第1358話 アヤネ参上

 なにはともあれ実績作り。モーダルの知名度を上げるのだ。


 要塞の兵士数は二百数人。そのうち半分は要塞維持に従事してるので、金目蜘蛛退治には百人くらいしか使えないってことだ。


「まあ、金目蜘蛛くらいなら五十人もいれば充分さ」


「……二百人いても苦しんでいたんだがな……」


「槍で戦ってたら千人いても苦労するよ。この要塞に魔法や魔術を使えるものはいるかい?」


「こんな田舎にはいないよ」


 南の大陸は魔法のほうが進んでいるが、使えるものはそんなにいないらしい。


「なら、ララちゃんにやらせるか」


 まずはモーダルの槍やら鎧やらを出してもらい結界改造。オーガなら百単位で相手できるくらいに仕上げた。


「ララちゃん。槍に最大の雷撃を流してくれ」


「だ、大丈夫なのか? これ、普通の槍だろう?」


「あ、確かに見た目がショボいな」


 結界を外して横へポイ。昔、オレが作った見た目シャレオツな槍を出した。


「こっちに頼む」


「無駄に派手だな」


「英雄が持つにはイイだろう?」


 言っちゃーなんだが、モーダルは精悍で体格はイイのになんか地味目なんだよな。洒落っ気のないオレが言うのもなんだが、もっとお洒落気をつけたほうがイイぞ。


「ドレミ。エリナんところからサポートできるヤツを連れて来られるか?」


 モーダルの立場が確固たるものになるまでは他種族を横には置けない。なるべく南大陸の者に見えるヤツのほうがイイ。


 まあ、ドレミの分離体でもイイんだが、たまにはエリナにも働いてもらおうじゃねーか。腐嬢三姉妹(覚えてる? 引きこもり、骸骨嬢、エルフのリッチだよ)だけの腐れた関係ばかりしてると世界のためにならんからな。


「──こんなこともあろうかと用意しておりました。クフフ」


 と、不気味ガール、アヤネが現れた。


「……なんでお前が来るんだよ……」


「クフ。べー様を支えるのがわたしの役目ですから」


 そう言うのはいらんって言っただろうに……。


「誰だ? この少女は?」


「クフフ。お初にお目にかかります。わたし、コンゴウジ・アヤネと申します。お気軽にアヤネとお呼びくださいませ」


 親からもらった名前で自己紹介しろや。いや、オレもアヤネで覚えちゃってるけど!


「そ、そうか。おれはモーダル・モアドだ。よろしくな」


 こいつ、女には丁寧になるんだな。


「リオル、リアリー、出て来なさい」


 と、南大陸人の男と女が現れた。


 どちらも二十歳半ばくらいで、人とは違う気配を放っていた。


「人造人間か?」


「はい。キョーコさんと同じですが、どちらもサポートに徹したスキルを持たせておりますよ」


 キョーコって、あのマンションの管理人だっけか? 数度しか会ってないのにアウトよりだから忘れられないでいるよ。


「リオル、リアリー。モーダル様にご挨拶を」


「モーダル様、リオルと申します。あなたに忠誠を」


「モーダル様、リアリーと申します。あなたに忠誠を」


 説明を求める目をこちらに向けてくるが、そんなものこちらに求められても困るわ。オレの想像から百光年ばかり外れてんだからよ。


「モーダル様。二人の周知はお任せください。しっかりとお伝えしますので。クフフ」


 アヤネは転生者で、神(?)から超能力を願った。


 底はわからんが、なかなかエグい超能力だったっけ。もしかしたらオレの結界に匹敵するかもしれんな……。


「……なにをする気だ……?」


「お伝えするだけですよ。クフ」


 おそらく、催眠術的なものを使うはずだ。あいつのは黄金竜をも黙らせるからな。


 アヤネの言葉に不穏なものを感じたのか、額から冷や汗を流していた。


「べー様。要塞のことはすべてお任せください。きっちりばっちり済ませておきますので。あ、スパイの尋問もしておきますね。リオル、リアリー、いきますよ」


「「はい、アヤネ様」」


 クフフと笑いを残して部屋を出ていった。


「おい。本当に大丈夫なんだろうな?」


「大丈夫。安心しろ」


「なら、おれの目を見て言えよ!」


 すまん。今のオレは自分を納得させるので精一杯なんだ。自分のことは自分でなんとかしてくれや。


「さあ、夜も遅いし、寝るとするか」


「おい!」


 聞こえない聞こえない聞こえない。オレは寝るんだから聞こえなぁ~い!


「ララちゃんも猫も明日な~」


 村人忍法、ドロン! &朝まで雲隠れ! 皆、グッナーイ!

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