第1463話 赤玉三発! 戦闘開始だ!

「……ここまで大きいと、エクレア王な蟲に見えてくるな……」


 お食事中の方々には申し訳ございませぬが、サイズや形が王な蟲だ。巨大な兵がいたら薙ぎ払ってもらいてーな。


「ぷっはー!」


 エクレアのチョコレート部分から飛び出すリレーヌ。これが羽化だったら感動的なんだろうが、全身クリームだらけでは魔物腸から飛び出してきたエイリアンとしか思えねーな。


「この緊急時に呑気なものだ」


 いや、オレも竜骨スープを作ったりエクレアをデカくしたりと呑気なもんだけどよ。


「あはは。つい夢が叶っちゃったもんだから」


「やっすい夢だな」


 いや、人の夢を貶めるつもりはねーが、夢を持つならもっと壮大な夢を持てよ。


「いや、エクレアをこれほど大きくできる人いないから。作ろうと思っても作れないから。と言うか、よく重力に押し潰されないよね」


 重力とか教育まで前世の教育水準なのかよ。


「まあ、不思議能力だから」


 メルヘンパワーの謎解きに一生などかけたくねーよ。


「ほれ。いつまでもそんな状態になってんな」


 結界でクリームだけを取ってやり、丸めて小さくしていただいた。


「女の子についたクリームを食べるとか変態ね」


「クリームだけ取ったわ!」


 確かに見た通りだが、オレの結界は高性能。クリーム以外は取ってねーわ。


「食い物を粗末にするのが嫌なだけだ。そのエクレアもちゃんと食えよな」


 あとでスタッフが食べるでもいいが、捨てることはオレが許さんぞ。


「もちろんよ。皆~。ちょっと手伝って~」


 と、ハンターたちを呼んだ。


「エクレアを片付けるの手伝って」


「おう、任せろ!」


「リレーヌの浸かったエクレア、おれが食い尽くしてやるよ!」


「おれが先だ!」


 変態どもがエクレアに群がり、手や顔の汚れなど気にせずエクレアを食らっていた。


「……まるでゴミのようだ……」


 男とはここまで醜くなるんだな。なる気は毛頭ないが、ならないよう気をつけようっと。


 あと、女子諸君。オレをゴミのように見ないでください。オレはゴミではありませんので。


「あーコーヒー飲もうっと」


 ゴミを見るような目で見られようとオレはコーヒーを旨く飲める男。あーコーヒーウメー。


 辺りはすっかり暗くなり、灯りでもつけようかと思っていたら、空に照明弾が三発上がった。


「赤玉三発! 戦闘開始だ!」


 今までエクレアを貪っていたゴミ──じゃなくて、野郎どもが表情を変えて走っていった。


「溢れたか?」


 リレーヌもいなくなり、オレの問いには誰も答えてくれなかった。


「あちらが明るいですね」


 上昇したレイコさんが大森林のほうを差していた。スカートのまま上昇しないほうがイイですよ。


 幽霊の中身など興味もねーし、なんか異次元色に染まる中身を見てたら呪われそうだ。


 残りのコーヒーを飲み干し、塔へと上がった。


「派手にやってそうだな」


 投光器がいくつも光を放っており、銃撃の音がここまで聞こえていた。


 銃撃音は一時間も続き、不意に鳴り止んだ。


「終わったのかな?」


 それ、死亡フラグだよ、そばかすさん。


 と、なぜか大音量のロックが流れ始めた。な、なんだ、いったい?


「おそらくリッチの叫びの対策だと思います。リッチの叫びは人を殺すだけの威力がありますから」


「音波を音波で打ち消すってことか」


 それでロックとはこれ如何に? 死の声には熱いロック魂が打ち消すのか?


「しかし、リッチにそんな能力があったんだな」


 どこかのリッチは腐臭を放っていたのにな。


「あの方はリッチと言うより迷宮の王、って感じですからね」


 まあ、三つの願いでわけのわからん存在になったからな、あいつは。


「対策があるってことは、ハンターギルドはリッチとも戦えるんだな」


 帰りに聖弾でも買ってくかな? なんかあれば聖弾をぶち込んでやれるしな。


「あの方は聖弾くらいで死なないと思いますよ」


「……確かに。あれは災害だからな」


 災害エリナには災害カイナで対抗させたらイイか。オレは真っ先に逃げさせていただきたす。


 と、また銃撃音が鳴り出した。


「対策はあっても苦戦してるみたいだな」


 はてさて。どうなることやら。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る