第1466話 おもしろパーティー

「また階段か」


 最近、階段の上り下りしてばっかりだな。なんか階段が怖くなってきたよ。


「随分と下がるんだね」


「そうだな。リッチもこの階段を昇ってくると思うと笑えるな」


「リッチ、足あるの?」


「ないのか? オレの知ってるリッチは足あるぞ」


 いや、浮いているのもいたな。正しいリッチって知らんからわからんわ。


「リッチは普通、霊体ですよ。喪服の人が非常識なんです」


「あいつは非常識とかの域から出てるから」


 じゃあ、なんだと言われても困るがな。あれは形容し難いなにかだ。


 二十分かけて階段を下り先は、東京ドームでも入りそうな大空間だった。


「無駄に広いな。ここにも戦略ニートでもいるのか?」


 未だ放置している戦略ニートのことを覚えているだろうか? バイブラストの地下にいる黒竜のことを? オレはそのうちでいっか、って思いでいるから度々忘れます。


「ドレミ。あいつどうしてる?」


 世話役としてドレミの分離体を置いてきたことも覚えているかい? 置いてきた記憶はあるが、名前は完璧に忘れました。


夜叉丸やしゃまるです。リオカッティー様でしたらまだ眠っています」


 ヤダ。君もオレの心を読めるようになったの!? でも、教えてくれて助かります。


「そうか。なら、まだ放置してても大丈夫だな」


 何千年と生きてるヤツの時間感覚なら二、三年なんて誤差だろう。まあ、その前にオレの記憶から消え去りそうだがな。


「べーくん。大きい穴があるよ」


 先にいったそばかすさんが柵の下を見ていた。ってか、柵?


 そばかすさんの横にいき、柵越しに見れば深い穴が開いていた。


 ……巨大ロボでも発進すんのかな……?


「かなり深そうだな」


 遥か下のほうに灯りが見える。かなり人の手が入ってるみたいだな。


「どっから下りれるんだ?」


「あれじゃない?」


 と、みっちょんが頭の上から飛び立って、B1と描かれた看板を指差した。親切か!


「ま、まあ、いってみるか」


 カイナの故郷で突っ込んでもしょうがねー。あるがままを受け入れろ、だ。


 ……それでも突っ込まずにはいられないのがバカの所業だけどな……。


「また階段か」


 まあ、エレベーターやエスカレーターがある迷宮もどうかと思うが、今のオレには切に願うものである。


「メンドクセー。空飛ぶ結界を使うか。そばかすさんもワンダーワンドを使え」


「わかった」


 空飛ぶ結界を創り出し、階段を下りていく。


 この階段は、大穴に沿って造られているようで、螺旋状の階段となっているようだ。


「かなり古いな」


「そうですね。ここが箱庭ならとっくに入っていると思いますし。それに、この階段、真新しいですよね」


「そうだな。灯りも等間隔で設置されてるしな」


 まあ、カイナが造ったんだろう。あいつは短期間で人んちの地下を大改造したからな。このくらいお茶の子さいさいだろうよ。


「べー様。レイスです」


「未だに幽霊とレイスの違いがわからんな」


 どちらも半透明だし、浮いてるし、憑きそうだ。


「あんな低級と一緒にしないでください」


「いや、レイスは上級霊ですよ」


 魔女に突っ込まれる幽霊。ファンタジーな光景にホッとするのはSFに毒されたからだろうか?


「そばかすさんは倒せるか?」


「だからレイスは上級霊だよ! 見習いにどうこうできないって!」


「倒せる魔法とかないのか?」


「あるにはあるけど、上位魔法だから見習いには使えないよ」


 さすが魔女。あらゆる事象に対応すること。


「じゃあ、ぶっ飛ばすか」


 ズボンの右ポケットから殺戮阿を抜いた。


「どうやったらレイスを殴ると言う発想になるのかがわからない」


「まあ、厳密に言えば神聖魔法を纏わせて殴るだな。こんなふうに──」


 こちらに向かってくるレイスの腹に打ち込んでやると、恨みがましい顔が苦痛に歪んだ。


「うわ!? 本当に殴っちゃったよこの人!!」


「魔女にドン引きされる村人か。おもしろい光景よね」


「村人、羽妖精、魔女、幽霊がいる時点でおもしろい光景ですけどね」


 突っ込み担当ばっかりだな。いや、ボケばかりの担当も嫌だけどよ。


「お、消えた。あの世にいったか?」


 もし、神にあったらオレが文句言ってたと伝えてくれや。もっと穏やかなスローライフにしろってな。


「だといいですね。この世にいたら理不尽に殴られますから」


 理不尽に人を殺そうとする存在に慈悲などくれてやるか。痛い思いしてからあの世に飛んでいけ、だ。


「ん? 聖弾が落ちてんな。撃ち漏らしか?」


「ここの人も非常識ですよね。聖銀を惜しみなく使うんですから」


「物量こそ正義なんだろう」


 カイナがいる限り、補給は無限に近いんだからな。

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