第1422話 帰郷
このみたらし団子、なかなかウメーじゃん。
久しぶりに食ったみたらし団子に感動してしまった。
あ、赤鬼おねーちゃん、土産に百本ばかり包んでくれや。
「相変わらず買い占めが好きだね~」
いつの間にやら向かいの席に座ったカイナが呆れてた。
「母娘の間に入らなくてイイのか?」
妊婦に正座させてこんこんと説教してるぞ。
「まあ、たまには母親に説教されるのもいいでしょう。どこともわからない男の子を宿して帰ってくるから」
「カイナも怒ってんのか?」
オレなら激怒もんだが、見た感じ、そんなに怒ってる感じはしねーんぁよな。
「うーん。おもしろくない気持ちはあるけど、怒ってはいないよ。レニスが気に入ってそうしたんだろうからね」
「お前、意外と懐深いよな」
あっさりしたようにも見えるが、レニスを見る眼差しは愛情深かった。
「そう? まあ、レニスが悲しんでたら怒って、その男をぶっ殺しに向かってたかもね」
信頼して、認めているってことか。高校生でこの世界に来たが、ちゃんと歳を重ねてきたってことか。やっていることははっちゃけてるけどよ。
「べー様。団子百本、包みました」
本当に百本を包んでくれた赤鬼おねーちゃん。カイナーズは忠実すぎて下手なこと言えんな。いや、こっちも本気で言ってるから応えてくれて助かるがよ。
積み重ねられたパックを無限鞄へと放り込んだ。
「あ、なんかしょっぱいものある?」
さすがにみたらし団子を五本も食ったら口の中が甘々だぜ。
「では、カリカリ梅など如何ですか? 結構人気なんですよ」
「んじゃちょうだい」
と、瓶詰めされたカリカリ梅を出された。
中から一つ取り出し、カリッと実食。お、ウメーじゃん。いや、ダジャレじゃないならね。
「魔女さんたちも食ってみな」
気配を殺して大人しくしている魔女さんたちにも食わせてやる。
「あ、わたし、これ好きです!」
「わたしはちょっと……」
そばかすさんは気に入ったようだが、委員長さんは苦手なようだ。
「気に入ったなら一瓶もらっていきな」
ちなみに団子一本五円でした。安っ!
「お、やっと終わったみたいだよ」
カリカリ梅を食いながら濃い緑茶を飲んでいたらカイナが立ち上がった。
思ったより早かったな。何時間と続く勢いだったから拍子ぬけだな。
「あ、カリカリ梅、瓶でもらえる? これ、旨いわ」
それほどすっぱくなくて、カリカリ感が堪らない。オヤツにちょうどイイぜ。
「はい。わかりました」
奥からたくさん運んできてくれた。
「はい、一万円」
もちろん、ただ食いするつもりさありません。ちゃんと金は払うぜ。
「あ、はい。お釣り九千二百円ですね」
つまり、八百円だったんかい! 安いな、まったく! つーか一万円、必要か? 千円が最高通貨でイイんじゃねーの? いや、カイナーズホームで一万円札何枚も使っておいてなんだけど!
ま、まあ、両替できてなにより。自販機があったらさらに崩しておくとしよう。
「ベー、お待たせ。ここに門をお願い」
壁を指差したので、そこに転移結界門を設置し、バリナッサにあるレニスの部屋に設置した転移結界門へと繋いだ。
ドアを開けると、レニスの妹と二十半ばくらいの女が二人いた。
「おねえちゃん!」
「はひゃ!」
レニスの妹が詰め寄り、頬をつねった。
「帰って来ないと思ったら妊娠して帰って来るとかなんなの? バカなの? アホなの? 死ぬの?」
母親に似て容赦がない。
オレに入る隙はないので部屋の端に退避。妹による説教を温かく見守った。
「レリーヌ。その辺にしておきなさい。レニスのライフが0になっちゃうわよ」
「……もう0だよ……」
さすがカイナの家。ライフとか普通に会話に出てるよ。ほんと、前世の言葉をオレ以上に浸透させやがるぜ。
ふらふらになったレニスをベッドへ連行し、クッションとかで楽な体勢をさせた。
「オレの役目、これで終わりだから帰るな」
今のレニスじゃ会話するのも大変そうだし、浅草をもうちょっと観光したい。
「あ、ありがとね」
「ありがとう。バカ娘を連れ帰れたわ」
「ありがとうございました」
カイナ一家に頭を下げられた。一人は項垂れてるけど。
「礼などいらんよ。落ち着いたらまた来るよ」
「鍵つきにしてね。レニスがそこから逃げちゃうから」
どんな脱出王だよ。
まあ、レニスならやりかねないと思ったので、カイナの言う通り鍵つきにしてハンターギルドの外、ガレージのところに設置し、ハブルームに繋いだ。
「んじゃな」
そう挨拶してハブルームへと入った。
「ふぅ~。あの方の側にいると疲れます」
と、レイコさんが突然ため息を吐いてきた。どうしたよ?
「あの方、魔力が強すぎて霊体を維持するの大変なんですよ」
まあ、キャラも濃いしな。存在感の薄いモブなら一瞬で消されるだろうよ。
「魔女さん。もう一つドアを設置するな」
駐在する魔女さんに声をかけ、浅草に繋ぐドアを創り出した。
さて。浅草参りといきますか。
ドアを繋げ、浅草へと駆り出した。
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