第1418話 日替わりメイド
──ふが?
なにかの物音にビクッとして起き上がった。
「……あれ?」
なぜか囲炉裏間にいるオレ。なにがどうなってんだ?
「おはよう。まあ、まだ夜中だけどね」
声がしたほうを見れば委員長さんがいた。あ、久しぶり。
「……オレ、眠ってたのか……」
思い出した。夕食のあと、眠くなって横になったらそのまま眠っちまったんだ。
「メイドさん、水ちょうだい」
囲炉裏間の横にいたメイドに水をお願いした。
持ってきてくれたコップを受け取り、いっきに飲み干した。ふー。
「今何時だ?」
「午前三時過ぎです」
夕食後たまから七時間くらい眠ったのか。また変な時間に起きちまったもんだぜ。
「ってか、委員長さんはなにしてんだ? しばらく見なかったが」
いつもオレに引っついていたのに、突然いなくなってたけど。
「報告書を書いてたのよ。ここに来てから目まぐるしい日々だったからね。途中報告として館長から求められたのよ。と言うか、あなたは大人しくしていられないの? ここ数日で大図書館はてんてこ舞いよ」
「それはオレのせいではなく、そちらの事情だろう。オレに文句を言われても困るわ」
オレはそちらの事情を了承して手伝っただけ。文句を言われる筋合いはねーぞ。
「風呂入ってくるわ。アイスコーヒー用意しててくれや」
二度寝する感じでもねー。さっぱりさせるとしよう。
風呂場へと向かい、スッキリサッパリさせて食堂に戻って来ると、叡知の魔女さんや色っぽい魔女さん、真面目先生、痩せこけた魔女さん、あと知らん魔女さんが何人かいた。
委員長さんを見れば直立不動で立っている。まあ、見習いからしたら雲の上ばかりだろうよ。ご苦労様です。
まあ、オレからしたら十把一絡げ──とは言いすぎだが、持ちつ持たれつな関係だ。礼儀に反しなけりゃへりくだる必要はねー。
「どうしたい、雁首揃えて? サバトか?」
なんて冗談を言ったら一斉にこちらへと振り向いた。な、なによ?
「サバトを知っているのか?」
「魔女の宴とか密会とかだろう?」
言っておいてなんだが、詳しくは知らねーわ。ごめんなさい。
「……そうか。まあ、お主なら仕方がないな……」
なにがだよ? とは言わないでおいた。あまり深くかかわってはいけない感じがしたのでな。
囲炉裏間へと上がり、用意されていたアイスコーヒーをいただいた。あーうめー。
すべてを飲み干し、することもないので本を出して読み始めた。
しばらく本を読んでいると、メイドが団体で入って来た。なんや?
「朝番のメイドです」
と、控えていたメイドさんが教えてくれた。って、もう六時か。
「朝食は離れで摂るよ。親父殿に伝えておいてくれや」
離れで朝食摂ったらレニスのところにいってみるか。
「リンベルク、ライラ。ついていけ」
「はい! わかりました!」
「わかりました!」
いつの間にかそばかすさんもいた。
「別にオレに付き合う必要ねーぞ。好きに動いて好きに学んでろや」
預かってる者のセリフじゃねーが、委員長さんやそばかすさんのためにも放置のほうが伸び伸び学べんだろうよ。
「お主はお主の思うがままに動けばよい。必要なら二人を自由に使って構わない」
なんの死刑宣告だよ。委員長さんとそばかすさん、表情が固まってるぞ。
「まあ、好きにしたらイイさ」
叡知の魔女さんに言われるまでもなくオレはオレのために動いている。誰がいようとオレが思うままに動くんだからな。
「まあ、ゆっくりしてきな」
魔女さんたちにそう言って食堂を出た。
朝番のメイドさんたちに挨拶されながら館を出ると、太陽が眩しかった。
「春も近いな」
門番に転移結界門を開けてもらい、ブルー島に入る。こちらは夜かい。まったく、体内時計が狂いまくりだな。
「ホー。ホー。ホーホケキョ。ホー。ホー。ホーホケキョ」
謎の梟が謎の鳴き声を上げながら謎の振りつけで踊っていた。
「変な鳥だ」
「あなただけには言われたくないでしょうね」
上司がいなくなったらイキる小物社員のように突っ込んくる委員長さん。小物魔女って改名したろか?
謎は謎のままにして離れに入る。
「お帰りなさいませ」
今日のメイドさんは獣顔な獣人さんだった。毛の手入れ、大変そうだ。
「朝食頼むわ」
「はい。すぐに用意致します」
本当にすぐに料理をテーブルに並べる獣顔な獣人のメイドさん。なんだか、館のメイドより上な感じがする。ミタさんの教育か?
「んじゃ、いただきます」
オレの音頭で朝食をいただく。
「そういや、ミタさんってどうしたんだ?」
なんか前にも訊いた記憶があるが、どんな答えが返ってきたかはまったく記憶にございません。
「休暇中です。今はご実家で畑仕事してると聞いております」
あー。そういや、オカンにミタさんの故郷を任せてたっけ。出産でいけなくなったからミタさんが代わりにいってるのかな?
「レニスのほうはなんか情報入ってるかい?」
「そろそろだとは聞いております」
あちらもそろそろか。
「あとでいくから伝えておいてくれや」
「畏まりました」
朝食を続け、食休みしてからレニスのところへと向かった。
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