第1445話 双子の名前

 色紙にスラスラと名前を書いていった。


 ……男と女、どちらが、産まれてもイイように考えていたんだな……。


 父親とはそう言うものなんだろうな。 オトンもどちらが産まれてもイイように男と女の名前を考えていたものだ。


 ちなみにオレのときは、男だったらヴィベルファクフィニーと。女だったら   ルヴィレイトゥールだ。


 ヴィベルファクフィニーはカッコイイからなのに、ルヴィレイトゥールは花となれ、希望となれって意味らしい。いや、男と女の差、ありすぎじゃね?


 なんにせよ、男に産まれてよかったよ。前世の記憶を持って女に産まれてたら……今と変わらず生きてたな……。


「これだ!」


 名前を書いた色紙をオレへと差し出す。


「男は、ロンダルク。女は、ミラニャだ」


「意外と普通なんだな」


 それが素直な感想だった。


「お前らの名前からしたら、大抵の名前は普通だよ」


「ま、そりゃそうだ」


 オレらの名前が普通だったらオレは人の名前を覚えることを放棄してるよ。あ、今も放棄してるのと同じとかの突っ込みはノーサンキューだぜ。


「ロンダルク・ゼルフィングにミラーニャ・ゼルフィング。イイんじゃねーの」


 なにより覚えやいのが最高だ。でも、忘れないようメモしておこう。メモメモっと。


「ってか、ロンダルクとミラーニャってなんか意味あんの?」


「ロンダルクは、おれの曾祖父の名前からもらった。ロンダークでロンダルクだ」


「曾祖父さんは、なんか偉大なことでもしたのかい?」


 十二人いるおばさんのことは聞いたがよ。


「A級冒険者として大陸を横断したって話だ。まあ、本当のことかどうかわからんけどな。記録がないからよ」


 大陸横断とはスゴい。ゼルフィング家、もしかしてスゲー一族だったりするのか?


 今度、暇があればゼルフィング家の歴史でも調べてみるか。なんかおもしろそうなことがありそうだ。


「ミラーニャはもちろんシャニラからに似た響きにした。可愛いだろう?」


「オカンの名前を可愛いとは思ったことはねーが、まあ、赤ん坊なら可愛いと思えるな」


 ミラーニャ本人がデカくなってからどう思うかは知らんけどな。


「まあ、ロンとミラーになりそうだがな」


「そうだな。田舎じゃ短くなるからな」


 長い名前は大抵短くなる。つーか、短い名前になりがちになるな。呼びやすいようによ。


「なのに、覚えられないのがべー様ですけどね」


 いや、よく会う人の名前は覚えてるから。いや、よくいるメイドの名前は覚えてないけど! いやほんと、ごめんなさいです!


「名前、囲炉裏間に飾るか。あ、そうだ」


 色紙を持ち、授乳が終わってベビーベッドで眠っているロンダルクとミラーニャのところへ向かった。


「まだどっちがどっちかわからんな」


 つーか、同じ産着でくるんでんなよ。男女分けしろや。


「こっちがロンダルクでこっちがミラーニャだ」


「よくわかるな」


 オレにはさっぱり区別がつかんわ。いや、オレも区別して結界を纏わせてなかったぜ。


 新たな色紙を出し、ロンダルクの手と足の型を色紙にぺったんこ。結界スタンプだから色褪せることはナッシング~。


 ミラーニャの手型足型も取り、一応、下に名前を書いておく。どちらも似てて区別がつかんからな。


「それは、なにか意味があるのか?」


「たんなる記念だよ。数十年後、オレらが懐かしむためにな」


 こういうのは子どものためではなく親のため。自己満足だ。


「……懐かしむためか……」


「それと親の愛を残すためだな」


 サプルとトータには名前しか残せてやれなかった。だから、こいつらにはしっかりと親父殿の愛を残してやりたいのだ。


「おれはこいつらが結婚するまで死なんぞ」


「ふふ。そうだな。しっかり長生きしろ。オレはもう父親代わりはごめんだからな」


 おっと。懐疑的な目で見ないでおくれ。あの天才児どもを相手にするの、本当に大変なんだからな。前世の記憶と三つの能力がなかったらグレてたところだ。


「今日は疲れた。オレは休ませてもらうよ」


 色紙を親父殿に渡し、寝室を出てブルー島へと帰った。

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