第1394話 基本、変態
「おもしろかったです……」
なんにでも興味を示すそばかすさんがパチパチと拍手をしている。
「そうだな。今度、帝都の劇場にいってみるか」
「いいですね! べーくんがいくならわたしたちもいけそうです」
「見習いは外出が許されねーのか?」
寄宿舎みたいな厳しいところなのかな?
「はい。よほどのことがない限り大図書館から出ることはできません。だから今回選ばれたことが嬉しくて。寝るのも惜しいくらいです」
どんだけ好奇心旺盛なんだか。まあ、好感は持てるけどな。
「何年預かるとは決めてねーが、二、三年は預かるつもりだ。慌てる必要はねーよ」
一年二年でまったく違う社会体制を学ぶなんて無理だ。最低でも三年は必要だろう。なら、いろいろ見る時間はある。オレですらこの一年で魔大陸だの南大陸だの見てるからな。
「べー様と一緒にいたらたくさん見れるでしょうけど、じっくりと見ている暇はないでしょうね」
ま、まあ、確かに、じっくり見ているかと言われたら、そうじゃねーと答えるしかねーが、好奇心旺盛なヤツは質より量だからそれでイイやろ。
「ドレミ。コーヒーくれ」
演劇を観てたら気持ち悪さも落ち着いたし、腹も少し減った。コーヒー飲んでメシ食って、少し動けば二時くらいから街にいけんろう。
ドレミからコーヒーをもらいゆっくり飲んでいると、先に色っぽい魔女さんが復活。キャンピングトレーラーのシャワー室へと向かった。
「また、露天風呂でも創るか」
飛空船場は街の外。田畑もない。露天風呂を創っても文句は言われまい。女も働いているみたいだし、あったら喜ばれんだろう。
そんなことを考えてたら色っぽい魔女さんがシャワーから出てきたので、オレもすっきりさっぱりするためにシャワーを浴びることにした。
シャワーから出ると、なんか魔女見習いの二人から変な目を向けられた。なによ? 先に入ったから怒ってんのか?
「いや、女性のあとに入ったからじゃないですか?」
はぁ? 一緒に入ったならまだしも終わってから入ったんだから変でもねーだろうが。
「……あなた、本当に男なの? 同性が好きとか……?」
なに失礼なこと言っちゃってくれてんのかね。お前ら、腐魔女か? それならエリナのところに放り込むぞ!
「そうしたら悪化するのでは?」
うぐっ。確かに。腐界に王の蟲を帰すが如し、だな。
「別に色っぽいからと言って好みとは違うよ」
オレにだってそれなりの欲情はあるさ。
「え、あったんですか?」
あるよ! ただ、好みじゃないと働かないだけ。好き嫌いがはっきりしているだけだ。
「……同性でも淫魔のコリアント様に逆らうのが大変なのに、あなた変態ね……」
拒否したらしたで変態扱いかよ。
「まあ、基本、べー様は変態ですからね」
幽霊からの心ない決めつけ。なのに、反論できぬ自分が憎らしい……。
「ドレミ。なんか食えるもんあるか?」
「でしたら、支店の食堂で食べられたらいかがでしょうか? 温かいものが食べられます」
支店の食堂? そんなものまであるんだ。んじゃ、いってみるか。
「あんたらもいくかい?」
「ええ。ご一緒するわ」
と言うので皆で支店の食堂へと向かった。
「へ~。なかなかのもんだな」
町の食堂って規模だが、メニューは居酒屋並み。酒まで置いてあるよ。
「いらっしゃいませ~! 五名様ですか?」
なんだか接客も居酒屋っぽいな。
「ああ。ランチセットを頼むよ。飲み物は各自頼めな」
もう二時近いが、夕方まではランチタイムらしい。つーか、ランチが銅貨一枚とか激安すぎねーか? 写真を見ると銅貨十枚は取れそうな質と量だぞ。
「酒が飲みたいなら好きに飲んでイイぞ」
食事に葡萄酒を飲んだりするのは普通だしな。
「では、遠慮なく。葡萄酒をください」
「あ、わたしもお願いします」
そばかすさんの手を挙げて葡萄酒を頼んだ。
「酒を飲むことは許されてんだ」
「十六歳からは許されるかな」
ってことは十六歳以上なんだ、そばかすさんは。言動が幼いから十四、五かと思っていたよ。サダコはよーわからん。
「ツンツインテールは何歳なんだ?」
「十五歳よ」
「魔女は、見た目より若いのな」
イイところ十三歳かと思ってたぜ。ツインテールとかしてるし。
「確かに魔女は肉体の成長速度は遅いわね」
「色っぽい魔女も若いのか?」
見た目は二十三、四には見えるが。
「……それなりよ……」
それはもう訊くなと言うことなんだろう。了解で~す。
すぐにランチセットが運ばれてきて、四人でいただいた。あー旨い。
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