第1452話 みっちょん
「いや、ホノルルの湯ってなんだよ?」
そこは富士の湯とか浅草の湯とかだろうが。誰のネーミングセンスだよ?
ま、まあ、銭湯の名前などなんでもイイ。湯は湯だ。
と気持ちを切り替えて銭湯に入ったらスパリゾートなワイハーな感じだった。だからホノルルの湯かよ!
「銭湯どこいった!」
「いらっしゃいませ~」
と、カイナーズホームの店長が現れた。
「またお前か!」
「あ、姉と間違えてます? わたしは、スパリゾートホノルルの店長のリザランと申します。カイナーズホーム店長カレサラはわたしの姉です。ちなみにわたしたちは四姉妹の三女です」
あのはっちゃけ店長の妹? 四姉妹? なんだって?
「に、似すぎじゃね?」
「はい。長女のカレサラとわたし、よく似てるって言われます。二女と四女は全然似てないんですけどね。あ、性格は全員バラバラですよ」
そ、そうなんだ。ま、まあ、あのはっちゃけ性格じゃなけりゃなんでもイイよ。
「てか、なんなのここ? 外観銭湯だったよね?」
暖簾にはホノルルの湯って書いてあったけど!
「はい。最初は銭湯としてやってましたが、まったくお客が来ないのでスパリゾート風にしました。お陰でたくさん入りにきてくれるようになりました」
確かに親子連れっぽい魔族がたくさん見て取れた。
「スパリゾート風にはしましたが、落ち着けるよう銭湯も残してますのでゆっくり汗を流してください」
あ、銭湯あるんだ。
「じゃあ、銭湯に入らしてもらうよ」
「はい。十円になります」
相変わらず安いな!
心の中で突っ込みながら十円を払い、案内板を頼りに銭湯へと向かった。
客はおらず、湯船の背後には富士山の絵が立派に描かれていた。
「ワイキキビーチじゃねーんだ」
てっきりワイキキビーチの絵かと思ったら立派な富士山が描かれている。性格はバラバラなら商売の方向性もバラバラっぽいな。
脱衣場で服を脱ぎ、洗い場で体を洗ってから湯船へと浸かった。あービバノンノン。
ホカホカとして風呂から上がり、休憩所的なところでフルーツ牛乳を買って飲んでたらみっちょんがタオルを首にかけて現れた。
村人ファンなら覚えていよう。でも、知らない人のために教えておきましょう。みっちょんとは黒羽妖精で、ブルー島の管理者の一人でもあるヤツだ。あ、確か、レニスをお願いしてなかったっけ?
「あら、べーもホノルルの湯に来てたんだ」
なんか常連な感じだな。
「ああ。レニスの出産が終わったからな」
「そうなんだ。箱庭の獣の出産はよく見たけど、人の出産は時間がかかるものなのね。ハラハラしたわ」
ん? え? もしかして、いたの?
「いましたよ。プリッシュ様の横に」
マ、マジか!? まったく気がつかんかったわ!
「あなたの目、ちゃんと働いてる?」
そう思いたいが、まったく気がつかんかったのだからなにも言えませぬ……。
「まあ、わたしも常にレニスの側にいたわけじゃないしね。気がつかれなくてもしょうがないわ」
だよな。いくらオレの目が節穴でもいるんなら意識のうちに入っているはずだからな。いや、それも自信満々には言えんけどよ……。
「それでもレニスの側にいてくれてありがとな。あとは好きにしてイイよ」
「なら、あなたとしばらくいようかしら? プリッシュもいないことだしね」
プリッつあんの能力が使えることから繋がってはいるだろうが、秋頃(?)から台座の任は解かれている。
……なんだろう、この屈辱は……?
「まあ、好きにしたらイイさ」
オレは基本、来る者拒まず去る者追わず、だからな。
「うん。あなたとなら暇しないと思うわ」
みっちょんがオレの頭にパイル○ーオンした。
「プリッシュ様に怒られますよ」
「あ、あなたの後ろがなんか揺らいでると思ったら幽霊がいたんだ。あなた、よく平気でいられるわね? 幽霊が憑くなんて命を奪うような存在なのに」
なんか、オレと繋がったのか、周りに見えないようしていたレイコさんが見えるようになったようだ。
あ、レイコさんが見えるのはミタさんと魔女たちくらい。あ、人外にも見えてる感じがあったな。
「ここら辺にいる低級霊と一緒にしないでください。わたしは自力で体を維持できる最高級霊です」
なんのプライドかはわからんが、まあ、タダの幽霊ではないのは確かだな。
「ふーん。まあ、わたしの害にならないならなんでもいいわ」
「わたしは無害な幽霊です」
夜、光らないでくれたらオレも無害と賛同してやるんだがな。寝つけないときはアイマスクがかかせんよ。
「幽霊が光るのは存在証明です」
誰への証明だよ? 幽霊が自己主張強いとか意味わからんわ。
「もうなんでもイイよ」
とりあえず銭湯のほうに入り、ゆったりのんびりしたらみっちょんを頭に乗せ、ホノルルの湯をあとにした。
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