第1435話 チョコレートフォンデュ
魔女は本当によく食べる。
見習いも一般人から見ればよー食べるほうだが、年配(と言ったら失礼だろうか?)な魔女は三倍は軽く食っていた。
「大図書館でもそんなに食ってんのか?」
そうだったら食費がスゴいことになってそうだな。
「そうね。お酒は自腹だけどね」
自腹って、魔女は給料制なのか?
「それに、ここのは美味しくてつい食べすぎちゃうわ」
「葡萄酒も美味しいわ」
「大図書館だと下の目があって大っぴらに飲めないしね」
魔女とはなかなかなの俗物のようだ。
「だから、魔女は喜んでたんだな」
僻地とも言えるところに回されるってのに、魔女はなにかウキウキしていた。なんなのかと思ったら酒が飲めるからなんだな。
「まあ、よく食いよく飲めばイイさ」
これは打算。まあ、叡知の魔女さんもわかっていようが、あちらも打算で動いているのだからお互い様。計算違いをしないよう動いてください、だ。
「あなたは少食なのね。大きく育たないわよ」
「昔、餓死しそうな経験をしてから少食になっちまったんだよ」
それまではオトンが冒険者として稼いでいたから結構イイ暮らしをしていたが、オークに村が襲われ、オトンが死に、暮らしはド貧乏に。自分の力に気づくまでは餓死一歩手前の日々だったぜ。
「少食になったが、しっかり食ってるから成長してるよ」
去年より拳一つ分は大きくなってるし、服も伸縮能力でデカくしてる。順調に育ってるってことだ。
……もっとも、伸縮能力を使いすぎて自分の本当の身長がわからなくなってるがな……。
「さて。次はデザートといくか」
今のところオレの腹は六分といったところ。充分デザートはいけるぜ。
新たな鍋を出し、カイナーズホームで買ったチョコレートを出し、砕いて放り込んだ。
チョコレートフォンデュの作り方は知らんが、牛乳を入れてる映像が記憶に残っている。テキトーに注いでコンロに火を点けた。
焦げないように棒でかき回し、ドロドロになったら鍋を覗き込むそばかすさんにバトンタッチする。
「果物はなにあったっけな?」
この世界のこの時代で前世のように品種改良された果物なんてないが、すっぱい系の果物なら結構ある。
それにキャンプのとき焼きマシュマロもイイかもと、一キロサイズの袋で買ってある。チョコレートマシュマロも旨いだろうよ。でも、一個一個がデケーな。アメリカンサイズか? 四等分に切っておくか。
果物をカットし、マシュマロと一緒に皿に盛った。
「さっきと同じく果物をチョコレートに絡めて食いな」
「あなたたち、先に食べなさい」
と、年配組が見習い組に先を譲った。今は酒を飲むほうを優先させたいようだ。
「んじゃ、先に食うか」
酒飲みにかまってられねー。先にいただくとしよう。
まずはマシュマロからと串に刺し、チョコレートを絡めてパクッとな。
「マシュマロ、焼いてからのほうが旨いかな?」
いや、マシュマロ焼いたことねーが、テレビではなんか旨そうだった。
別のコンロを出してマシュマロを焼いてからチョコレートを絡めてまたパクッとな。うん、イイ。
「美味しいね」
「そうね。甘さとすっぱさが絶妙だわ」
「堕落しそうだわ」
見習い組は大満足のようだ。
オレも果物を刺してチョコレートを絡めて食う。あ、確かに甘さとすっぱさが絶妙だな。
「これは、炭酸系が欲しくなるな」
三○サイダーが飲みたいが、炭酸系はペ○シしかねー。こんなことなら三○サイダーを買っておくんだったぜ。
まあ、ペ○シも嫌いじゃねーし、今回はペ○シでイイか。
見習いにも出してやり、そばかすさんに氷を出してもらった。
「そばかすさんはオールマイティーだな」
「オールマイティーって?」
「なんでもできるって意味だよ」
「器用貧乏と違うの?」
「まあ、程度の差があるが、器用貧乏もオールマイティーも似たようなもんだよ。そばかすさんは状況状況で魔法を使えるんだからな」
そばかすさんがそれほど魔法を使ってるところは見てねーが、感じからして魔法はなんでもこなせる感じだ。
「専門なんて場所を選ぶし、潰しが利かん。ましてや専門職が多くいるならそいつらに任せたらイイ。平時ではそばかすさんみたいなもんが器用にやってけるものさ」
自由気ままに生きるならそばかすさんみたいな器用貧乏がイイ。オールマイティーではあっちこっちに使い回されるだけだからな。
「そばかすさんは、町に出て一般人の中で生きるほうが輝けるかもな」
魔女の中では埋没するだけだと思うな。
「まっ、オレのテキトーな見立てだ。気にするな」
今はまだ見習い。いっぱしになってから先を考えたって遅くはねーさ。
お、蒸かしたイモもチョコレートに合うな。旨い旨い。
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