第1462話 夢を叶えるのも命懸け
「うん。味もイイ感じに纏まったな」
旨い! って叫ぶほどのものではないが、オレの味覚では充分合格点を出しているぜ。
「さあ、いっぱい食え」
お椀によそい、そばかすさんに渡した。
「ありがとう。いい匂い!」
恵みに感謝をと言って食べるそばかすさん。本当に美味しそうに食う魔女だよ。
「みっちょんは食える感じか?」
うちのメルヘンはなんでも食うメルヘンだが、黒メルヘンはどうなんだ? いや、それは今さらか。こいつもなんでも食ってたし。
「大丈夫よ」
と言うのでお椀によそい、テーブルに置いてやる。頭の上で食べられても困るしな。
オレもお椀によそっていただきます。うん。悪くねー。
「これ、シメにうどんもいいよね」
この魔女はいつの間にシメとか覚えたんだ? いや、確かにシメにうどんがイイかもしれんな。
「そうしたいのは山々だが、残念ながらうどんがない。諦め──」
「──あるわよ」
と、レリーヌが現れた。これから派兵ですか? って訊きたくなる格好で。
……カイナの悪影響、ここに極まり、だな……。
「あんたまで出なくちゃならんのかい?」
「まーね。ハンターギルドを継ぐ身だからね。なにかあれば最前線に出ないとならないのよ」
女の身で、とか言うつもりはねーが、若い身でよくやる。十一歳でスローライフとか言ってる自分が誇らしいぜ。
「どう言う思考をしたらその答えに導かれるんですか?」
一言では語り尽くせない思考の末だよ。
「炊き出し用のうどんがあるから欲しいなら回すわよ」
「それは助かる」
「マルレイリー。適当にうどんを持ってきてちょうだい」
レリーヌの後ろにいた同年代の女にそう言った。
「わかりました」
返事からしてハンターギルドでの部下かな?
しばらくして部下さんがパックに入ったうどんを持ってきてくれた。あんがとさん。
「味は保証できんが、食ってくかい?」
作ったはイイが、四十人前以上ある。さすがに三人では……食える勢いだな。いや、三人と言うよりそばかすさんとみっちょんの二人なんだがよ……。
「遠慮するわ。なんだか申し訳ないし」
二人の食いっぷりに遠慮するレリーヌ。なんかすんません。
「それで、骸骨兵は現れたのかい?」
「まだみたい。銃撃の音もしないしね。今は斥候を出してる段階かな? わたしは最終防衛ラインの責任者だから第一防衛ラインには立てないのよ」
まあ、最後尾につけるのは当然か。後継者が真っ先に死なれたら面倒だしな。
「第一防衛ラインには親父さんがいんのかい?」
「うん。後方で指揮して欲しいんだけど、現場の人だからつい最前線に立っちゃうのよね」
その分、レリーヌが後方にいなくちゃならないってことか。なるほど、ギルド長向きだな、レリーヌは。
「前に出ようとする家族ばかりで大変だな」
よくこれで組織が成り立ってるのか不思議だよ。
「まったくよ。後方の大切さも理解して欲しいわ」
フフ。苦労してそうだ。
「べー。うどん入れてよ」
「もう食ったのかよ。底無しか?」
食いしん坊キャラはアリサやタケルだけで充分なんだよ。まあ、片付けが簡単だからイイけどよ。
もらったうどんをすべて入れ、醤油を少し入れて味を整えた。こんなもんか?
「これは卵が欲しいかも」
そばかすさんの舌はどうなってんだ? よく相性のイイもんを言い当てんな。
「卵もいいけど、七味もいいかもよ。味が引き締まるわ」
「あ、それもいいね」
ほんと、こいつらはどこでそんなことを覚えてくるのやら。でも、確かに七味をかけると旨いかもしれんな。ズルズル。
「あー美味しかった。竜骨スープにうどんもよく合うわね」
「うどんの他にもあるの?」
「竜骨ラーメンも美味しかったよ。また食べたいな~」
「それはいいわね。戻ったら食べたいわ」
今、四十人前以上食ったのにまた食いたいとか、食いしん坊の頭はどうなってんのかわかんねーな。
「シュークリームでも食ってガマンしろ」
一個だけ密かに残していたシュークリームを出し、伸縮性能力でデカくしてやる。要求される前に、な。
「凄い能力を持ってるわね」
「借りてるだけの能力だよ」
もう長いこと離れているのに謎の共存関係は続いている。ほんと、共存とはなんなのか考えさせられるぜ。いや、メンドクセーからしないけどよ。
「これも大きくできる?」
と、パックされたエクレアを出すレリーヌ。持ち歩いてんかい!
「わたし、山のようなエクレアを食べるのが夢だったんだ」
にこやかな笑みを見せるレリーヌ。意外と子どもっぽいところがあるんだな。
「さすがに山にすると迷惑だから岩くらいな」
エクレアで圧死とか笑えんしな。自動車道くらいにデカくしてやった。ってか、こんだけデカいと食い難くね?
「おー! エクレアの山だ!」
レリーヌには満足なようで、装備を外してエクレアに飛び込んだ。
圧死じゃなく溺死の心配をするべきだったな……。
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