第1425話 産めよ増やせよ
じゃあ、これにて解散。ってことにはなりませんでした。
魔女よ。こんなときこそマジカルパワーの見せ時だ! と視線と念を送るが、アウト・オブ・眼中。我関せずと茶菓子を食っていた。クソォォォォッ!
「で、他にもあんのかい?」
あるならさっさと言えや。
「クルフ族の数が減っております」
はん? なんだい、突然。
「クルフ族の人口を調べましたら三千人を切っていました」
「それはもう絶滅限界点を突破したな」
つーか、魔族のほとんどは絶滅危惧種。ゆっくり滅びていくだろうよ。
「なんとかなりませんでしょうか?」
「産めよ増やせよ地に満ちよ、ってことくらいしか言ってやれねーよ。そもそもこの世は弱肉強食。弱い命に生きる資格はねーよ」
それが嫌なら強く賢くなるしかねーんだよ。
「エルフ族もそうだったが、なぜ滅びそうになっているのか理解できてねーところが問題なんだよ」
前世のように単一種ならまだしもこの世界はたくさんの種族が生きている。そのせいで生存域が狭くなる。狭くなれば数は増えない。近種交配が起きて遺伝子問題が起きてくる、だったかな? その辺の記憶は曖昧になってるんでごめんなさい。
「クルフ族、シュードゥ族、ドワーフ族は、種としての流れは同じだ。同じってことは交配も可能。つまり、あんたらが増えようとしたら種族同化を進めるしか道はねー、とオレは思う」
もちろん、簡単な道ではねーし、遺伝子的になにか問題が出てくるかもしらねー。だが、弱い者を淘汰していき強い者が生き残るしか種は繁栄しねーんだよ。
「そのためのヤオヨロズ国だ。種を増やしたいなら近種との交配を考えたほうがイイと思うぜ」
生物学者でもねーから正解か不正解かはわからんが、三千人って数は同種での交配が限界を迎えていると、オレは思ってる。
「まあ、クルフ族は運がイイほうだな。滅びる前に気がつけて、助かる道が見つかったんだからよ」
それを進むか進まないかはクルフ族が選べはイイ。オレは生きる権利があるなら死ぬ権利もあると考えるヤツだからな。
「そういや、ドワーフの国があるって聞いたことあったな?」
ふと思い出した。
いつ聞いたか、誰に聞いたかは忘れたが、纏まりがないドワーフが国を築いてるとかなんとか。
「ミージャット王国だね」
と、そばかすさんが答えた。
「ドワーフが創った王国がミージャット王国だよ。と言っても自治区みたいなもので、帝国の傘下に入っているわ」
「噂からこの大陸にあるとは思ってたが、まさか帝国の傘下に入ってたとはな」
帝国は人間の国。他種族もいるが、立場的に弱いし数も少ねー。なのに、国として認め、傘下に入れるとか、なにか裏がありそうだな。
「大きい国なのか?」
「そこまではわからないわ。あるってくらいしか知らないから」
ってことはそんなに大きいってわけじゃないみてーだな。
「そうか。機会があれば叡知の魔女さんにでも訊いてみるか」
ドワーフの国、ちょっと興味がある。暇があるならいってみてーなー。
「さて。クルフ族の未来はクルフ族でなんとかしろ。オレが命令して男女を結ばせたって反感を買うだけだしな」
家畜じゃねーんだ、所帯くらい自分らでなんとかしろ、だ。
「こんなところに閉じ籠ってねーで世に出ろ。若いもんにあれこれ言ったって年寄りの小言なんて聞きやしねーよ」
こればっかりオレがどうこうしてやれねー。そんなことができるなら少子化対策大臣に立候補してるわ。いや、できてもしないけど。
「お邪魔さま」
そう言ってフミさんの実家(?)をあとにした。
なんか興醒めしたし、レニスのところにいってみるか。
「……あの場では言わなかったけど、人とドワーフのハーフもいたりするんだよね」
と、爆弾発言をするそばかすさん。
「それはつまり、ドワーフは人の流れを汲んでいる、ってことか?」
魔女はそんなことまで知ってんのかよ。
「それはわからない。けど、それなりにいるらしいわ」
「それをオレに言って大丈夫なのか?」
極秘事項とかだったら今すぐに記憶を消失させていただきまっせ。
「大丈夫じゃない? エルフと人のハーフがいることはあるていど知られていることだし」
この魔女、どこまでが計算で、どこまでが自然だ? オレははなからそばかすさんを見誤っているのか? なんだかそばかすさんがわからなくなってきたぞ……。
「ライラ、止めなさい。あなたの悪い癖よ、それ」
「え? わ、わたし、悪いこと言っちゃった?」
いったん疑問が生まれると正しい判断ができなくなるな。まったく、疑心暗鬼とは厄介だぜ。
いや、そばかすさんが厄介なのか。魔女は油断ならんぜ……。
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