第1461話 竜骨スープ

「ハンターギルド各員に告ぐ。現在請け負っている依頼を中止し、最終防衛ラインに集結せよ。レイダーが溢れた。聖弾は最終防衛ラインで支給する。火急速やかに最終防衛ラインに集結せよ」


 レリーヌの声がスピーカーから流れる。


「聖弾ってなんだ?」


 いや、骸骨兵に対抗する弾だろうが、そんなもの前世にあったのか?


「おそらく聖銀を使ったものじゃないですか?」


「聖銀?」


「はい。聖銀は清浄の銀とも呼ばれ、不浄なものに効果あるんです。リッチを唯一消滅させるのは聖銀だけなんです」


「へー。聖銀ってそんな効果があったんだ。だから聖とついてたんだな」


 ただ、魔力を伝達しやすい金属ってわけじゃなかったのか。


「希少なものを支給とか、カイナ様は本当に非常識な存在ですよね」


「そうだな。どこから集めてるんだか」


 聖銀はこの世界の金属。カイナの力で出せるものじゃねーんだがな?


「まあ、あくまでもわたしの推測です。あの方なら殴っただけでリッチなんて消滅しますからね、魔力を付与したものでもリッチには効果あると思いますよ」


 確かにあいつの魔力なら大抵のものは消滅させられるな。


「急げ! 久しぶりのボーナスタイムだぞ!」


 放送を聞いたハンターらしき者たちがギルドを飛び出していった。なんだ、ボーナスタイムって?


 誰かに尋ねる隙もないので、オレらもギルドを出た。


 ハンターたちはギルドが用意しただろう軍用トラックに乗り込み、最終防衛ラインへと向かっていった。


 ……ほんと、ここだけ世界が違うな……。


「空飛ぶ結界でいくか。そばかすさんはついて来るか?」


 さすがに叡知の魔女さんから預かった留学生。危険には晒さす気はねーが、戦いに連れいくのは不味いだろうか?


「いくわ! レイダーやリッチなんて滅多に見れるものじゃないからね」


「べー様といたら飽きるほど見ますけどね」


 確かに飽きるほど見てるけど、オレが見せてるわけじゃないんだからもっと言い方変えてよ!


「んじゃいくぞ」


 空飛ぶ結界を操り、最終防衛ラインへと向かった。


 距離にして七、八キロ。先ほどの軍用トラックが何台も止まっているところまで来た。


「ここが最終防衛ラインか?」


 先ほど軍用トラックに乗り込んだハンターが見て取れるが、緊迫した空気は流れていない。ハンター同士おしゃべりしている。


「──これから銃と聖弾を支給します。受付に並んでください」


 リレーヌの声ではない女の声で放送が流れた。


 オレはハンターでもないので集団から外れ、軍用トラックの前にいってみた。


「鉄条網が敷かれてんだな」


 山の上からはわからなかったが、バリビル大森林を隔てるように鉄条網が敷かれていた。


「この先地雷地帯。何人たりとも立ち入るな、か」


 本当に紛争地帯だな、ここは。


「これからどうするの?」


「ん~。どうすっかな?」


 来てみたはいいが、ハンターたちは慣れた様子。なにもわからない余所者がしゃしゃり出ても迷惑なだけだろう。大人しく見てるしかねーだろうな~。


「とりあえず、待ちだな」


 町に戻ってもイイんだが、なんかあったときのために近くにいたほうがイイだろう。


 土魔法で見張りの塔を創り、キャンプの用意をした。


 あまり本格的なものを創ると片付けが面倒なので簡素でイイだろう。何日もいるわけじゃねーしな。


 薪を出して火を焚き、結界で三脚を創り出してキャンプ用の鉄鍋を出して火にかけた。


「なに作るの?」


 そばかすさんが食い気味に尋ねてくる。


「竜骨のスープでも作ろうかと思ってな」


 イイ味が出てたし、テキトーに野菜や肉をぶち込んで灰汁を取れば食えたもんになるだろう。あ、塩も入れときゃイイ味になんだろう。


 切り刻んだ野菜をぶち込み、灰汁を取りながら煮だったら味見。悪くはないが竜骨ラーメンのようなパンチ力はなかった。


「そばかすさん、味見」


 皿にスープを盛ってそばかすさんに味見してもらう。


「美味しいとは思うけど、なんか足りないね。あ、ミバを入れるといいんじゃない」


「ミバ? 辛い木の根だよ。これ」


 と、渡した収納鞄から木の根──生姜っぽいものを出した。あ、冷蔵庫に入ってたな、これ。


 無限鞄から生姜──ミバをいくつか出した。


「皮を剥いて擦りおろして味を調節したらいいんじゃないかな?」


「そばかすさんは料理できんのか?」


「ううん。できない。食べる専門だね。やってはみたいけどさ」


 まあ、大図書館で料理を教えるイメージはねーな。


「興味があるなら館の厨房で教わるとイイ。サプルがいなくてもサプルから教わったヤツはいるだろうからな」


 何百人ものメイドたちに食事を提供してんだから厨房には何十人といるはず。誰か一人くらいはそばかすさんの面倒見てくれんだろうよ。


「時間があれば教えてもらうよ。今はわたししかべーくんの側にいられないしね」


 なんの監視だよ? メイドさんの代わりか?


 気にもしなかったが、いつもついてるメイドさんが一人もついてねー。これって、見習い魔女がいるからってことか?


「べーくん。お肉入れようよ」


 まあ、メイドうんぬんはあとだ。今は竜骨スープに集中しよう。


「オーク肉でイイか?」


 なんの肉が合うかわからんし、食いなれたものを入れてみよう。


「うん。オーク肉食べてみたい!」


 ってことでオーク肉の塊を一口サイズに切り、鍋へと放り込んでいった。お、なんかイイ匂いしてきた。


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