第1467話 迷路街
長い螺旋階段を降りたところは街だった。
謎の光に照らされ、なんかちょっと感動的な光景である。世が世なら世界遺産に登録されること間違いなしである。
「やっぱり箱庭だな」
「正しくはその周辺都市ですね。フュワール・レワロに入ったわけじゃないですし」
「バイブラスト方式か?」
あそこも天の森の周囲にはダンジョンらしきものがあって魔物が出ているみたいだからな。
「大穴の周りに街か。天地崩壊後に地上へ出る前の街だろうか?」
「そうかも知れませんね。あまり深くないですから」
三百メートルは降りただろうが、宇宙規模で見れば薄皮一枚だろうよ。あ、薄皮饅頭食いたくなった。
「ミタさん……はいなかったな」
お菓子には自己主張の高いミタさんならすぐに動いてくれるんだがな。
「ミタレッティー様をお菓子を持ってくる存在にしか思ってないんですか?」
「旨いコーヒーを出してくれる存在だとも思ってるぜ」
コーヒー好きのオレよりオレの好みに淹れてくれる。グレン婆からもらったコーヒーポットの出番が減ったくらいだ。
「……ミタレッティー様が不憫です……」
「随分とミタさんの肩を持つな? 最初の出会いは銃弾だったのに」
まあ、オレに向けられたのも同じもんだけどな!
「そのあとミタレッティー様を盾にしてましたよね?」
アレー? そうだっけー? まったく記憶にございませんなー。
「まあ、べー様に見えないようにしてくださいましたから交流はありませんでしたが、プリッシュ様にお願いして、夜だけ見えるようにしてもらいました」
え? そんなことしてたの? 全然気がつかなかったんだけど!
「べー様とプリッシュ様は繋がっていてお互いの力に干渉できますが、その力を事細かく管理できてるわけじゃないように見えます。だから、ちょっと変えたくらいでは気がつかないんでしょう」
な、なるほど。確かに自由自在に使えてもそれを細かくは設定してないし、管理しているかわかるようにもしてねー。意識から外れてたら結界マークも見失うからな。
「自分の力ながら操れてないってことがよくわかったよ」
だからってそこまで細かく使えるようになりたいとは思わねー。他にもやりたいことはある。オレは浅く広く、楽しく、だからな。
「べーくん、あれ!」
街を眺めていたそばかすさんが眼下に広がる街の一角を指差していた。どうした?
「骸骨兵か。あそこにリッチがいるのか?」
銃撃音からしてハンターが戦っているのだろう。
「音からして追いやられてる感じじゃねーな」
銃撃は規則正しい音を出している。なら、リッチを追い立てているってことだろう。
「いってみるか」
空飛ぶ結界を操り、銃撃が行われているところへ向かった。
街は計画的に造ったわけじゃなく、改築改造増設を繰り返したようで、まさに迷路のようになっており、ハンターと骸骨兵の戦いを見失ってしまった。
手っ取り早くぶっ壊せたら楽なんだが、さすがにバリッサナの所有地(?)で暴れるわけにもいかねー。歩いて追うしかねーな。
近くの家の屋根に降りた。
「そばかすさん。ついてくるならオレから離れるなよ」
「べーが勝手に動くから周りが迷うんじゃないの?」
「よし、いくぞ!」
知らないおうちにお邪魔しまーす。下へ下りるのはどこですかー? お、こっちですか。
石造りだから何千年経っても朽ちていない。これ、なにか薄い魔力の膜が張られている感じだ。
「どこかに魔力炉があるかも知れませんね」
「そういや、天の森でも魔力炉がある場所にはいけなかったな」
そこに住んでいた生き物が強くて半分も見れなかった。出会い運のお陰でみっちょんたちには遭遇できたけどな。
「まさか管理棟の前に住み着いた凶獣を倒せる者が現れるとは思わなかったわ」
「あー確かにあれは強かったな。アヤネが動きを止めてくれなかったら殺されてたかもな」
セーサランに匹敵する強さだったっけ。まあ、結界パンチ五発で腹を見せやがったがな。
「……なにを言ってるかわからないけど、非常識なことをやってたのは理解できるよ……」
まあ、あそこは口で説明しても意味不明なところだったから。
「うおっ!」
外に出るドアを開けたら
すぐに殺戮阿で撲殺──ではなく撲滅してやる。
「びっくりさせやがって」
「出会い頭に殴られる骸骨兵のほうがびっくりでしょうね」
「骸骨兵がびっくりしたらそれこそびっくりだわ」
いや、びっくりする骸骨兵がいたら見てみたい気もするがな。
「てか、骸骨兵も迷ってんのか?」
他に骸骨兵はいねー。あのリッチは指揮下手か?
「まあ、イイ。音がするほうにいってみるか」
迷路みたいな街だが、そこまで複雑な感じではねー。そう迷うことはねーだろう。
殺戮阿を振り、音がするほうへと向かった。
◆◆◆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます