第1453話 レニスの妹

 うちに帰る前に食材回収やっておかねーとな。


 まだ半分も回収してねーし、このまま帰ったら確実に忘れる自信がある。覚えているうちに回収しておくべきやね。


 団子屋へと戻り、そばかすさんとメガネ女子を連れてハブルームへ。サバトは終了しており、在中の魔女が大工仕事をしていた。


「魔女はなにかの特殊技能集団なのか?」


 大図書館の魔女と言いながらやっているのは魔女派遣業だろう。まあ、魔女がなにをしようとオレには関係ねーけどよ。


「確かにそうかもね。適性検査があって、一人前になればそれぞれの部署にまわされるからね」


「適性がなかった者はどうするんだ?」


「図書館の司書や管理かな? まあ、大体は部署に回されるはずだよ」


「司書、って可能かな? うちの書庫を大図書館に管理してもらいてーんだがな?」


 千冊もない書庫だが、適当に棚に収めているだけ。管理するなら専門家に任せたい。魔女がそれを補ってくれるなら大助かりってものだ。


「ロミナ。任せていい?」


 そばかすさんがメガネ女子に尋ねた。見習いの中ではそばかすさんのほうが上なんか?


「たんにベーの相手は自分のほうが適任ってことでしょう」


 プリッつあんにも負けないみっちょんからの毒舌突っ込み。妖精に夢見ていた昔の自分を罵ってやりたいよ。


「え、あ、うん。わかった」


 メガネ女子が在中の魔女のところへと駆けていった。


 ハブルームからバリッサナへ出ると、レニスの妹が部屋を掃除していた。


「ってか、レニスの部屋に繋げておくのも不味いな」


「どうかしたの?」


「食材回収の続きだ。そこの……なんて食堂か忘れたが、食材を買ったんだよ」


「あーハルニーおばさんのところね。なんか金貨三十枚分の食材を買った人がいるって聞いてけど、あなただったんだ」


 おばちゃんのおしゃべりは千里を駆けんな。


「地下ならうちからもいけるけど、人手が欲しいならうちで依頼を受けるよ。暇してるのがいるから」


「そうだな。あと半分以上あるから頼むか」


 出すだけで二日以上かかっている。また二日かかってやってられんよ。人手があるならパッパと片付けてしまいてーぜ。


「とりあえず、十人でいい? 足りなければもう十人は投入できるから」


 なかなか優秀な妹だ。あの姉の妹とは思えんな。


「わかった。先払いで金貨五枚は払っておくよ。足りなければ言ってくれ」


 こちらの物価はわからんが、金貨五枚も出せば間に合うはずだ。


「随分と気前がいいのね。金貨一枚もあれば充分よ」


 金貨一枚か。結構物価は安いのか?


「なら、余分な分は食材を買わせてくれや」


「オッケー。そう段取りするわ。ちょっと待ってて」


 さすがカイナの故郷。オッケーとか普通に出て来やがるぜ。


 レニスの妹が部屋を出ていくと、代わりに黒い狼が入って来た。


「確か、ジャ……なんだっけ?」


「ジャンよ」


 とはみっちょん。よく知ってんな。


「動けないレニスといろいろおしゃべりしたからね」


 みっちょんもコミュニケーション能力高いな。


「ジャンか。よろしくな」


 デカい顔をわしわしと撫でてやった。


「大人しいですね。黒狼って狂暴なのに」


 そういや、婦人を襲った獣使いも黒狼を使ってたっけ。世間で言うより黒狼は調教しやすいのかな?


「ん? なんだ?」


「レニスに会いたいんじゃない?」


「そうなのか?」


 浅草と続く転移結界門のドアを開いてやると、のっそりとドアを潜っていった。


「あら、ジャンじゃない」


 浅草側からレニスの喜びの声。感動の再会かな?


 まあ、カイナによればレニスの子守りをしていたとか言ってた。なら、ルビーも子守りしたらイイさ。


「──お待たせ。まず五人を確保したわ」


「仕事早いな」


「呼びかけただけよ。食材を広場に運ぶようにしていいかしら? 地下冷蔵庫は狭いからね」


「ああ、そうしてくれると助かる。えーと、何番からだったっけ?」


 1200番までいったような記憶はある。


「大丈夫よ。地下冷蔵庫はうちでも把握してるから。指示はこちらで出すから」


 本当に優秀な妹である。


「わかった。オレは広場にいるよ」


「うん。こっちよ」


 レニスの妹に案内されて広場へと向かった。

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