第1420話 ハンターギルド

「将軍じゃないか! 帰ってたのか!」


 と、ジ○ニーに乗った老人が現れた。


「司令官、まだ生きてたかい!」


「アハハ! そう簡単にくたばるかよ!」


 いろいろ突っ込みどころはあるが、カイナがやること。虚ろな目で笑ってスルーしろだ。


「今度、酒でも飲もうか。レニスが子どもを身籠ったんだよ」


「レニスが? もうそんな歳だったか? てか、あのレニスを射止めた男がいたことにびっくりだよ」


「そうだね。世の中には豪気な男がいるものだよ」


 レニス、いったいどんな女だと思われてんだ?


「シェリーヌに呼ばれてるからまたあとで。また皆を集めて酒盛りしよう」


「おう。皆に伝えておくよ」


 ジム○ーで去っていく司令官とやら。久しぶり、と言う割にはあっさりしたものだ。


「うちまでちょっと離れてるから車でいこうか」


 と、軍用車輌ってよりは装甲車みたいな車を出した。


「お前って、ほんと自重しねーよな」


「他種族多民族国家の立役者に言われてもね~」


「オレは隠すべきことは隠してるし、守るべきことは守ってるわ」


 お前みたいに元の世界のものを無造作に広めたりしてねーよ。まあ、元の世界の常識に捕らわれて変人扱いはされてるけど!


「まあ、ここは中央から遠い辺境中の辺境だしね、間には四千メートル級の山脈が塞いでる。他領の行き来はハンターギルドが握っているからね、技術流用は起きてないよ」


「辺境公との繋がりもあるしな」


 こいつはバカな振りして押さえるところはしっかり押さえている。カイナーズだって力で従わせてるってよりカイナの人柄で従わせている。まったく、油断ならない男だよ。


「べーじゃないけど、権力を持った友達はサイコーだよね」


「悪どいヤツだ」


「べーほどじゃないよ。いったい何人の権力者と友達なのさ?」


「さーな。オレは権力者じゃなくても気に入ったら友達になる主義だからな」


 ただ、気に入ったヤツに権力があった、ってことはよくあるがな。


 車に乗り込み、ハンターギルドとやらに発車した。


 バリッサナ辺境公領は肥沃な土地のようで、麦畑や果樹園が多く見れ取れ、雪が少ない気候のようだ。


「平和そうには見えるな」


 ただ、銃を持ったヤツがちらほらと見えなければ、だがよ。


「バリッサナ辺境公領は旧世代の地下都市迷宮があって、そこから溢れる魔物に苦しめられていると聞いたことがあるわ」


「帝都にもハンターと呼ばれる冒険者が来てるって話、聞いたことあります」


 見習いなのに情報通な二人だ。


 しかし、地下都市迷宮か。オレみたいに考えたヤツがいたっぽいな。もしかして、フュワール・レワロがあったりしてな


 そんなことを考えていたら車は田畑を抜けており、町の中へと入っていた。


 冬だからか外に出ている者は少ないが、建物からして貧窮している様子は見て取れない。それどころかかなり発展している。これは町と言うより都市と言った感じだな。


「軽トラが普通に走ってんな」


 なんだか地方都市に来た錯覚になるぜ。


 自重をしないカイナでもインフラ整備までは手を出してないようで、道は土のままで水路で水を都市に流しているようだ。


「道の広さからして、カイナがここに来てから発展した感じだな」


「あの男は何者なの?」


「ただ、おもしろおかしく生きてる大バカ野郎だよ」


 そうとしか表現できねー男である。


「そろそろ着くよ~」


 運転手席からカイナが声をあげた。


 外は銃武装したヤツらがいて、珍しそうにこちらを見ていた。


 車がなにかガレージっぽいところに入ってエンジンを止めた。


 外からドアが開き、車を降りると、整備士みたいな野郎どもが集まっていた。


「ようこそ、ハンターギルド総本部へ」


 と言われてもどうリアクションしてイイかわからない。ここ、ガレージだし。


「ってまあ、総本部はこっちだけどね」


 ノリと勢いかい。やるなら総本部に入ってからやれや。


「こっちだよ」


 カイナのあとに続いて総本部へと入った。


 中はこれと言った目を引くものはなく、煉瓦造りの館、って感じだ。


「親父さん!」


 そのまま一階を突き進んでいると、脱出ゲームの主人公でもやってそうな四十くらいの男が現れた。


「お、婿殿。久しぶり」


 婿殿? レニスの父親か?


「久しぶりじゃないですよ! 帰って来るなら連絡の一つでもしてください!」


「アハハ、ごめんごめん。べーを捕まえるのに時間かかっちゃって連絡入れるの忘れちゃったよ。あ、この見た目は子ども、中身は非常識なのかべーだよ」


「どんな自己紹介だよ。非常識なお前に言われたくないわ」


「じゃあ、訂正。見た目は子ども、中身はおれと同類なのがべーだよ」


「なんの訂正だよ。婿殿さん、オレはべー。カイナと義兄弟の仲になったもんだ。よろしくな」


 カイナに任せてたらどんな自己紹介になるかわからんから、こちらから名乗りをあげた。


「ル、ルイドだ。ハンターギルドの長を任されている」


「挨拶はまた今度──」


「──じ!」


 今度はレニスに似た十二、三の少女が現れた。


「レニスの妹でリレーヌだよ」


 妹か。よく似た姉妹だこと。


「シェリーヌは?」


「奥だよ。早くいかないとキレそうだよ」


「それは不味い。べー、いくよ!」


 と、腕を取られて奥へと連れていかれた。ハァ~。

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