第1460話 意味わかんない

「イイところだな」


 墓参りも終わり、振り返るとバリッサナが一望できた。


 こうして見るとバリッサナって広いな。町も結構デカい。規模からして七万人は住んでんじゃねーかな? 四方を山に囲まれている地にしては多いほうだろうな。


「あっちが迷宮があるほうかい?」


 方角的に東になるのか? 深い森に向かって細い道が続いており、なんかトラックが何台か走っているのが見えた。


「ええ。いろいろ呼び名はあるけど、正式名はバリビル大森林。ミナド大迷宮に続いているわ」


「よくそんなところに町を造ろうと思ったよな?」


 魔物の大暴走がよく起きたとカイナが言っていた。昔は外に繋がる山脈の麓に数百人規模の町があるくらいだったとか。


「おかあさんの話では流刑地だったそうよ。まあ、権利争いに負けて追いやられたみたいだけど」


 なるほど。そう言う理由からか。


「百年くらいは貧しくて、魔物に苦しめられたけど、大迷宮が発見されて金銀財宝が見つかると、帝国中から冒険者がやってきたそうよ。少しずつ森は開拓され、今の町があるところまで開拓が進んだとき、大迷宮から狂竜が現れて何百人と殺されたわ」


 あーそれ、カイナから聞いたな。


「そのとき、じーが現れて狂竜を退治したそうよ」


 暴れ回るカイナの姿が容易に想像できるよ。


「退治し終わったら立ち去ろうとしたじーをおばあちゃんが引き留めて、いろいろあってハンターギルドを創設して、あそこまでバリッサナを広げたわ」


 戦車を操り、銃をぶっぱなしたんだろうな。あいつは魔王の力を戦いに使わないが、元の世界の武器を使うことに一切の躊躇いを見せねーからな。


「ただ、じーがやると山一つ、あ、あそこの禿げ山、じーがミサイルの雨を降らして狂竜を倒した場所ね」


 なんか禿げ山があると思ったらカイナのせいかい! いや、あいつの力にしたら些細な被害だろうけどよ。


「じーがやるとバリッサナが滅び兼ねないからね、バリビル大森林からは手を出さないよう辺境公に厳命されたわ」


「賢い判断だな」


 見たこともない辺境公にグッジョブと叫びたいよ。


「魔物はよく大暴走するのかい?」


「一年に二、三回はあるね。まあ、大体のは大森林の手前に布設した地雷を突破されたことはないどね」


 どこの紛争地帯だよ。いや、ある意味紛争地帯ではあるか。人と魔物の生存を賭けた地だしな。


「おそらく、もう少しで魔物が溢れ出すと思うわ。最近、大森林にいる魔物の姿が見えなくなったそうだから」


「落ち着いてるな」


「もうバリッサナの風物詩みたいなものだし、前兆はわかるからね。十二分に対策は取れるわ」


「もしかして、あのトラックか?」


「ええ。一台に機関銃八門、予備を混ぜたら五十門の機関銃を用意して、ハンターギルド職員が軽装甲車四台が備えているわ」


 さすがカイナの故郷。戦国自衛隊も真っ青である。


「それでもダメなときは空から絨毯爆撃をするわ」


 ある意味、それでも焼け野原にならない大森林。ファンタジーはツエーな。


 さて。そろそろ下りるかと思ったとき、サイレンが鳴り出した。


「言ってる側から溢れたみたいね」


 いつものこととばかりにレニスの妹は落ち着いている。


「レリーヌよ。今回はなに?」


 トランシーバーみたいなものを取り出し、誰かと通信する。あ、あなた、リレーヌって名前なんだ。


「レイダー? それは本当なの?」


 なんか珍しいもんでも出たのか?


「おとうさんは? 前線に出た? まったく、もう若くないのにしょうがないわね。わたしもいくわ」


 そばかすさんの腕を握りオレをつかませ、レニスの妹、レリーヌの肩に手を置き、転移バッチを発動(あ、みっちょんは頭の上にいます)。ハンターギルドの広場へと転移した。


「え? はぁ? な、なに?」


「急を要していたようだから転移した」


「……あなた、そんなことまでできるんだ……」


「オレの力じゃなく魔道具の力だよ。ほれ、急いでんだろう」


「そ、そうね。ありがとう!」


 礼を言って駆けていった。


「べーくん、どうするの?」


「どうするって、なにがよ?」


「いや、魔物が溢れたんでしょう? 手伝わないの? レイダーって、骸骨兵だよ! それならリッチが率いているってことだよ!」


「へー。レイダーって骸骨兵のことなんだ。そんな溢れるほどいるものなのか?」


 脅威となる数の兵が死んだとか、大迷宮でどんだけ死んだんだよ? それともリッチが魔力で操ってんのか?


「しかし、リッチって結構いるもんだな」


「いや、そうはいないんですけど、べー様といると珍しくもない存在になるから不思議ですよね」


「オレが原因みたく言うなや」


 別にオレが呼び寄せてるわけじゃねーんだからよ。


「わたしですらリッチに会ったの二度だけですよ。べー様に憑いてから一年もしないで今回で三度目ですよ? いや、リッチも顔負けなのに遭遇してますけど!」


 その中にあなたも混ざってるけどね!


「まあなんにせよ。リッチじゃ銃は役に立たんか」


 カイナが出した武器なら骸骨兵くらい倒せるだろうが、さすがにリッチでは無理だろうな。


「なにかの縁だ。レリーヌたちが手こずるようならオレがぶっ飛ばしてやるか」


 大体のリッチは根性曲がったヤツが多い。物理的にぶっ叩いて根性を正してやろう。


「いや、リッチをぶっ飛ばすとか意味わからないのだけれど」


「きっとリッチのほうも意味わからないでしょうね」


 オレはわかるのだから問題ナッシングだ。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る