第1468話 アウトなヤツ

「迷子の迷子の骸骨兵レイダーちゃ~ん。あなたのお家はどこですか~。お家を訊いてもわからない~。名前を訊いてもわからない~。滅滅滅ー。襲って来るばかりの骸骨兵ちゃ~ん」


 なんて歌いながら骸骨兵を滅していく。


「その歌、今の状況に似合わないんですけど」


 そう? 今のオレはそんな気分ですけど。


「しっかし、クソ雑魚すぎるだろう。カルシウム不足か?」


「カルシウムがなんなのかわかりませんが、絶対、そうじゃないとだけは言えます」


 そう断言する幽霊さん。まあ、オレもそうだとは思わんけどよ。


「飽きた。いろは、あとは頼むわ」 


 出番の少ないいろはさん。君に任せた。


「イエス、マイロード」


 どこからか大人バージョンのいろはが現れた。メイド型ではなく、なんか青いドレス? を着て、なんか西洋の剣を持って。


 なんだろう。アウト臭がプンプンする。


「ドレミ。あれは、エリナか?」


 アウト臭の他にエリナ臭もする。あれは絶対に映像化しちゃダメなヤツだ。


「はい。最近、創造主は同士とコスプレをするのに嵌まっていて、いろはに装備させたようです」


 やっぱりか。あいつは本当に碌なことしねーな!


 と言うか、あいつはコスプレまでこの世界に広めようとしてんのかよ。じゃなくて、同士まで作ってんのかい! 腐食力が凄まじいヤツだよ……。


「よし、いろは。なにも口上するな。押し黙って排除しろ」


 アウトなものは極力耳を塞ぎ、目を閉じよう。さすればアウトなことはないのだ。


「殿はオレに任せろ」


 後方に移動し、すべてのことから目を背けた。


 明鏡止水(現実逃避)をしながら進むと、銃撃の音が近くなった。


「マイロード。ハンターたちが押されています」


「蹴散らせ」


 なるべくアウトなことを出さないように。決して剣を光らせたりはするなよ。


「あの剣凄いね! 一振りで骸骨兵が塵になってるよ!」


 そばかすさん。そう言う説明はイイから。黙っててください。


「な、なんだ!?」


「カイナから頼まれて応援に来た! 下がれ!」


 頼まれちゃいないが、バリッサナではカイナの名前は絶大だ。そう言っときゃ信じてもらえんだろう。


「た、頼む!」


 本当に絶大だな。あっさりと信じて下がってしまった。


「いろは、蹴散らせ!」


「イエス、マイロード!」


 なんかやる気に満ちたいろはさん。剣を鞘に戻して構えた。


 あ、うん。これはアウトのヤツだ。見ない、聞かない、気にしない~で時間を進めま~す。


 ………………。


 …………。


 ……。


 ハイ、終~了。骸骨兵は綺麗さっぱりいなくなりました~。イェーイ!


「大丈夫かい? ケガしているヤツがいるなら診るぞ。オレ、薬師だから」


「あ、ああ。頼む」


「了解。いろは、周囲の警戒。ドレミはなんか食事を頼む。そばかすさんは、どこにもいくなよ」


「わ、わたし、そんなほっつき歩いたりしないよ!」


「ハイハイ。フラフラどこかにいこうとしたのは見なかったことにしてやるよ。みっちょん、見張っとけ」


 大して役に立たねーんだから大人しくしてろ。


「わたしらいらない子になってるわよ」


「なにかあれば役に立つよ、わたし」


 ハイハイ。文句なら壁に向かって言っていろ。こっちはケガ人の治療で忙しいんだからよ。


 骸骨兵の剣でやられたようで、大体のヤツは切り傷なので、傷口を水で洗ってやり、回復薬を飲ませればハイ、終了。薬師殺しの薬である。


「そのうち援軍がくるだろうから、あんたらは食事してゆっくり休みな。オレらが見張ってるからよ」


「すまない。そうさせてもらう」


 疲れ切ったハンターたちはドレミが用意した食事をたらふく食い、創り出した結界ベッドで深い眠りについた。


「カイナの名前はスゲーな。あいつ、どんだけカリスマ性を持ってんだよ?」


 それだけのカリスマ性を持ちながら王にならないなんてふてー野郎だ。やる気があるなら世界の王に仕立てるのによ。


「……本当に裏で暗躍させたらダメな人ですね……」


 失敬な。オレは謙虚なだけだ。


「てか、そばかすさんとみっちょんはどうした?」


「探検してくるそうです」


「自由か!」


 どいつもこいつもフリーダムすぎんだろう。少しはじっとして──おっと、ブーメランが。危うく刺さるところだったぜ。フィー。


「なんの茶番ですか?」


「夢と魔法の茶番劇さ」


 詳しくはプリッつあんに訊いてください。あのメルヘンが名づけたんだからよ。

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