第1415話 パーキングエリア

 ボンネットバスはしばらく地上を走ったら、地下へと入った。


 ジオフロントに入ったのかな?


 クレイン湖はジオフロントの中心。大陽の光を地下に送るものだ。


 エリナのやる気がすべてなのでジオフロントの広さは知らないが、湖の広さを考えたらちょっとした地方都市(元の世界のな)くらいにはなるはずだ。


 それに、ジオフロントはタケルの潜水艦がある港まで続いている。下手したらボブラ村の下まで来てんじゃねーか? 館の地下に団地まで造ってんだからな。


 地下道はちゃんと明るく、元の世界のトンネルそのもの。なんのおもしろみもなかった。


「これ、ボブラ村まで直行なのか?」


 途中下車ぶらり旅とかやってみたいんだけど。


「はい。前はいくつかの村を回ってカイナーズホームにいってたんですが、それだと半日かかるのでボブラ村直行を設けてもらったんです」


 いくつかの村、ね。魔大陸から移住して半年くらいなのに凄まじい発展してんな。まあ、カイナが絡んでるなら納得の早さだがよ。


「あ、途中で休憩所があります」


「休憩所?」


「はい。一時間以上かかるのでトイレタイムが十分くらいあります」


 一時間くらいガマンしろってのも酷か。生活水準が上がったらな。


 そして、三十分くらい走ると、ボンネットバスの速度が下がり、休憩所とやらに到着した。


「降りますか?」


「そうだな。せっかくだから見ておくか」


 まだそこまでではないが、今度いつ来るかわからないのだから見ておくとしよう。


 乗ってるヤツらもほとんど降りた。


「サービスエリア──いや、パーキングエリアだな」


 高速道路にあるトイレと自販機があるだけのパーキングエリアっぽかった。


 トイレの前に自販機を見ると、全商品が十円だった。つーか、自販機って十円でも買えるんだ。どんな機能してんだ?


「ジョージのブラックか」


 懐かしい。工場勤務のときは休憩毎に飲んでいたものだ。


 無限鞄から小銭──がねーや。こんなことなら一万円札を崩しておくんだったぜ。


「一万円、使えないのか」


 なんで十円で買えるのに一万円は使えねーんだよ? 偽札対策か?


「あの、わたしが出しましょうか?」


「いいのか?」


「はい。べー様にかかわることはあとで申請すると戻ってきますので」


 そんなシステムがあったのね。なら、遠慮せずジョージのブラックを買ってもらいました。


「……旨いな……」


 懐かしいって思いが詰まったこの旨さ。箱で買いたくなるぜ。


「ゆっくり飲んでるからトイレいってきな」


 レディに言うことじゃないが、ガマンされてるのも申し訳ねー。漏らされるよりはマシだろう。


「いえ、大丈夫です」


 そうなの? まあ、それならそれで構わんと、ジョージのブラックを味わいながら飲み干した。


「出発の時間で~す! ご乗車お願いしまーす!」


 もう十分か。本当に工場勤務を思い出すぜ。


 ゴミ箱にポイしてボンネットバスに乗り込んだ。


 ボンネットバスが発車。また三十分くらい走ると、なんか明るいとかろに出た。なんじゃここ? 


「ボブラ村に到着~。到着~」


 え、ここが?  


「べー様、ゼルフィング家の地下です。だいたい地下二百メートルって感じですね」


 うちの地下、改造されすぎだろう。


 ターミナル的なところに着き、乗客が降りていく。


 オレらは最後まで待ってからボンネットバスを降りた。


 ドーム状なそこは、ちょっとした町みたいになっており、喫茶店やコンビニ(花*花)、食堂や雑貨屋が並んでいた。


「まさかうちの地下がこうなってたとはな」


 つーか、どんだけ人がいんだよ? 軽く見ただけで二百人はいるぞ。


「この上が団地になっています」


 上を見上げたら階段がいくつか地上へ向けて伸びていた。


「エレベーターはなし、か」


「はい。運動不足にならないように設置しないと聞いております」


 地上まで二百メートル。それはもう運動と呼んでイイものなのか? 二百メートルも続く階段ってもう拷問じゃね? 三百段の階段でも泣きそうになったぞ。


「あ、でも、貨物エレベーターはありますよ。使いますか?」


「いや、階段で登ってみるよ」


 これもせっかくだ。階段でいってみるとしよう。


 青鬼メイドに先をいってもらい、地上へ向けて階段を登り始めた。

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