。きっと思い出したら進展もあるだろうよ。


「そのようね。面子を見ただけでいろいろあったと予想できるわ。どんなかは想像もできないけどね」


 想像できたらねーちゃんはエスパーだよ。サイキッカーナイトとして認定してやるよ。


「頭の妖精、王都で拾ってきた子じゃないわよね?」


 プリッつあんがいたときねーちゃんらいたっけ? ゴメン。オレも最初から読み直すわ。オレは日記だけどな。


「こいつはみっちょん。バイブラスト公爵んとこの地下で出会った」


「ミッシェルね。よろしく」


「え、ええ。よろしく……」


「そっちの二人は大図書館の見習い魔女だ。今、うちで預かっている」


「ダリムです。お見知り置きを」


「ミサリーです。よろしくお願いします」


 金髪さん、ミサリーってんだ。ってか、エリナんとこにいった見習いだったよな?


「こちらこそ。わたしはトコラ。冒険者よ。闇夜の光と言うパーティーを組んでいるわ」


 騎士のねーちゃん、トコラなんだ。トアラと被るな。まあ、オレの中では騎士のねーちゃんだからイイんだけどよ。


「なんでねーちゃん一人なんだ? 他は?」


「聞き込みよ。ここに万能薬が……」


 そこで騎士のねーちゃんが押し黙り、オレを凝視してくる。なによ?


「べーくん、カムラにいつ来たの?」


「いつ? 確か四日前に一回来たかな?」


 双子と二日くらい戯れて、ルヴィーとも二日くらい戯れたはずだ。


「……じゃあ、違うか……」


「なによ、いったい?」


 説明プリーズだよ。


「いえ、これは依頼だから詳しいことは言えないの。ごめんなさい」


 仕事。なら守秘義務はしょうがねーな。口が固いことも冒険者に求められるって話だからな。


「そうかい。まあ、深くは聞かんよ。またな──」


「──待って!」


 仕事の邪魔しちゃワリーと立ち去ろうとしたら肩をつかまれてしまった。なによ?


「べーくんが売った薬って、世間一般に売れないものなの?」


「まーそうだな。城一つ建てれるくらいのものだな」


 いや、国家予算に匹敵するものかな? 実際売れてみんとわからんけどよ。


「それは竜の泉じゃないわよね?」


「竜の泉? 竜の秘薬でなくて?」


 竜の泉がなんなのか知らんが、竜の秘薬なら知っている。エルクセプルの劣化版だ。


「……秘薬……?」


「万能薬と呼ばれるものなら竜の秘薬だと思う。泉は毒消し薬に使われる隠語だったはずだ」


 ちょろっとだけオババから聞いた記憶がある。


「あーはいはい。確か百年くらい前にそんな呼び名が流行ったことありましたっけ」


 呼び名に流行り廃りがあるんだ。初めて知ったよ。


「べーくん、確か薬師だったわよね?」


「ああ。薬師だよ」


 ちゃんと金を取れる薬師ですぜ。


「毒にも強い?」


「そこまで詳しくはねーが、そこそこの知識はあると思うぞ」


 一時期、ゴブリンで実験しまくったからな。


「ご主人様と気が合うはずです」


 先生ほどマッドではありませんけどね。


「お願い。わたしと一緒に来て!」


 と、騎士のねーちゃんに腕をつかまれ引っ張られました。なんやの、いったい?

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