第1400話 魔女の転勤 2021.7.21
「……まあ、変なことしてるのね……」
風呂に入ろうとして風呂を檜風呂(いや、檜ではないんだけどね)をトンテンカンと作っていたら魔女さんたちが現れた。
あ、どこにでも部屋のドア、開けっ放しだったっけ。次からは自動ロックにしなくちゃな。
「風呂に入ろうとして風呂作ってた」
「それ、本末転倒って言わない?」
オレには理路整然とした思考帰結だ。
「もう入れるの?」
「あともうちょっとだ」
湯船は作ったが、板敷きがまだだ。それに洗い場も作って、なんならサウナも作りてーな。あ、外の景色を見れるようにするのもイイかも!
「確実に明日の朝までかかりますよね。と言うか、普通に館に帰って入ったほうが早いのでは?」
「……うん。本末転倒でした……」
風呂作り熱がいっきに冷めた。
「もうイイや」
湯船は完成してるので、結界でサクッと創ってしまう。オレ、どうでもイイことにはドライなのである。
無限鞄から水が入ったペットボトルを取り出し、壁に押し当てながらデカくする。
結界内なので百倍デカくしても大ジョーV。結界ホースをブッ刺し、結界蛇口を先につける。
結界でお湯に変えることはできるが、薪風呂に入りたい。
湯船の下に竈を創り、薪を放り込んで火を焚いた。
「魔女さんたちも入るかい?」
昼間、シャワーを浴びてたが、なんか入りたそうな感じがしたので尋ねてみた。
「一緒に?」
「それは魅惑的な問いだが、オレは一人で入りたい主義なんでな。別々だよ」
生憎だが、女湯に入りたい願望はナッシング。ゆったりまったりビバノンノンで入りたい派である。
「不能ならいい薬があるわよ」
「正常だよ! 変な勘繰りすんなや! でも、そんな薬があるなら分けてもらえると助かります」
バイなグラグラな薬は昔から求められてるが、なぜか誰も開発できてなかったりする。ないものと思ってたら魔女が持ってたよ!
「材料があるから教えるわ」
「魔女のところでは結構普通にあるものなのか?」
オレ、結構調べたよ。
「貴族からよく頼まれるものだからね。まあ、媚薬なので誰にでも教えられるものではないけど」
あーなるほど。血を残さないとならない貴族は切実か。
「オレならイイと?」
「あなたはもう伝説級のものを作っているからね。媚薬くらい問題ないわ」
イイのか? 媚薬のほうが扱いが大変だと思うが? ん~まあ、色っぽい魔女さんから承認されたと思っておこう。
「んじゃ、遠慮なく教えてもらうよ。この風呂は魔女さんたちで使いな」
「あなたはどうするの?」
「隣に男湯を創るよ」
拘らなければ風呂など一分もかからず創られるさ。
風呂──女湯を出て、隣に男湯をあらよっと。一分どころか一瞬で完成しちまったぜ。
男湯に入り、ペットボトルを設置。結界ホースをぶっさして結界蛇口から水を湯船へと流す。
こちらも竈方式なので薪を放り込み、薪に火を点ける。
溜まるのと沸くのを待つ間、結界窓にブルーヴィからの景色を映した。
「う~ん。空ばっかりでおもしろ味もねーな」
いくつか変えてカムラ王国の山奥。滝が見える景色へと決めた。
まあ、カムラ王国も夜なので、結界灯を創り出してライトアップさせた。
「そういやここ。殿様と初めて会った場所だっけ」
ここにも秘密基地があり、小人族の飛空船の造船所もある。今は使ってないが、時間に余裕ができたらキャンプにいってみるかな。
湯が満たされたので、服を脱いで入る。
「ふい~。イイ湯だ」
あ、そういや、温泉の素があったっけ。草津の湯でも入れておこう。うん、イイ香り~。
「あービバノンノンビバノンノン」
やはり風呂は一人で入るに限るぜ。
なんて一時間も入ってたら茹で上がってしまった。
「水風呂も創っておくんだったぜ」
茹で蛸状態で男湯から出ると、魔女さんたちはまだ入っているようだった。
「ドレミ、フルーツ牛乳を頼む」
幼女型メイドになっているドレミにお願いすると、すぐに出してくれた。
「サンキュー」
礼をいってフルーツ牛乳の蓋を外していっき飲み。冷たさと旨さで胃がキュッとするぜ。
「もう一杯!」
お腹ピーピーになってしまいそうだが、この冷たさと旨さの誘惑に勝てねー。湯上がりのフルーツ牛乳サイコー!
ドレミが出しただろうソファーに寝っ転がり、まったりしてたらやっと魔女さんたちが上がってきた。
「長湯だな」
火照ってはいるが逆上せている感じはしねーが、なにしてたんだ?
「外を眺めてたのよ。同胞がいろいろやっていたから」
そういや、魔女さんたちの住む場所辺りに結界マークを設置したっけな。
「なんかおもしろいことでもやってたのかい?」
「これと言っておもしろいことはしてなかったわ。ただ、皆が働いているときにのんびりお風呂に浸かっていられるのは最高だわ」
なんかOLの発想みたいだな。
「なにか飲むかい?」
「冷たいお酒があったらお願いするわ」
独身OLのアフターを見ているかのようだな。
「見習い魔女は、なににする?
「「「アイス」」」
ハモる見習い魔女。こっちは女子高生だな。
ビールはドレミに任せ、アイスはオレが出す。
「留学してなにが最高って、お風呂上がりにアイスを食べれることよね~」
「選ばれたときはどん底に落ちた気分になったけど、今は選ばれてよかったわ」
「ふふ。最高」
なんだろう。もしかしてオレ、見習い魔女をダメにしてる?
「わたしも館長に言ってボブラ村に転勤させてもらおうかしら?」
魔女に転勤とかあるんだ。なんか夢がねーな、この世界の魔女は。
「薬に長けたヤツがいてくれるならオレは大歓迎だぜ」
「そう? なら、館長に話しておくわ」
「なにか言ってきたら推しておくよ」
魔女とは持ちつ持たれつな関係を築きたい。来てくれるなら大歓迎するさ。
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