第1354話 猫突猛進と書いてまっしぐらと読む
「モーダル英雄化計画を発動する」
客室に集まり、そう宣言したら茶猫とララちゃんから冷たい目で見られた。
勇者ちゃんと女騎士さんはお菓子とお茶を堪能中でオレの話なんか聞いちゃいねー。ちなみに獣人のガキどもは他の部屋で休んでます。
「纏まり皆無の集団ですよね」
「こんな異色なチームで纏まりあるほうが異常だろう」
「まあ、自称村人が仕切ってるしな」
「よし。お前らの言いたいことはどうでもイイ。まずはオレの話を聞きやがれ」
「なんの独裁政権だよ!」
「じゃあ、お前がリーダーやれよ! キャットマンが!」
「変なあだ名つけんなや! つーか、おれはお前に無理矢理連れてこられたんだがな!」
「そう言う流される性格は止めたほうがイイぞ」
「お前が無理矢理流してんだろうが!」
なんて和気藹々がありましたが、話を元に戻しました。
「モーダル英雄化計画を始めたいと思います。皆様のご協力をいただけると助かりますです」
切にお願い申し上げ奉りまする。
「……お前は、我が強いのか卑屈なのかはっきりしろや……」
「オレは必要なら唯我独尊にもなれば媚びへつらうことも厭わない男だ」
キラン。と歯を光らせてみる。特に意味はなし。
「で、だ。モーダルに金目蜘蛛の女王を退治させるわけだが、それには金目蜘蛛をこの要塞に引きつける必要があるわけだ」
場が冷たくなる前に話を進める。
「嫌だって言ってもやるんだろうな」
モチのロンよ。
「勇者ちゃんと女騎士さんは、要塞に残って非常事態の備えとして、オレ、猫、ララちゃん、ガキどもで金目蜘蛛をここに集める」
「そんな単純にいくのか?」
「相手は腹を空かせているはず。目の前にご馳走が現れたら蜘蛛まっしぐらさ」
「猫まっしぐらみたいに言うなや。ってか、猫にまっしぐらとか笑えんわ」
「猪突猛進ならぬ
「蜘蛛を集めるのに猫はおかしいだろう!」
「計画名なんてなんでもイイんだよ!」
「……身も蓋もねーな……」
実のある話をすんだから問題ナッシング。だからオレの言うことを聞けー!
「またガキども囮にするから各自面倒みろよ。一匹でも多く要塞に引き連れてこい」
「子どもを囮にすることに一切の躊躇いも罪悪感もないよな」
どうもこいつは子どものことになるとナーバスになるよな。この世界の十歳は守ってやるほど子どもではねーぞ。
「あいつらは傭兵の子として生きてきて、親の教えがあったから金目蜘蛛やオーガに追い詰められても生き抜いた。しかも、自分たちは傭兵の子としての誇りを持っている。そんなヤツらにはちゃんと一人前に扱ってやるのが大人の役目だ」
半人前以上一人前以下。微妙なお年頃だが、仕事して任せるなら一人前として扱う。扱う以上、甘えたことは言わせねーし、ちゃんと報酬も渡す。それが礼儀であり責務でもある。
「……わかったよ……」
まったく、こいつもこいつで扱い難いぜ。
「村人さん。お腹空いたよ」
こっちはこっちで扱いやすかったり難かったりと、育てるのが大変だぜ。
「傭兵のヤツらと親睦会を兼ねてバーベキューでもするか」
プリッつあんもかかわっているのか、食料品を小さくして入ってあった。どのくらいかはわからんが、ミタさんなら数年分は入れてるはずだ。
外にいる見張りに広場を使えないかと声をかけ、モーダルに伝えてもらった。
しばらくしてモーダル自らやって来た。
「御大自らとは畏れ入る。それとも監視でもおるのかな?」
なんて冗談を言ったらなんか冗談じゃなかった。
「ふふ。誰かわかっているならなんとかしてもよいぞ?」
金目蜘蛛を倒すまでは静かにしててもらいたい。邪魔なら手を貸すぜ。
「……誰かはわかってはいないが、ジバールと呼ばれる影の一族が忍び込んでいる……」
「何人かもわかってないのかのぉ?」
「ここは田舎だからな、そう数は多くはないはずだ」
要塞規模からして二人以上五人以下、って感じかな?
「排除してもよいのか? 恨まれたりはせんかの?」
「それは今さらだ。我が一族は危険視されているからな」
どうやらラーシュの害になりそうな一族っぽいな。
「その影の一族、わしが使ってもよいか?」
「……使う、とは?」
「影の一族がどんなものか調べようと思ってな」
ニヤリと笑ってみせた。
「なに、心配めさるな。こう言うことには慣れておる。影の炙り出しはお手の物よ」
力を隠さずやっていれば権力者から睨まれるし、警戒もされる。オレを調べようとスパイとかやってくる。
そんなのを相手にしてたらなんとなくわかるようになってくるものだ。
「いや、なりませんから!」
オレはなったんだからしょうがねーだろう。
「よろしいかのぉ?」
「……あ、ああ。好きにやってくれ……」
ハーイ! 許可をいただきましたー!
では、親睦会が終わったら影の一族とやらを炙り出しましょうかね。ククッ。
モーダルのあとに続き、皆で広場へと向かった。
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