第1423話 ぶらり浅草散歩道

 ぶらり浅草散歩道。


 なんて、どこぞのテレビ番組が如く浅草寺のぶらつきながら魔族がやっている屋台を覗き歩いた。


 よくある屋台──出店か? 祭りにいけばよくあるようなものばかりだが、


「魔女さんたち、小遣いあるか?」


 確か出ているようなこと言ってた記憶がある。


「あるけど、無駄遣いはできないわ」


「なんだ、魔女は質素倹約か? それもイイが、金の使い方は覚えていたほうが先々のためになるぞ。ましてや上から予算を勝ち取るなら余計に学んでおけよ」


 自ら資金を稼いでいるんじゃなければ帝国政府から予算を得て大図書館を運営してるはず。なら、予算を取ろうとガンバる部署なり人なりいるはずだ。


「あんたらが将来、どの地位につくから知らんが、あの叡知の魔女さんから選ばれ、オレのところに送られたなら、そこそこの地位までは上がれるはずだ。ならば、運営にもかかわるはずだ。そのとき金勘定ができないと苦労するぞ」


 まあ、知ったからと言って苦労はすると思うけどな。予算獲得は戦いって聞くし。


「金の使い方、稼ぎ方、物の値段、人が使う金額、俗世に生きているなら金から離れて暮らせないぜ」


 ド田舎なら金もいらんだろうが、そんな隠遁魔女を目指してねーなら金の使い方だけでも学んで損はねーさ。


「他のヤツらに土産でも買ってってやりな」


 二人に千円ずつ渡してやった。収納鞄に入れておけばできたてほっかほかで渡せるだろうよ。


「おっちゃん、お好み焼きちょうだい」


「へい、らっしゃい! なににする?」


 もう二十年はお好み焼き屋台をやっているかのような接客である。竜人ってのがなんとも言い難いがな。


「海鮮焼きで」


「あいよ!」


 ほんと、竜人がハチマキして半被着てるとか、世界観が台無しである。いや、これはこれでファンタジー感があっておもしろいけどよ。


「わたしには違和感がハンパないですけどね」


 こいつらも幽霊に違和感とか言われたくねーだろうよ。


 一時間前に食ったみたらし団子が消化されてねーから無限鞄に放り込む。食わなくても買ってるだけで楽しいもんだぜ。あ、あとでちゃんと食べますから。


「ケバブとかまで売ってんだ」


 どこの料理か忘れたが、祭りにいくとよく売ってるよな、ケバブって。つーか、ケバブってなんの肉使ってんだ? 食ったことねーからわからんわ。


「にーさん、一つくれや」


 なんの種族かわからんが、体格のイイ牙の生えた灰色の肌をしたにーさんに注文した。


「イラッシャイ! 一ツネ。アリガトサンネ」


 どこぞのインチキ中国人みたいなしゃべりをする。益々ケバブがどこの料理かわからんな!


 串に刺さった肉を削るように肉を切って、ナンみたいなもんに挟み、野菜を入れてソースをかけて渡してくれた。


「十円ネ!」


 お好み焼きと言いケバブと言い、価値基準がさっぱりわからんな。つーか、原価いくらよ? 三円とかか? 価格崩壊にもほどがあんだろう?


「アリガトー」


 なぜかオレも片言でお礼を言って、ケバブ屋をあとにした。


 もちろん、ケバブも無限鞄へ。あとでしっかりといただきます。


「お、わたあめじゃん。って、三十円とか高いな」


 いや、三十円も安いんだが、お好み焼きやケバブを考えたら三十円は高いだろう。


 ……前世で原価三十円で売るときは五百円で売ってるって聞いたことはあるが、ここでもぼったくり価格なのか……?


「おねーさん、わたあめ五袋くださいな~」


 今のオレに三十円はなんら惜しくはねー。大人買いだってしちゃうぜ!


「はい、ありがとさんね。一袋オマケだよ」


「おねーさん、太っ腹~」 


 六袋を無限鞄に放り込んで次なる出店へと向かった。


 カラフルなチョコバナナを一種類ずつ買い込み、バケツかき氷なるものを一つ買った。ちなみにサマーレモン味。サマーがなんなのかは知りませぬ。


 三周もするとあっと言う間に千円を使い切ってしまった。くっ。孔明の罠に嵌まった気分だぜ。


「ただ、欲望のままに買っただけですよね」


 そうとも言う。


「魔女さんたちも買ったな」


 オレの言葉に従ったかは知らんが、見習い魔女の分を買っていた。委員長さんが自分用にドーナツを買っていたのをオレは見逃さなかったぜ。


「はい! つい楽しくなっちゃってたくさん買いました!」


 そばかすさんは本当に屈託がないよな。


 頭もイイし、積極性もあり、コミュニケーション能力も高く、好奇心も強い。見習いの中では一番適応力が高いな。


「あはは。気に入ったらまた来たらイイさ」


「はい! でも、はしゃぎすぎて疲れました」


「じゃあ、あそこの喫茶店で休むか」


 オレもはしゃぎすぎて喉が渇いた。


「はい!」


「そうね。休みたいわ」


 と言うことで、喫茶店へと向かった。

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