第1433話 モブは真面目キャラ
ゆっくり休んだので回収を再開させる。
チーズゾーンは四つで終了。カボチャゾーンに入った。
「赤いカボチャなんてあるんだな」
トマトのようなテカテカな赤ではないが、食欲が湧かない赤であった。
「そばかすさん、知ってる?」
この魔女、食いしん坊なだけに食材の知識も豊富だったりするのだ。
「ミロルだね。濾して団子にして蒸すと美味しいお菓子になるよ。大図書館でも人気だね」
「食材だけじゃなく料理も詳しいな」
「皆知ってる料理だよ」
「地元料理は地元民にしかわからんよ。そう言うのを書物に残すとイイんだよ。大図書館の魔女なら書物の大切さはわかるだろう」
できれば写真つきだと尚よし。あ、デジカメとプリンターをプレゼントしてやるか。今はメルヘンだって使いこなす時代だからな。
「…………」
「で、ミロルは団子にするだけか?」
「スープにするのもいいよ。冬に飲むと体が温まるかな」
カボチャのスープか。そういや、村でカボチャ作ってるヤツいたっけか? カムラ王国の隊商からはよく買ってたがよ。
「あとは、なんだろう? 大図書館の食堂って、べーくんのところと違って品数多くないから」
「魔女は質素なんだな」
「べーくんのところから比べたら貴族の食事も質素になるよ」
確かに。料理の天才たるサプルに感謝だな。
「甘いものならケーキにしてもイイし、煮付けもイイな。天ぷらにも旨いかも」
オレにはそのくらいしか思いつけないが、食べれるならそれで充分。館に置いとけばサプルが勝手に創作してくれんだろう。
「ケーキはいいね! べーくんのところでやるケーキデイに出して欲しいよ」
ケーキデイ? うち、そんなのやってたん?
「ま、まあ、サプルに言えば出してくれんだろう」
オレはそこまでケーキ大好きってほどじゃねーし、出されたら食べる。あったら食べる。なければ諦めるが基本だ。
「見つけた!」
と、委員長さんの声が割り込んできた。な、なんだい?
「本当に同じ場所にいないんだから!」
「いや、バリッサナにはいるじゃん」
一度ボブラ村に戻ったのはノーカンってことにしてくださいませ。
「食堂の地下にいるって誰がわかるのよ! いないからハンターギルドにいけばいないって言うし、聞き込んでもしらないって言うし、また食堂にきて尋ねたら地下にいるって言うじゃない! 降りたら降りたで広いし、さ迷ったわよ!」
「さ迷うほどか?」
ただ冷蔵庫が並んでいるだけで、迷うほどではねーだろう。
「一列違っただけで迷うわよ! 人の声や物音しか頼りがないんだから!」
確かに耳を澄ませば人の声や台車を押す音が聞こえるな。ってことは、オレらが一休みしてる時に降りてきたんだろう。
「それはご苦労さん」
としか言い様がねー。苦労体質は大変だ。
「んで、ララちゃんにはちゃんと伝えられたかい?」
「ダリムに言いつけてきたわよ。あのバカに言っても無駄だからね!」
ララちゃん、バカ扱いされてんだ。まあ、ララちゃんは考える前に行動しちゃう脳筋だしな。頭で理解させるには一苦労だろうよ。
「そのダリムとやらはちゃんとララちゃんの手綱を握られるのかい?」
「大丈夫よ。あの子はわたし以上に真面目な子だからね」
「委員長さん以上に真面目なの、いたか?」
まったく思い出せんのだが。
「べー様がボサボサ髪と呼んでる魔女ですよ」
「あ、あれか! まったくそうは見えんかったぞ」
いるとは認識できるがすぐあとには忘れてそうな顔立ちと気配の薄さ。ボサボサ髪と言われるまですっかり忘れてたわ。
「そうね。よく見た目と違うと言われてるわ。もっと柔軟になればいいのだけれどね」
オレから見たら委員長さんも真面目だが、その真面目が柔軟になれとか、ボサボサ髪はどんなだけ真面目なんだよ?
「ララちゃんとは合わないか?」
「大丈夫でしょう。真面目ではあるけど、面倒見もいいからね。文句を言いながらもララシーを支えるでしょう」
縁の下の力持ち的な感じか?
「ギスギスしてないならなによりだ」
考えもなしにツンツインテールと交換しちまったからな。あ、ツンツインテール、どこに落としてきたっけ?
「それで、あなたはなにしてるのよ?」
「買った食材を回収してるところだ」
「……あの人も非常識だけど、あなたも負けず劣らず非常識よね……」
「あれと比べられてもな~」
オレも前世のものを広めたりもしたが、冷蔵庫ダンジョンを創るほど非常識じゃねーよ。
「いや、べー様も保存庫ダンジョン創ってましたよね?」
「よし! 新たな戦力も加わったし、今日中に回収を終わらすぞ!」
三人よれば文殊の力。三本の矢も威力も三倍だ!
「よくわかりませんが、間違っていることだけはわかります」
幽霊の茶々などなんのその。回収に勤しみましたとさ。めでたしめでたしっと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます