第1429話 ラーメン
1056の冷蔵庫に移ったら空だった。
「まあ、順番に出していけば若い番号には入ってないわな」
次の冷蔵庫に移り、ドアを開けたら骨がぎっしり詰まっていた。
「出汁取り用か?」
骨だけ見てなんの生き物かわからんが、サイズからしてかなりデカい生き物っぽい。迷宮で狩ったものか?
「これはいらんな」
サプルならイイようにしてくれるだろうが、オレじゃ無限鞄の肥やしににしてしまいそうだ。
早々に諦め、ドアを閉めて次に移動。ここも骨が詰まっていた。
さらにさらにと冷蔵庫を移るが、やはり骨が詰まっている。
「……これは……」
十以上の冷蔵庫に骨が詰まっていると、考えが変わってくる。もしかして、この骨から取れてるものは旨いんじゃないかってな。
「なんか豚骨ラーメン食いたくなってきた」
ラーメンは味噌派だが、豚骨ラーメンも嫌いじゃない。紅生姜いっぱい入れて食うの好きだったっけな~。
カイナーズホームのフードコートに豚骨ラーメンがあった。なら、カイナーズの誰かなら豚骨スープを作れるヤツが──いや、このバリッサナに作れるヤツがいるってことだ。なら、そいつに学べはわかるじゃねーか。
「よし。骨はもらっていこう」
1057まで戻り、詰まっている骨を無限鞄へと放り込んだ。
骨は1082まで入っており、全部は悪いかと思って二つは残しておいた。
「ダメだ。頭ん中が豚骨ラーメンで染められたわ」
これまで突発的に食いたいことはあったが、今回はガマンできん。今すぐ食べんと気が狂いそうだぜ。
「そばかすさん。一旦中止だ。豚骨ラーメンを食うぞ」
「え? トンコツラーメン? なに、それ?」
「旨い食いもんだ。冷蔵庫を閉めて上にいくぞ」
無限鞄に入れるのはあとでもできる。今は豚骨ラーメン欲を沈めるほうが先だ。
そばかすさんを待たずに階段へと走り出した。
「あ、ちょっと待って!」
待たぬ。さっさとドアを閉めて駆け足でついてくるがよい。
階段を駆け上がり、厨房へ出る。
「な、なんだなんだ!?」
厨房で料理していたおっちゃんがびっきり仰天。
「おっちゃん、冷蔵庫に入ってた骨、あれはラーメン用のスープにするのか?」
カイナなら息を吐くようにラーメンを広めているはずだ。
「あ、ああ。竜骨ラーメンのスープにしてるよ」
竜と来やがったか! あのアホは本当に斜め上をいくな!
「じゃあ、竜骨ラーメンくれや」
「悪いが、うちではやってないんだよ。食いたきゃ店を出て右にいってみな。四軒先が竜骨ラーメン屋だから」
ラーメン屋あんのかーい! じゃあ、なんであんなに骨があんだよ!
って突っ込みはイイ。四軒先な。
「あ、おっちゃん。金貨を両替してくれや。細かいのねーんだよ」
「ライニーの紹介だと言いな。そこはライニーさんの息子がやってるから、そう言えばタダにしてくれるよ」
「そんなんでイイのか?」
「ライニーって言えば大丈夫だよ」
よくわからんが、そう言うなら信じるのみ。あんがとさんと感謝して食堂を出た。
店を出て四軒先。って、白いのぼり旗に竜骨ラーメンって書かれてるよ! 日本語で!
「……あのアホのやることは意味わからんな……」
まあイイ。ここのヤツらが納得してんなら他所もんのオレがどうこう言う資格はねーさ。
ダッシュでラーメン屋に向かうと、店はがら空き閑古鳥。だ、大丈夫だよな?
「いらっしゃい! お好きな席にどうぞ!」
世界観を忘れる──のよくあること。軽くスルーしろだ。
「ライニーの紹介なんだが?」
「ん? かーちゃんの? あのかーちゃんが紹介するなんて珍しいな。なんかあったのかい?」
「地下の食材を売ってもらったんだよ。そしたら骨ばかり詰まっていてラーメン食いたくなったら厨房にいたおっちゃんにここを紹介されたんだよ」
「地下に入れるとは、かーちゃんに気に入られたんだな」
「まあ、金貨三十枚も渡したからな」
それで嫌われたらやってらんねーな。
「金貨三十枚!? な、何者だよ?!」
「村人だよ。まあ、カイナの義兄弟でもあるがな」
「カイナさんの? なら納得だ」
「納得すんのかい!」
いや、しちゃダメなところだよね!
「アハハ。カイナさんならなんでもありだからな。義兄弟とか言うならカイナさんくらい非常識なんだろうよ!」
スゲー納得いかねーが、あんなアホと義兄弟やってたら同じく見られてもしょうがねー……のか?
「まあ、席に着きな。今は客がいなくて暇なんだよ」
「じゃあ、竜骨ラーメン二つ。紅生姜ってある?」
「カウンターにあるから好きなだけ使いな」
って、ありましたね。見もせず尋ねてごめんちゃい。
カウンター席に座り、できあがるのを待った。
「なんだか生臭いね」
「骨を煮込んでるからな」
このクセのある匂いは好き嫌いあるだろうよ。オレは好きなほうだ。
「へい、お待ち!」
五分もしないで竜骨ラーメンが出て来た。
「チャーシューはオマケだ」
なんか分厚い肉が乗ってある。少食なオレだが、なんかいけそうなくらい旨そうな見た目だった。
「いただきます!」
まずはそのまま。箸をつかんで竜骨ラーメンをいただいた。
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